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鳥取で黒山3連勝

9月4日、鳥取県鳥取市鹿野町HIROスポーツで開催された全日本選手権第3戦中国大会は、台風12号の最接近のさなかに開催されるというサバイバルな試合となった。
台風の影響でスペシャルセクションがキャンセル、セクション設定もコンディションを加味して修正されたので、トップ3は大接戦となった。
接戦を制したのは黒山健一。これで開幕3連勝。5戦しかない今年の全日本で3勝をあげたわけで、タイトル争いも先が見えたかに思えるが、黒山自身は「次のキョウセイで勝ってから考える」と慎重な姿勢を崩していない。
黒山健一選手の優勝のおことば
台風は、土曜日に鳥取地方に最接近した。会場に向かった選手の中には、途中が通行止めとなってずいぶん遠回りをしたりさせられたライダーもいたようだが、会場では強い風は吹かず、ちょっと雨が強いくらいの天候に終始した。もちろん川は増水しているので、川の中のセクションはキャンセルとなり、IASの12セクション×2ラップ+SS 2セクションの設定は、12セクション×2ラップのみとなった。雨の量も、この地方ではままあること、というレベルらしい。
黒山は、実は土曜日の練習で負傷をしている。転倒した際にフットレストが太ももに突き刺ってしまった。鳥取の病院で8針縫ってきたということだが、ケガの影響を聞くと「痛いだけです。大丈夫」とのこと。痛み止めも飲んでいないという。今回はチェックはないものの、最近のスポーツ界はドーピングに厳しく、薬の服用は気を使うことと、以前に痛み止めを服用してふらふらしたことがあったから、以後少々痛くてもがまんしてしまう方針だという。たぶん、絶対にマネができないと思う。
セクションが簡単になったので、勝負がつかないかもしれないと土曜日に語っていたが、雨の日曜日はどうやらそのとおりの展開になった。1点を争う神経戦、なのかもしれないが、泥んこの中、クリーンをしたり5点となったり、あるいは3点で強引に抜け出たりと、見る限りは勝負がつかないセクションのようには思えない。
オープニングの第1セクションで3点をとった黒山は、トップに出るのに第6セクションまでがまんをしなければいけなかった。それまでもクリーンをすれば一気に優位に立てる第3セクションなどがあったのだが、野崎、小川友幸とともに5点となっていた。第6セクションは、ポイントの難度はそれほど高そうではないが、1分で走り切るのがぎりぎりの長さ。途中でひっかかったり、じっくり修正したりしていると時間が足りない。小川は足をついてマシンを送り出す戦法をとって3点。野崎はクリーンを狙ったものの、タイムオーバーで5点となった。ここで黒山は、すべてのポイントを美しくクリアして、見事足つきなしの減点0で走り抜けた。今日の試合で、このクリーンは大きかった。
しかし次の第7で、黒山は3点減点。小川がここを1点で抜けたので、これでまた試合はひっくり返った。さらに第8の丸太を渡るセクションでは、小川が1点で抜けたのに対し、黒山と野崎が5点。黒山は丸太から落ち、野崎は丸太をクリーンしながらその先の登りで引っかかった。黒山はこれで小川に5点のビハインドだ。

ところがこの点差も、あっという間にひっくり返る。10セクションで小川が1点取ると、次の11セクションでは5点。黒山は両方ともクリーンだから、ここで再び黒山が1点リードだ。
2ラップ目、中盤3点が続いた黒山は、一時は小川に2点差まで詰め寄られるが、後半のセクションをきっちりクリーンして、最後は野崎に4点差で逃げ切った。最終セクションでは黒山らしい雄叫びが出たが、ここの結果次第では黒山は勝てていなかったのかもしれないから、まさに勝利の雄叫びとなった。
今回小川が3位となったことで、ランキングトップの黒山と2位小川のポイント差は11点。残り2戦を3位と4位で走り切れば自力優勝が可能という計算になった。しかし残る2戦は、ヤマハ本社のお膝元の中部大会と、ヤマハ系サーキットのSUGOでの最終戦。黒山はどちらも負けるわけにはいかない。ここまでくると、黒山に課せられた使命は、全勝だ。