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小川と野崎、最終決戦はまず小川が勝利
最終戦を2週間後に控えて、全日本選手権中部大会は10月7日、いつものように愛知県岡崎市キョウセイドライバーランドで開催された。
IASの勝利は小川友幸、中国大会で同点ランキングトップとなった野崎史高は2位、黒山健一が3位となった。
国際A級は武井誠也が今シーズン初勝利で、ランキングもトップに出た。2位は坂田匠太。3位には武田呼人が初表彰台。
レディースは初めて8名がスタート。西村亜弥は減点5点で圧勝。山中玲美が初めての2位表彰台。小玉絵里加が3位、ケガから復帰した小谷芙佐子が4位となった。
国際B級は和田弘行優勝、塚本厚志2位。ランキング争いの渦中の常連組は、山森篤志が3位、宮澤陽斗4位、冨名腰慶亮5位、小野田瑞樹6位、和気聖司7位、中村道貴8位と、順番はともかく、きっちり上位に並んでいる。
台風25号が日本列島に近づいていて、土曜日はときおり激しい雨に見舞われたが、日曜日は気持ちのいい秋晴れとなって、日中は暑いくらいになった。観戦には絶好の日和となった。前の日にずぶ濡れとなったセクションは、朝のうちこそライダーを苦しめたものの、こんなコンディションを予想しての設定で、時間がたつにつれて減点は減っていく傾向にあった。
参加者は140名を越える大盛況。渋滞回避から国際B級を半分ずつ、第1セクションからスタートする組と第4セクションからスタートする組に分けて競技が進められた。どのセクションでもトライ待ちの列が見受けられたが、タイムオーバー減点は国際A級スーパーの10名だけだった。彼らは、第1セクションをトライするまでに30分を費やしていたから、タイムオーバーは大会側の問題ではなさそうだ。
試合前の予想としては、IASでは第1と第8が勝負ポイントということだったが、トップグループにとってはオールクリーンが可能な設定ともいえた。ちょっと地味な設定だったかもしれないが、マニアックなむずかしさがちりばめられていたセクション群だった。
スタート直後の第1セクション。中盤の岩への飛びつきが難所だった。ここを登れたのは小川毅士(以下毅士)、小川友幸の2人だけだったが、毅士はその先のタイヤで滑って5点。黒山は岩への飛びつきでゲートマーカーに接触して5点。終わってみれば、小川友幸(以下小川)が華麗なクリーンを見せた以外は、全員が5点だった。
この第6戦、小川と野崎にとっては、互いに一歩も譲れない。勝利がほしいのはもちろんだが、相手よりひとつでも上の順位に入って、最終戦を優位に戦いたい。小川にとっては幸先のいいスタート、野崎にとっては最悪のスタート、とはいえ、5点となったのが野崎一人ではないから、小川以外は全員が同点2位という点では、最悪の最悪ではなかったのかもしれない。
第2では野崎、毅士、柴田、氏川政哉が1点。小川、黒山がクリーンした。しかし次の第3では小川と毅士が2点、黒山と氏川が1点、野崎と柴田がクリーンした。第4では黒山が3点、毅士が2点、野崎と氏川が1点、小川がクリーン。第4までの4セクションで、小川は2点におさえてはいるが、他は軒並み減点が多い。第1での5点が効いているとはいえ、それだけではないようだ。柴田と野崎が7点、氏川が8点、黒山が9点、毅士が10点という具合だ。
第5から第7まではIASのトライはなし。この3セクションは山の裏側に位置している。お客さんが注目するIASについては極力舗装のトラックから見える範囲に設定されていて、観客サービスによく配慮された設定となっていた。その代わり、IAが12セクション2ラップなのに対し、IASは10セクション2ラップとSS。セクション数がちょっと少なくなっている。
第8は、第二の関門とされていた難セクション。ここで野崎がふたつめの5点。小川はクリーンしているから、これは痛かった。この時点で、野崎は5位にまで落ちてしまった。表彰台ではこのときのことを「もう帰っちゃおうかと思った」とちゃかして語っていた野崎だが、途方に暮れる状況はまちがいない。いつもの全日本でも野崎が5位などと聞けばびっくりだが、必勝がミッションのこの戦いでこの順位だ。野崎の絶望は想像に難くない。
2位は7点の柴田、3位は8点の氏川。氏川はこの2戦で5位に入った。黒山欠席の北海道での5位はともかく、中国大会での5位は立派。氏川は小川や黒山といっしょに下見をし、同じペースでトライしていく。スタートグループを分けて渋滞対策としているとはいえ、参加者が多いから慢性的な渋滞は避けられない。2ラップ目のゴール時間はIASよりIAのほうが遅いので、IASの時間がぎりぎりになるのは明らかだった。氏川のペースではタイムオーバー減点を課されることになるだろうが、今はまずトップグループの戦い方を学習中というところだろうか。
9セクション以降は、トップグループにとってはクリーンセクションが続いていた。しかしこへきて、小川が減点を喫して、1ラップ目のゴールでは減点5点となっていた。一桁減点でまとめたライダーはいないからトップは安泰だが、後半セクションでの減点は悔やまれるところ。野崎と黒山は、この後半5セクションをすべてクリーンしている。
このトップグループに対し、毅士、柴田、氏川はまだ脇が甘い。時間に追われる焦りもあったのだろうが、野崎、黒山がオールクリーン、小川が3点を喫した後半5セクションで、毅士は6点、柴田が10点、氏川は8点の減点の上、タイムオーバー減点も4点。これで順位はいつものとおり、小川、黒山、野崎、柴田、毅士、氏川の順となって2ラップ目に突入した。氏川以外は1ラップ目にタイムオーバーがなかったが、2ラップ目の持ち時間は1時間。1ラップ目を時間ぎりぎりにゴールしているから、すでに残り時間は1時間を切っている。
2ラップ目、1ラップ目とはコンディションは変わっていたものの、やはりむずかしかった第1セクション。なんと小川と黒山が5点になった。これで野崎が2位に浮上。さらに小川は第4でも2点を失い、野崎や黒山との点差が一気に縮まった。第4を終えて、12点の小川のトップは変わらないが、野崎とは2点差、黒山が小川と4点差で3位につける。
4位争いはまた熾烈だ。毅士と氏川が20点で同点、柴田が1点差でこれを追う。トップ争いも、4位争いも、おもしろくなってきた。ふたつめの難関の第8セクション、ここでは小川と野崎が5点になった。小川にとっても野崎にとっても、これは万事休すだ。黒山、毅士がここをクリーンして、黒山が小川に1点差でトップに立った。
黒山は、トライアル・デ・ナシオンで負った右ヒザの負傷が深刻だ。ヒザのお皿にひびが入っていて、ヒザの靱帯も損傷があるという。痛みには強い黒山だが、この日の黒山は痛みを隠すことなく、右足をたびたびステップから外して耐える姿が見受けられた。リタイヤの可能性もある、と覚悟しながら臨んだ今回の一戦だった。
2ラップ目第8でトップに立った黒山だったが、しかし次の第9で5点。これで再び小川がトップに出て、4点差、21点で野崎、黒山、毅士の3人が2位を争うことになった。この3人に2点差で氏川、3点差で柴田と、誰が表彰台に乗るかは、最後の最後までわからない。
残り4セクション、この4セクションは比較的クリーンが多いが、1ラップ目第10では小川が1点、第12では毅士が5点と、減点がないわけではない。油断はできない。さらに試合終盤になって、どのライダーも持ち時間がぎりぎりだった。
「タイムオーバーをとらずに走る術はあった。でも今日は野崎をマークしなければいけなかったから、タイムオーバーは覚悟の上で、野崎をマークした」
小川は言う。しかしペースが遅いのは小川と野崎の二人にとどまらず、柴田、氏川を含めて、6人がそっくり時間ぎりぎりになっていった。その前を走る面々も、1ラップ目からペースはゆっくり目で、オンタイムでゴールできそうなライダーは、ごく限られていた。
たまらず、最終セクションを申告5点としてゴールに駆け込んだのは、氏川、柴田、毅士。それでも時間には間に合わず、氏川4点、柴田6点、毅士3点を失っている。最終第13セクションは彼らにとっては充分にクリーンが可能だったから、申告5点をもらうより、あと1分タイムオーバー減点をよけいにとったとして、しっかりクリーンができたらトータル4点を節約できたという計算になる。毅士の場合、4点少なければ野崎、黒山に1点差で2位ということになる。もちろん、そんなのはあとの祭り、結果論だ。1分1秒を争うせっぱ詰まった状況で、正確な判断をするのはとてもむずかしい。特に柴田の場合、すでに6分のタイムオーバーを喫している。10分のタイムオーバーになれば失格だから、減点をどう減らすかという問題以上に、失格を避けなければいけない選択をしなければいけなかった。最も失格のリスクが高かったのは氏川で、1ラップ目に4点、2ラップ目に4点のタイムオーバーを喫している。あと2分で失格という崖っぷちだった。
2ラップを終えて、トップの小川は21点。2位は26点で、野崎と黒山が同点で並んだ。毅士が29点で3点差、5位の氏川は毅士にさらに3点差。柴田は6位で、氏川からさらに5点差をつけられている。SSで逆転優勝の可能性があるのは毅士まで。柴田は、この時点で表彰台の可能性を失っていた。
SS第1は最終第13セクションの隣に設けられていて、川から登って降りて登って登る。やはり玄人好み。最後の登りが木の陰に隠れてちょっと見にくいのが残念。SS第2は、いつもの人工セクションだが、例年勝負どころとなっていた大ステアはセクション入り口に設けられ、メインは3本の丸太を組み合わせた一本橋。途中で大きく向きを変えるところが落とし穴だ。
SS第1は、まず齊藤晶夫が3点で抜けた。続く柴田が1点。柴田との点差が6点に広がった氏川は、これで楽になったかと思いきや、なんと中盤で5点になってしまった。柴田と氏川の5位争いは1点差。そしてこの時点で氏川の表彰台の可能性も消えさった。
こうなると、残る4人はクリーン合戦が予想される。ところが毅士は、最後の登りにかかる手前の岩場で横滑りしてテープを切って5点。表彰台の可能性(ただし自力はムリだった)はここで消えうせた。逆に、氏川に3点差、柴田に4点差と、4位を奪われる恐れが出てきた。
そしていよいよトップ3。さすがにこの3人は、まったくあぶなげなくSS第1をクリーンして、その差は変わらず。小川は2位野崎と黒山に5点差のままだ。5点差があれば勝利は決定的かと思いきや、野崎にはまだ勝利のチャンスがあった。SS第2で小川が5点、野崎がクリーンなら、両者は同点、クリーン数も16で同数となる。1点の数を数えると、小川が一つに対し、野崎は二つ。これで野崎が勝利することになる。小川が5点、黒山がクリーンでも同点は同点だが、黒山はクリーン数が一つ少ない。もし小川5点、野崎、黒山がクリーンなら、3人が同点、クリーン数差と1点の数の差で、野崎勝利、2位小川、3位黒山という順になる。
SS第2。最初のトライは吉良祐哉。吉良は難関の一本橋を3点で抜け、最後のビッグタイヤをジャンプして飛びついて走破した唯一のライダーとなった。吉良の次にここを走破したのは齊藤。今度は1点で抜け、SSの2セクションを4点で走りきったが、順位の変動はなし。
柴田は丸太一本橋から後輪を落としてしまった。ここまでかと思いきや、足つきたった1回で落ちた後輪を元の位置まで戻し、そのままアウトまで走りきった。減点1。氏川との5位争いに勝利するには、ぜひクリーンしたかったところだが、しかたなし。
そして柴田に2点差となった氏川は、ここを2点以内で抜ければ3戦連続の5位獲得となる。ところがなんと中盤のコンクリートブロックを登れず、万事休す。一字は表彰台獲得かというところまで調子を上げていた氏川だが、タイムオーバーから自滅して6位に落ち着いてしまった。
「黒山さんがケガをしているから、今回は黒山さんを破って3位を目指したんですが、うまくいきませんでした。ケガしてるときに勝ってもおもしろくないし……」
試合後の氏川は、少々負け惜しみながら強い闘志を感じさせた。氏川はこれで齊藤と同点でランキング6位に浮上した。まだまだ粗削りながら、シーズン終盤になって、急速にトップグループに接近してきたのはまちがいない。
毅士は、これで5点にでもなれば柴田との4位争いも気になる局面となったが、しかし最後の最後はきっちり決めてクリーン。柴田に5点差で4位を決めた。2位も狙える位置にありながらの4位だから必ずしも上出来とは言えないが、3戦続けて柴田に敗したあと2連勝で、ランキングも1点差で4位を取り戻している。ランキング4位争いも、最終戦が勝負だ。
黒山は、ちょっとあぶないシーンがあった。氏川が登れなかったコンクリートブロックから、本来ならタイヤに飛び降りてから地面に降りる設定だったが、登ったときに振られた黒山は、なんとタイヤを介さず、直接地面まで飛び降りた。ただでさえその衝撃たるや想像を絶するというのに、黒山のヒザはこわれている。衝撃を受けたそのヒザで、繊細な一本橋を走破しなければいけないときているから、黒山にとってはなんとも過酷なトライとなった。それでもクリーンするあたり、黒山の痛みに対する耐性と勝負に対する執念は、あらためて並々ならない。
そして小川と野崎の優勝争い、そしてチャンピオン争い。際どい勝負だが、ここまでの流れを見ると、二人にとってクリーンは充分に可能性がある。しかし大きなプレッシャーの中、実力を発揮しきれるかは微妙なところだ。
まず野崎のトライ。もともとていねいなトライには定評のある野崎のこと。ここはきっちりクリーン。最後に走る小川に対して、さらに大きなプレッシャーを与えることになった。小川は、5点にならなければ勝利は得られる。しかしそれは、小川にとって許されるものではない。
最後の巨大なタイヤから降りてクリーンのままセクションアウトをした小川は、疲れ切ったような、やり切ったような印象だった。シーズン3勝目。野崎にポイント差3点をつけて、最終戦東北大会は、この2週間後に開催だ。
しかし小川にすれば、今回の勝利もシリーズチャンピオン獲得にはまったく安心ができない結果だ。思えば2013年、今の連覇が始まった最初のシーズンは、最終戦で小川が勝利してタイトルを獲得した。その時は相手が黒山だったが、最終戦SUGOを前にした中部大会では、小川は黒山に負けている。ポイント差3点で最終戦に臨んだ結果の、小川のタイトル決定だった。いまの状況は、ちょうどその逆パターンとなる。
「可能性は残した」と次回に希望をつなぐ野崎。途中が悪かっただけに、最後に2位を得たのは、よい結果だった。野崎に2位に入られ、望み得る最良の結果の中では最も厳しい結末となった小川は「あいつ、2位に入るからなぁ」と、すでに最終戦に思いをはせているようだった。
「ヒザのケガがあって、走りきれるかどうかが微妙だったので、3位という結果には満足ですが、2位と同点なら欲が出るもんで、2位になりたかった」
黒山は痛い痛いヒザをかかえながらなお上位への意欲を語る。野崎をチャンピオンにするためのチームオーダーはないのかと失礼な質問をすると、それはない、ときっぱり。チームオーダーはないし、SUGOは史くんの城みたいなものですから、と。
そう、2018年最終戦は、チャレンジャー野崎史高の城での開催となる。
■国際A級
ここまでの5戦、安定して上位をキープするのは小野貴史、武井誠也、永久保恭平。これに2勝を果たした山崎頌太が追い上げるという図式で迎えた第6戦だった。
IASは13セクションのうち5〜7をのぞく10セクションでの戦いとなっていたが、IAは第6セクションをのぞく12セクションでの勝負となった。セクション数が多いから持ち時間はIASより30分多かったが、このクラスにタイムオーバーはなし。IASより後からゴールした者はいなかった。
前日の雨で、ちょっと気分が沈みがちだったというのは武井誠也。武井は雨が苦手と公言する。しかし当日は天気が良くて、地面は急速に乾いていった。雨の影響は、意外になくなった。こうなると武井の好調を阻むものはなくなった。1ラップ目はただひとり一桁減点をマークしてトップ、2位に、ちょうどダブルスコアの差をつけていた。
2ラップ目、さらにコンディションがよくなって、減点を減らすライダーが多い中、武井もまた1ラップ目の半分の減点でゴールした。これではライバルも太刀打ちできない。結果、2位の坂田匠太にダブルスコアに加えて1点差で勝利した。武井のこの勝利は、今シーズン初勝利となった。
2位の坂田は2005年IAチャンピオン。その後IASで活躍していたが、しばらくのブランクのあと、全日本に復帰してきた。今回は、復帰後初の表彰台獲得となった。
そして3位は武田呼人。IA昇格2年目。昨年はポイント獲得が精いっぱいだったが、今シーズンはラップ1位を何度か取っている。そしてついに、初表彰台となった。
ランキング争いは、これで武井がトップに。2位の小野貴史とは4点差、3位の永久保恭平とは9点差。現実的には武井と小野とのチャンピオン争いとなるのだろうが、武井はチャンピオンをとってIASに返り咲きたいと願っている。
■レディース
ずっと、エントリーだけは続けていて参加はできていなかった小谷が、負傷療養から復活してきた。前十字靱帯の損傷で手術をしてからの復活劇なので、まだまだ本調子を得るには時間がかかるだろうが、小谷の復活でスタートライダーは8名に。名実ともに、シリーズ始まって以来の盛況となった。
今回のびっくりは第1セクション。中国大会から参戦を始めて絶賛修業中のソアレス米澤・ジェシカががんばって3点、寺田智恵子、宮本美奈が3点、小谷、小玉が2点で抜けたこのセクションで、V3チャンピオンを決めている西村亜弥が3点を失った。入口から走りがおかしかったが、ゆるやかな登りのターンでタイヤによりかかってしまうなど、ちょっとらしくない。もちろん本人もこのらしくなさは認めている。ただし悪いことがあればいいこともある。この第1があんまりだったので、これで開き直ったというか目が覚めたというか、第2セクションからは本来の調子を取り戻し、パーフェクトに向かって進み始めた。
第7で1点、そして2ラップ目の第2で1点。第7での1点はしょうもない減点で、第2での1点はばかみたいな減点だったという。しかしそんな減点も減点。オールクリーンはなかなかできないという証明のような減点だが、今回は第1での3点がなければ、西村としてはまぁまぁのできだった。
2位は、初めて山中が入った。今年は欠場した第4戦をのぞき、ずっと2位をキープしていた小玉を破っての初表彰台。2ラップ目の、5点を一つ取りながらの減点10点はなかなかみごとだった。
小玉は、今回の3位でランキング2位を確定した。今回は1ラップ目3位、2ラップ目4位と不本意だったから、最終戦が勝負になる。
復帰戦の小谷は、2ラップ目に12点と追い上げたが2点差で及ばず、4位。しかし2ラップ目に向けて減点をぐんと減らしているので、試合勘がさらに戻るだろう最終戦が楽しみだ。
5位は今年3戦目の参戦、北海道では2位にもなった佐々木淳子は、小谷に10点差となった。宮本美奈とは同点、寺田智恵子とも2点差で、このあたりの争いも今後の楽しみとなりそうだ。
ソアレス米澤は寺田に15点差。1ラップ目に5点だった第2セクションでのクリーンは勲章となった。
■国際B級
今シーズン3戦目の参戦の和田弘行が、2勝目を挙げた。山本昌也が初タイトルを獲得した1982年の国際B級チャンピオン。老後の楽しみ?として近場の近畿大会にだけ出場して優勝をかっさらっていく、若手にとっては目の上のたんこぶだが、今年は両目ともにたんこぶができた。
国際B級は参加が80名を越えていて、そのまま一気にスタートさせると渋滞のリスクがあった。それでグループを二つに分けて、Aグループは第1セクションから、Bグループは第4セクションからスタート。絶対人数が多いから進行は厳しかったはずだが、結果表を見る限りIAS以外にタイムオーバーはなしだった。それでも、慢性的に渋滞していたという話もあり、参加台数と渋滞対策はむずかしいテーマとして今後も打開策を練ることになりそうだ。
1ラップ目、和田の減点は7点。2位につけたのはチャンピオン争いの渦中にいる冨名腰慶亮で11点。冨名腰のタイトル争いのライバルである和気聖司は12点で3位と、こちらの争いもなかなかシビアだ。
2ラップ目、最少減点で回ってきたのは前回勝利の宮澤陽斗だった。ラップ減点は5点。この日のベストラップだ。しかし宮澤は1ラップ目の減点20点がきいて、トップ争いにはくいこめなかった。
冨名腰、和気のチャンピオン候補は、2ラップ目にそれぞれ苦戦していた。結果、ランキングトップの和気が7位、冨名腰が5位となってポイント差はわずかながら縮まった。最終戦では、和気が3点差のポイントリードを守れるかどうか、という戦いになる。3点差は、IASの小川と野崎の点差に等しい。こちらもIASと同じく、最終戦で冨名腰が勝利、和気が2位となった場合は同点、優勝回数の差で冨名腰がチャンピオンとなる計算。ただしIBはライバルが多く、順位は常に流動的だから、タイトル争いも最後の最後までわからない。
さて今回の優勝争い。和田は1ラップ目の後半、手と足がつって大苦戦。2ラップ目に入ることができずに、パドックで仲間にマッサージを受けていた。タイムオーバーになってもいいやとマッサージをしてもらって、それでも見切り発車で走り始めた2ラップ目、減点は15点と増やしてしまったが、2位には1点差で勝利となった。2位は、和田よりはだいぶ若いが、やはり今シーズン3戦目、そしてこれで3戦連続2位入賞という塚本厚志。和田と塚本は、国際A級昇格ラインには届かないので、来シーズンもこんなふうに若手を相手にベテランの妙技を見せつける戦いを演じてくれるはずだ。
■オープントロフィー・IAオーバー50
国際A級ライセンスを持つベテランが国際B級セクションを走って勝敗を競うノンタイトル戦。今回も前回中国大会と同様、喜岡修、岩見秀一、荒木隆俊の3名が参加した。
優勝した喜岡の減点は29点。これは国際B級5位相当で、昔とったきねづかあなどりがたし、という結果になった。2位の岩見は同じく15位相当だった。