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大阪シティトライアル夢の実現
4月21日、大阪は通天閣本通商店街で、City Trial Japan 2018 in OSAKA(以下、CTJ)が開催された。
インドアトライアル、スタジアムトライアルは、日本でも開催された歴史はあるが、最後に開催されたのが1996年で、以降はデモンストレーションとしての開催に限られていた。福岡でのスタジアムトライアルから22年。日本のトップライダーのほとんどすべてが出場し、しかも今回は囲まれたスペースではなく、オープンな商店街での特設会場。入場無料という大盤振る舞いでもあり、どんなイベントになるのか、未知数の楽しみは大きかった。
参加したのは、日本のトップカテゴリー、国際A級スーパーのみんな。負傷や所要などの成田亮と平田雅裕を除く、ほぼ全員が参加という豪華さだった。
トライアルは、いつも山の中での開催だから、現地まで行くのがなかなかたいへん。今回は公共交通機関でするっと行ける。こちらの都合だけど、かわうちトライアルの絶賛準備中につき、当日朝に夜行バスで現地入りをして、そのまま新幹線で帰ることにした。
バスを降りて、会場まで歩く途中に市場があって、そこに朝の5時半からやっているうなぎ屋さんがあるというので食してみた。日本人じゃないお客さんも朝からうなぎだった。うなぎとCTJとはなんの関係もないけれど、街の中での開催だからこそ、こういうチャンスもある。
うなぎを食べて会場へ向かうと、次はたこ焼き屋さんが現れたので、これもいただく。朝だけど、ビールを頼みたくなってしまう状況になってしまった。
そんなこんなで、会場にやってきた。ライダーはまだいないけれど、どーんとシティトライアルの看板が出ていて、新世界がただの新世界ではなくて、今までとはちがう新しい新世界を主張しているような気がする。
なんせ会場が商店街だから、まともなパドックは用意できない。ライダーがまだ到着していないパドックには、それぞれのライダーの環境マットが敷かれて、主役の登場を待っている。でも、ほとんどハンドルとハンドルが触れ合うくらいの密集度合いになるのが、これを見ておわかりいただけると思う。仲良しトライアルライダー一同でなければなしえないイベントだというのが、この時点でほんわか明らかになってくる。
そして、いよいよライダーが登場する。パーキングはちょっと離れたところにあって、そこからマシンを降ろし、工具はスタッフが台車でがらがらと運び、愛車はライダー自らが押してくる。大阪のど真ん中でトライアルのトップライダーが行進中。トライアル界的には、ある意味、これが今回のハイライトだったかもしれない。でもこの時点では、すれちがう街のおばちゃんとかには、これからなにが起こるのかは、その片鱗さえも理解してもらえてなかったにちがいない。少々派手なかっこをした若者たちが、ちょっとへんなオートバイを押して通天閣に向かっている、それだけの光景だったのだ。それだけで充分すごいんだけど。
パドックに到着した野崎史高。ゼッケンプレートはいつもの通りの3番だけど、よく見ると、透かし絵みたいに通天閣とくいだおれ太郎が背景に溶け込んでいる。他にも、ゼッケン11の吉良祐哉は、1番の代わりに通天閣が2本立っているシティトライアル特製ゼッケンを作ってきた。みんな、初めてのシティトライアルに張りきっているのだ。
そうして、いよいよ始まりました。これを見逃すまいと駆けつけたトライアルファンは、丸太やでっかいタイヤにライダーが乗っかって下見をしているだけでわくわくしてくるのだけど、通りすがりの人はなにをやってるんだかよくわかんないにちがいない。
イベントの親分、実行委員長は藤原慎也。自身もライダーとしてこの大会に参加するけど、なんせ1週間前に全日本選手権を戦ったばかりで、そのままこのイベントの準備に突入したわけだから、さぞたいへんだったろうと思われる。トライアルはもうベテランとしても、イベントの主催、ましてトップライダーを集めてのこんなイベントをやるなんて、経験豊富の人の方が少ない。そもそも、スタジアムトライアルとかインドアトライアル、主催のみならず出場したり観戦するまで広げても、日本人だとこの10年にほんの10人いるかどうかじゃないのかな? 10人もいないかもしれない。ちなみに自然山の二人は、この10年は経験がない。
本場のXトライアルでは、ライダーのウォーミングアップはお客さんに見せない。ウォーミングアップを終えたあたりでスタジアムにお客さんが入ってくる段取りなんだけど、ここは街の往来だし、お客さんを締め出すわけにいかない。通天閣の展望台からだって、望遠鏡で見られそうだ(そんな人がいたかどうかは未確認)。
てなわけで、ウォーミングアップが始まるにいたって、街の皆々様方は道のど真ん中に置かれたブロックやら丸太やらでっかいタイヤやらがなにをするものだか、ようやく少しだけ察競られるようになってきたと思われる。決して広くない商店街の通りを15台ものオートバイがあっちへ行ったりこっちへ行ったり走り回ったら、天然記念物の暴走族だけど、この人たちはそれとはちょっと乗りがちがう。だけど何を考えているかわかんない、信じられないという点では、そんじょそこらの暴走族以上にインパクトがあったにちがいない。
今回のイベントに先立って、1週間前の全日本大会の会場でミーティングが行なわれて、そこで「これはデモなのか試合なのか」という確認がされた。それを問いただしたのは黒山健一で、黒山としては、見せる走りと勝負の走りはおのずとちがってくるはずだ、という意味があったにちがいない。主催者からは、きっちり勝負を見せたい、という返事があって、そんなら、勝ちにこだわった地味な走りをしますと(その時は)宣言した黒山だった。ただし今回のこのイベント、プロライダーとしては優勝賞金がどかんとあるわけでもなく、勝ちにこだわる意味があるのかどうか、という問いもある。いや、第1回シティトライアルの優勝者としての名誉こそ、勝ちにこだわる意義なのである。
さてさて、いよいよタイムスケジュールが始まった。最初は、通天閣から一番遠い第1セクションを使って二人1組によるタイムトライアルだ。これが出走順を決める予備予選となる。タイムトライアルの出走順はゼッケン順(大きいほうから)だ。
タイムは早い方がえらいのだけど、減点しちゃうと順位はどんと落ちる。クリーンした中で早い方が高順位、クリーンした一番遅いのの次に1点で早いのが来るというキマリだ。5点になると速い遅いが比較しにくいので、順番はくじ引きとなる。ちなみにこの大会では、5点をDNF(未完走)としていた。5点と聞いて「うわ、失敗だ。まいったなぁ」と思うのはそうとうなトライアルおたくで、世の中一般的には5点を失敗だと解説するほうがややこしいのかもしれないですね。
予選で速かったのは吉良祐哉。柴田暁も速かったけど、吉良はさらに速かった。クリーンしたのは6人、中で最も速かったのは小川友幸。一番遅い磯谷玲より6秒速かった。でも足をつくとさらに時間をくってしまう。
なんとなんと、黒山健一が大失敗。黒山は出走順が遅かったので、みんなが走るすぐ横に鎮座して、ライバルの失敗を軽やかに笑って見守っていたのだが、自分も々失敗をやらかすとは、まるで想定外だったにちがいない。
ただしこの失敗は、予選でのスタート順が早くなるだけで、最終的な成績には関係がない。さらにいえば、二人1組で走るけど、二人の勝ち負けは関係ない。タイムのいい者が上位となる。
でも実は、黒山もそれを充分承知の上で、このタイムアタックを失敗したのではないかという疑いがちょっとあるのだけど、いやいや、勝利を目指すライダーに限ってそれはないだろうということにしておこう。黒山は5点になった仲間の中でも格別時間がかかってゴールしている。つまりこのタイムアタック、最速は小川友幸の20秒40、最遅は黒山健一の68秒73ということになった。
当初は、本番はビールに串カツ片手に、2階のお座敷から高みの見物ができたらいいなぁと妄想していたのだけど、なかなかそんなところはない。取材陣は柵の中に入れてもらったけど、セクションの際から10cmくらいのところで座ってるもんで(立ったら後ろのお客さんに申し訳ないからね)なかなか身動きがとれない。せめて誰かが落ちてきたときにつぶされないようにしないと、自分が痛いだけじゃなくて、歴史的ななさけない事件登場人物になっちゃうから、それは避けなければいけない。
今回、MFJ本部やトライアル委員会のスタッフも駆けつけて大会運営の一助を担っていたが、まず一番の心配事は事故だ。トライアルに転倒はつきものだけど、一般社会にとってオートバイが転ぶのは一大事で、それによって人が傷つくのはもっとたいへんな事件で、まして通りすがりのお客さんがけがなどするなんてとんでもない。走っているのが日本のトップライダーばかりだから、とりあえずずいぶん安心はしていられるのだけど、それでも彼らはライダーの一挙手一投足を見守って、ほんの少しの挙動の乱れにドキドキしっぱなしだった。結局、その心配が杞憂に終わったのは、なによりだった。
タイムアタックの結果にのっとって、最初にトライすることになったのは岡村将敏(5点になって最遅だったのは黒山だったが、5点になったライダーはくじびきでスタート順を決めたから)。セクションはタイムアタックを行った第1セクションの隣、丸太とタイヤを組んだ第2セクション、そして木の箱が中心の第3セクションを続けてトライする。ひとつずつのセクションの走破タイムを計測して、減点数とともにタイムで順位を決定するシステム。
海の向こうのXトライアルでは5回の足つきで5点となるが、今回はそれはなし。そのかわり失敗してバックしてやりなおすこともありという、トライアル用語(?)で「なんでもあり」というルールになっている。
岡村は第2を減点5、第3をクリーンで通過、あわせて5点でタイムは85秒72ということになった。
この予選、6位までに入ればそのまま決勝進出。7位から15位までは敗者復活戦に回って、もう一度同じ第2と第3を走り、その上位2名が決勝を走る。
結果表を見ると、予選と敗者復活戦、4回のトライで4セクションともに5点となったライダーは一人もいない。セクション設定は、IASトップクラスのセクションと考えれば、それほど難度が高かったとはいえないが、ダイナミックさとトライアルらしい微妙なむずかしさ、勇気を出して飛ぼうと思えば飛べる距離に設定された障害物の数々と、設定はなかなか絶妙な感じだった。でも、人工セクションを走り慣れない多くのライダーにとっては、いろいろと戸惑うところも多かったにちがいない。
結果表では、最終順位として15位までの序列は発表されていないのだが、ここでは、9位から15位までは敗者復活戦の順位を反映されることと(勝手に)解釈して話を進める。
敗者復活戦で決勝進出はおろか、5点と5点(この大会的にはDNF)になってしまったのは磯谷玲だった。磯谷は予選では両セクションを1点で抜けている。実力通りの結果を出すのはむずかしいということかもしれない。
14位は砂田真彦。予選では5点と3点、敗者復活戦では5点と1点だった。ビッグタイヤに飛び移るポイントは、ちょっとむずかしかった。
13位は久岡孝二。予選も敗者復活戦も5点とクリーン。5点になっても時計が止まらず、合計タイムにこのタイムが集計されているのはどうかなと思ったけど、それで決勝進出ラインが変わるということはないので、今回も問題なし。今後については、このへんはルール化しておく必要があるでしょうね。ちなみにXトライアルでは、6セクションを5分の間に走れ、なんて規則があるので、難セクションはあっさり5点になって時間を稼ぐという作戦もあり。ところがインドアトライアルは興業が大事なので、申告5点や戦意のない5点は許してもらえない。全力でセクションに挑んだ結果、インのステアで落ちました、という演出も必要になるらしいのだけど、そういう舞台裏は、お客さんにはあんまり聞かせたくない話だ。
そして12位が、主催者たる藤原慎也。藤原はタイムアタックで5点、予選で3点と1点、敗者復活戦も3点と1点で、あんまりいいところはなかった。でも主催者が自ら大活躍してはあまりにいいとこどりすぎるので、これくらいでちょうどいいのかもしれない。というか、自分が走る順番が近いのに、スタッフとの打ち合わせに飛び回ったりしているのだから、きちんと自分の走りができるとは思えない。今回は、本当に素晴らしい時間を作ってくれて、ありがとうございました。
11位が平田貴裕。予選の3点/1点から、敗者復活戦では1点/クリーンと確実にスコアをあげていったのだけど、敗者復活戦の5位という、ちょっと地味な結果だった。
10位が岡村将敏。クリーンと1点。予選では5点とクリーンだったから、うまくいけば両セクションクリーンができたはずなんだけど、残念だった。アウトドアと人工セクションでは、得意不得意がはっきり出るので、今後、スタジアムトライアルの大会が一般化してくると、いままでの序列とちがう序列が現れてきても不思議じゃない。そういう興味も、きっとおもしろい。
9位、残念ながらあと一歩で決勝進出を逃したのは齊藤晶夫。予選では8位で敗者復活戦に出て、敗者復活戦では両セクションクリーン。しかし野本佳章が予選での5点から一転、素晴らしい走りを見せて斉藤の決勝進出を阻んだ。敗者復活戦を2セクションともクリーンしたのは3人で、斉藤はその3番手。その差4秒での惜敗だった。
ふと見上げると、ホルモン屋さんの2階から観戦している方あり。ここでホルモンとビールで観戦しているのが特等席だったかも。でもこのお店は、真っ昼間から開いている感じじゃないのだった。この2階がお店の客席なのか住居なのか、もしもう一度通天閣本通りでシティトライアルが開催されるんだったら、ぜひ下調べをしておこう(なんて書いちゃうと、飲み助のトライアルファンで満員御礼になってたりして)。
ということで、敗者復活戦までが完了して、いよいよ残るは決勝ただひとつ。ひとつといっても、8人が次々に走るので、それなりにたっぷり楽しめる。Xトライアルでは出場者は10人弱、最後のファイナルはたった二人というシステムになっている。それはちょっと少数精鋭すぎる気がするんだけど、去年シーズンまでのXトライアルの決勝進出4名というのがちょうどいいくらいかもしれないとちょっと思った。
採点をしたり時計を計ったり、そしてきっちり順位を出したり。スタッフはなかなかたいへん。みなさん、本当にお疲れさまでした。これは、スタッフが「えと、これどうなってるんだっけ?」と悩んでいるときに、向こうのスタートラインからすっとんで指示を出す実行委員長の図、というやつ。
決勝は、敗者復活戦2位で決勝進出を果たした氏川政哉がトップバッターとしてトライした。セクションは予選、敗者復活戦で使った第2と第3、さらに折り返して第3の逆走が第4、第2の逆走が第5。この4セクションでの戦いだ。第2と第3も、ラインが一部変わっていて、むずかしくなっている。この、一部のラインが変わって難易度を上げるというのは、トライアルおたくにはわくわくだけど、通りすがりの人には理解しにくいかもしれない。スタジアムトライアル独特の演出効果というのも、きっとたくさんあると思われる。こういうのを勉強するには、やっぱりヨーロッパにでかけていくしかないのかな? 個人的には、世界選手権から外れているシェフィールドのインドアトライアルをじっくり見てみたい。シェフィールド大会は、今はドギー・ランプキンがメインになってプロデュースしているはずだ。
ランプキンはともかく、決勝の一番トライは藤波貴久の甥の氏川。ポンポンポンとクリーンしていって、ありゃりゃ、こりゃオールクリーンか、セクションが簡単なのか、いやいや、政哉がすごいんだ、と感心している暇もなく最後のポイントまでやってきて、最後の丸太登りで失敗して5点。トータル5点が氏川のスコアとなった。
続いて敗者復活戦1位の野本佳章。減点5点未満で走れば氏川より上位に行く。野本は第1で1点、第3で1点、そして氏川と同じ丸太の飛びつきで5点となりトータル7点。残念、この時点では氏川が暫定1位、野本が暫定2位となった。
ここからは、予選一発で決勝に進出した6名が登場、そのトップバッターは吉良祐哉だった。吉良は予選の第2、第3をクリーンしていい感じ。どうも全日本では調子の波に乗れないでいるけど、これを機会に復活できるかと思わせた。あーでも、決勝では、えー、そこで落ちるか、という落ち方をして、なんとオール5点。決勝最下位の8位となってしまった。
けっして行けないライダーではないのは予選で証明している。今の吉良の悩みは、全日本でもシティトライアルでも根っこはおんなじなんじゃないかなと思ってしまった。ビールと串カツ片手なら、こんなむずかしいことは考えないんだけど、セクション脇にいると、どうしてもオツムが全日本モードになってしまう。
吉良の次にスタートしたのは野崎だった。タイムが早くなかったからスタートが早かったわけだけど、その野崎は、でっかいタイヤから次の枕木まで一気に飛ぼうとたくらんだ。けっして飛べない距離ではなかったのだけど、これはちょっとかわいそうだった。タイヤには空気が入っていなかったから(こういうセクション構成物として、空気が入っているタイヤなんかほとんどないけど)ちょっと動く。そこからフル加速をした野崎は、向こうにわずか届かず、転落。腕をちょっと痛めて、その後帰りの第4セクションでも5点になって、トータル10点でゴール。でも第1で落ちたときに痛めたのは脱臼とか骨が欠けたとかというケガだったから、そのあと3セクションも走っているのが異常というか、すごい。しかも、すぐその週末からイベントなどに出向いて乗っているというたくましさということだ。
小川毅士は、予選では慎重に走ってたように見えた。それで野崎に次ぐスタート。今回のセクションは、毅士クラスのライダーになれば、ていねいに走ればさらりとクリーンする設定だったと思われる。なんせ、氏川政哉が第3までは全部クリーンしている。
しかし毅士は、帰りの第3セクションのブロックで後輪を落としてしまった。それで3点。氏川が落ちた丸太はきれいにクリーンだったから、惜しくもオールクリーンを逃したという結果だった。
次は黒山健一だ。第1はするりとクリーン。第2のブロックにかかり、これまでのライダーとはちがうアプローチを見せる。誰も飛ばないブロックからブロックまでを飛び移り、ギャラリーをおおいに沸かせる。ちょっと飛ぶのが無理っぽいところも「飛ぶぞー」とギャラリーに声をかけながら飛んでみせた。その結果、第4セクションでは足が出て、3点を失った。これで毅士とは同点になってしまったが、今回の黒山はこれでしてやったりのようだった。
愉しくて温かいトライアル、ここにあり。舞台がなければトライアルはできないが、トライアルの魅力を伝えるのは、やっぱりライダーなのだとあらためて思い知らされた黒山のトライだった。
予選2位、黒山の次にトライとなったのは柴田暁。今日の柴田はなかなか乗れている。タイムアタックでも速かった。小川友幸のスムーズな速さに対して、力の入った以下にも速そうなタイムアタックで、予選もするするとクリーンした。
この勢いで決勝も。柴田は第1、第2、そして第3もするするとクリーンして、最後のポイントまでやってきた。ここは氏川、野本が落ちてはいるが、野崎、毅士らはスムーズにクリーンしている。柴田なら、問題なく走り抜けるものと思われる。
ところが、勝負は最後の最後までなにが起こるかわからない。丸太の助走部分に敷かれていた加速用のコンパネが、柴田の(というかそれまでのみんなの、だけど)加速に負けて、ズルッと動いてしまった。これで柴田の加速のタイミングが狂って失敗、5点になってしまった。
さすがに、足下が動いての5点ではお気の毒、ということで、再トライということになった。本来ならセクションを元通りにしないと不公平だが、これはなくても状況は変わらないということで、そのまま柴田が最後のポイントだけ再トライ。しかし跳ね返されて5点となった。板が動いて滑って登れないイメージがこびりついてしまって、そのイメージのまんまアプローチしての5点だったということだ。トライアルは、メンタルのコンディションが大事なんだと、こんなところでも気がつかされる。
そして最後のトライが小川友幸。この日の小川は、主催者が望む通り、勝負のトライをきっちり実践している。飛ばなくてもいいところを飛んだり、笑顔を見せたり、なにかをアピールすることはなく、その代わり、きっちり走って結果を出すという、トライアルの勝負をしっかりみんなにアピールした。
その結果が、最初のタイムアタックから最後の決勝まで、ひとつのミスもなくシティトライアルを走りきった。そして小川は、初めてのシティトライアルの初代優勝者として名を残すことになったのだった。
こうして、第1回のシティトライアルは、優勝小川友幸、2位は最高のパフォーマンスを見せた黒山健一、第3位に小川毅士という結果となった。この表彰台で3人が持っているのは、大会スポンサーである工具のTONEのいろいろ。
シティトライアルというパッケージを企画し推進した藤原慎也、集まった15名のトップライダーたち、支援をしたスポンサー、大会運営のスタッフたち、そして商店街に集ったトライアルファン、通りすがりの人たち、お住まいの皆さん、みんなの気持ちが、この日、大阪の空の下に終結した。
こちら、優勝した小川友幸と、ダンロップの松村さん。
そして、大会を盛り上げたライダー、アシスタントの皆さん。トライアルの歴史に残る大会はかくしてとどこおりなく開催。もちろんこれは出発点で、これからさらなる発展、改善があって、確固たるトライアル文化になってくれればいいなぁと通天閣を見上げて思うのでありました。
CTJ2018_Result大会終わって、串カツの誘惑も振り切ってとんぼ返りで帰って自分ちの大会の準備にかかって、ようやく大会が終わったので(そういえば、その間に自然山通信の締め切りもあった)これを書いています。遅くなって申し訳ございませんでした。