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1分を計る秘密兵器
西和陽選手は、鹿児島の国際A級。今年は地元九州大会で13位に入った。
その西選手のトライを見ていたら、ハンドルに光るものあり。どうやらセクションの持ち時間を計るタイマーが装着されているようだ。
たずねてみれば、それはKOレーシングで市販されていた「セクションタイマー」だった。
西選手(には、嵐の中、当日は話を聞けなかったので、鹿児島の高崎さん経由で聞いてもらいました。取材までオンブです。高崎さん、ありがとうございました)によると、この製品を購入したのはもう2〜3年前ということでした。3年も西選手のトライを見ていながら、タイマーの存在に気がついたのが今ごろというのも情けないですが(なんともフシ穴です)、嵐で暗い猪名川の沢の中で、タイマーの光が目立っていたから発見できたという次第です。
さっそくKOレーシングの大田さんに聞いてみました。大田さんも、猪名川では選手として参戦されていました。まるで余談だけど、第1セクションに到着した大田さん、つるつるの斜面をぼう然と眺めていたので「ととと、と登っていけば意外に登れます。最初さえ登れば3点で抜けられるみたい」と無責任なアドバイスをしちゃいました。取材側としてこういうことをするのはどうかという問題より、よけいなことをいってかえってじゃましちゃったらもうしわけないという心配のほうが大きいんだけど、大田さんはととと、と登っていって1点で第1セクションを切り抜けました。「アドバイスがなかったらあきらめていたかも」と言われて、パートタイムマインダーはちょっとうれしゅうございました。
写真はその第1セクションでの大田さん。問題の入り口の登りを上って、下っているところです。
さて大田さんによると「セクションタイマー」は作ってみたはいいけれど、さっぱり売れないのでホームページからも消していた商品だということです。なんと今までに2個しか売れていないということです。大田さんの皮算用では、全日本参戦ライダーが100人として、その1割も買ってくれないだろう、とのことでしたが、その皮算用もおおはずれでした。残念。
需要がないということで、ホームページからも削除になっていたセクションタイマーですが、今回問い合わせたことで、ホームページ(http://koracing.com/taima-date/taima-.html)に復活しました。
あとはホームページに掲載されている詳細をご覧いただきたいのですが、セクションの持ち時間が1分になってからもうずいぶんたちますが、ほとんどの選手は持ち時間を気にせず走っています。国際B級だと1分を使わずに抜けられることも多いのですが、国際A級になるとだんだん経過時間が知りたくなってくる。それでアシスタントの存在がクローズアップされてくるわけですが、ライダーとアシスタントの間で「何秒?」「……」「聞こえない!」なんてやりとりがあるのを見ると、経過時間を知らせるのもなかなかたいへんなようです。
このセクションタイマー、手元のスイッチで作動を始め(ハンドルから手を放す必要はなし)、40秒までは青ランプ(緑?)。40秒過ぎると黄色の点滅。50秒を過ぎると赤色の九足点滅。まるでウルトラマンのようです。かっこいい。
「ああいうのを作ろうと思ってた」とは、いっしょにウルトラマン西選手のトライを見ていたエクセルの伊藤敦志さん。簡単な構造だけど、耐久性が心配だったとのことですが、目の前のセクションタイマーは、嵐のような天候の中、ちゃんと動作を続けておりました。今回の近畿大会で動作しているということは、一応の耐久テストはパスしたといってもいいみたい。
ゼッケンプレートの裏に9Vの電池を入れた機械を装備するので、うるさいことをいえば若干重量増になるも、その重さは120gとのこと。
全日本選手権を見ていると、タンクにキッチンタイマーを貼り付けている選手もいらっしゃる。キッチンタイマーなら安いのは100円ショップで売ってますが、必死で踏ん張っているときにタンクに視線を移すことはできるんでしょうか? セクションタイマー7,455円。残り時間を叫んでもらうためにアシスタントさんに来てもらう経費を考えると、うんとお得です。すっかり大田さんのお店の宣伝記事ですが、こういうユニークが2個しか売れていないという現実にニュース性を感じた自然山通信でした。
なおこの商品、視界の外で光ってライダーに経過時間をアピールしたいがため、強力なLEDが使われているとのこと。暗いところで直視すると失明の恐れがあるという大胆な製品設計がされています。ちょっとおっかない気もしますが、PL法だお客様の安全だというところに一生懸命で、本来必要で、魅力のある商品や活動が大きくスポイルされている昨今の傾向へのアンチテーゼみたいで、その点でもおもしろいです。
と、こんな記事を書いても、やっぱりひとつも売れなかったりして。製品は大田さんがひとつひとつ手作りしているため、納期が必要な場合があるそうです。
大田さんのKOレーシング