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2019トライアル・デ・ナシオン(TDN)日本代表選手決定
2019年トライアル・デ・ナシオン(TDN)に参加する日本代表選手が決定して、発表された。代表選手は藤波貴久、黒山健一、小川友幸の3名だ。
TDNは9月27日〜29日、スペインのイビザ島での開催となり、この3人によるTDN参戦は、今年で4年連続。
藤波貴久は2018年世界選手権ランキング6位。2019年開幕戦も6位となり、現在ランキング6位。生涯ポイント獲得数は現役OB問わず一番の、名実ともに日本と世界のトップライダーとして君臨する。もちろん、2004年世界チャンピオン獲得の栄光は、世界中のトライアルファンに熱く記憶されている。日本GPは2000年の初開催から、藤波にとって飛躍のラウンドとなっている。
黒山健一は11回の全日本タイトルホルダー。1997年、日本人として初めて世界選手権で勝利し、2005年までの間に世界選手権4勝をあげている。この6年間、全日本では小川友幸にタイトルを奪われているが、激しいタイトル争いは全日本の重要な風物詩となっている。2018年は電動マシンTY-Eで世界選手権に参戦、一勝一敗でランキング2位となっている。
小川友幸は、この3人の中では最年長の42歳。1995年、1996年の2年にわたって世界選手権前戦参加を経験し、最上位は4位。RTL250Fをデビューさせた日本GPで強豪を相手に9位に入った実績も、トライアルファンには大きなインパクトを与えたものだった。8回の全日本チャンピオン。2013年は連続してタイトルを獲得していて、現在V7に向けて戦っている。
日本チームのTDN参戦については「TDN日本チームの記録」をご参照いただきたいが、近年の3回の他、この3人が組んでのTDN参戦は9回に及び、今回の2019年大会で10回目となる。
2015年以前は4名1組で、この3人の他、もう一人チームに加わって戦っていた。以下は、この3人がこれまでに戦ったTDNの一覧。
開催年 | 開催国 | もう一人のライダー | 順位 |
---|---|---|---|
2018年 | チェコ | — | 4位 |
2017年 | スペイン | — | 3位 |
2016年 | フランス | — | 2位 |
2008年 | アンドラ | 野崎史高 | 2位 |
2007年 | マン島 | 野崎史高 | 2位 |
2004年 | スペイン | 田中太一 | 3位 |
2002年 | ポルトガル | 野崎史高 | 3位 |
2000年 | スペイン | 田中太一 | 3位 |
1999年 | ルクセンブルグ | 田中太一 | 3位 |
ご覧のように、2016年以降、2位、3位、4位と順位を落としてしまっている。日本チームの平均年齢は毎年1歳ずつ大きくなっていくが、日本チームの実力が落ちているというよりは、ライバルチームは少しずつ若返りをしていて、日本チーム以上に実力が上がっているというのが正しい。1999年にこの3人が初めてTDNに揃ったときのライバルチームを見ると、2018年現在、スペインチームで残っているのはラガだけ、イギリスチームは全員が代替わりをしている。
2019mfj_tdnTDNメンバー発表のMFJからのリリースには、各ライダーの紹介について、現在の全日本ランキングがさらりと記されているが、これについてはちょっと誤解を与えるので補足しておきたい。
2018年まで、TDNの代表を発表した時点では、黒山と小川が全日本のタイトル争いのトップに位置していて、ライダーの紹介として全日本ランキングを記していても違和感はなかった。しかし今年は、野崎史高が好調で、全日本ランキング1位と3位のライダーを代表選手に選んでいて、ちょっと矛盾を感じてしまう人もいるかもしれない。特に野崎ファンのみなさんはご不満かもしれない。
代表選手の選考は、2019年が始まった今現在のランキングではなく、2018年終了時点でおおかたの決定を済ませ、選手の出場意思も確認している。かつては、その年の実績によって選考をしたこともあるが、それでは準備が整わないというライダーやチームの申し出もあって、現在の決め方に落ち着いた。
選考基準は、異なる舞台で活躍している選手がいて、基準をひとつにするのはむずかしい。まず藤波は、世界ランキング6位という実績によって選ばれている。黒山には、世界ランキング2位(トライアルEクラス)の実績がある。そして2018年日本GPで9位と15位に入り、ランキングポイント8点を獲得したという実績もある(黒山はこの他、イタリアGPにも参戦していて、15位に入っている)。小川は、2018年全日本チャンピオンとしての実績が光っている。ほかに、日本GPで14位と13位に入り、5ポイント獲得。これが、3名を代表選手とした選考理由だ。ちなみに野崎の日本GPの成績は15位と14位で、獲得ポイントは3点だった。
代表に選ばれた3人は、自転車トライアルで世界を目指していた時代からいっしょに切磋琢磨した仲間で、トライアルを始めたのもいっしょ。ずっといっしょに成長してきた。そしてこれまで、8回にわたるTDN参戦で、表彰台を逃したことは一度もなかった。それだけに、2018年に4位となったのは、3人にとってはたいへん悔しい結果となった。3人は大ベテランだから、あと何年も参戦を続けられるわけでもない。とすればなおのこと、このままやめるのはくやしい、という思いがある。
野崎はチームブラック団の一員として、藤波ら3人とはチームメイトとなるが、野崎は彼らより5歳ほど若く、野崎が自転車チャンピオンをとったときには、3人はすでにオートバイに転向したあとだった。選考基準とはまったく関係はないが、仲間としては、藤波、黒山、小川の3人のつながりはより強固なものがある。
若手がどんどん実力を蓄えてくる世界のトライアル事情。そんな中で日本を代表する選手はこの20年変わらずという実情もなんとかしなければいけないが、まずは、2019年のTDNは、この3人に思い切り走ってもらって、よい結果を期待したいところだ。
今年のTDNの開催地となるイビザ島は、スペインでの屈指の観光リゾート地。アメリカ大会をハワイで開催するような、それ以上にリッチなTDNとなるはず。ヨーロッパのトライアルを見たことがない人は、前の週の最終戦スペイン大会とあわせて、この大会の観戦計画をお立てください。