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チャンピオン小川友幸初優勝

10月16日、全日本選手権第4戦中部大会。今回もまた、ポイントリーダーの黒山健一と昨年チャンピオン小川友幸は大接戦だった。
勝負は、最後のスペシャルセクションで決着。わずか2点差で、小川友幸が今シーズン初勝利。そしてこの勝利は、小川友幸がゼッケン1番をつけて、初めてとなる勝利となった。
2位黒山に続いて3位に入ったのはひどい腰痛に悩みながらの野崎史高。4位に小川毅士となっている。
国際A級は三谷英明が優勝してタイトルも決定。ガスガス・ランドネを仕上げてきた成田匠は4位に入った。
国際B級は小谷一貴が優勝して、やはりタイトルを決定している。
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10月6日、全日本第4戦。まだ4戦目だ。今年はずっとこんなことを思い続けているけど、いつもなら終盤の終盤戦である中部大会が今年はまだ4戦目だ。これが2011年の現実だ。
毎年のように、スペシャルセクションが設けられた中部大会。去年あたりから、SS制度を導入する大会が増えているが、本家である中部のSSは本物感が強い。2ラップしたセクションの焼き直しではなく、わざわざ別にセクションを用意し(今年は残念ながら中止だった関東大会も、去年のSSは別セクションが用意された)お助け要員のアシスタントもSSだけはふたりつけられる。各IAS選手はすでに試合を終えたIA選手などに助っ人を頼み、難所のお助けに立ってもらったり際どいラインどりの指示をお願いする。さっきまで試合をしていたIA選手(でなくてもいいのだが)が腕章をしてアシスタントの任につくと、新たな勝負が始まるという雰囲気も盛り上がってくる。場内アナウンスも、1セクションごとにつく。SSならではの、こういう演出はやっぱりうれしい。
大会前日は雨。セクションを下見した各選手は、日曜日の戦いはなかなかむずかしいものになると予想していた。セクション設定の変更の申し出もあったようだが、基本、むずかしい設定には変わりはなかった。
第1セクション、久々に全日本に参戦してきた斉藤晶夫(今年就職して、今までのような参戦体制をとるのがむずかしくなっている。世界選手権も、土曜日だけ参戦して、日曜日は仕事に戻った)が3点で抜け、宮崎航、野本佳章が2点で抜けたのを見て、この先、クリーンが並ぶだろうと浅はかな予想をしてみたものの、地面のコンディションが崩れ、田中裕人、柴田暁、田中善弘と5点。小川毅士と野崎史高まで5点となってしまった。最初のセクションにして、オールクリーンの権利を持つのは早くも小川友幸と黒山健一のふたりになってしまった。

黒山健一。2011年の全勝優勝を逃す
続く第2セクションは、一見、泥の斜面を上り下りするだけだが、ふかふかの斜面はなんともむずかしい。ここでは、とうとうクリーンは一人も出なかった。野崎が3点、小川友幸が3点、そして最後に、黒山健一が1点で抜け出て、早くもいつもの勝ちパターンを作り始めたのかと思わせた。しかしそんな予想をするのは、まだ早かった。
第3セクションは、いつもおなじみの大岩セクションだが、これも今回はむずかしい。1ラップ目、結局ここは全員が5点となった。続く第4は、これまた一転泥のセクションで、次から次へと5点。小川友幸のみが3点で抜けた。ここまでの減点数は、黒山と小川がともに6点。3点ふたつの小川友幸より1点のある黒山がトップということになるが、細かい計算はまだまだ先の話だ。
第5セクション。ここもいつものセクション。そして難度が高いのもいつものこと。ここでも、次から次へと5点になっていく。最後の登りの、段々上の岩を登っていくところが特にむずかしい。跳ね返されてしまい、途中で動きを止めてしまう者がほとんどだ。小川毅士も野崎も、そして小川友幸も5点になった。こんな中、最後にトライした黒山は、するするっと岩を登っていって、見事クリーン。同点まで追いつかれはしたものの、やはり黒山強しの印象を与えたものだった。
第6セクションは、山を越えて水の流れる、これも見覚えのあるセクションだが、ここで小川毅士がこの日初めて5点を脱した。クリーンだ。ここまで、すでに25点の減点を重ねてしまって、優勝争いからはほど遠いが、トップ3、野崎、小川友幸、黒山はみな1点を失った。小川毅士と田中善弘のクリーンは貴重だった。
斜面の途中の第6、上段の大岩をぽんぽんと飛んでいく第7、豪快なヒルクライムの第8、第9と難セクションが目白押し。最初の難関は、第7のインの岩だった。みんながみんな落ちているわけではないので、手段がないわけではない。しかし誰にとってもむずかしい岩にはまちがいなかった。小川毅士、野崎がクリーン。田中善弘が1点で抜けている。小川友幸は、あぶなかった。登り損ねて、一度は観念したようにも見えたが、マインダー田中裕大の、まだいけるぞの声に踏ん張って、なんとか1点でこのセクションを走り終えた。
ここをきっちりクリーンして、点差を広げていくのが、いつもの黒山の勝ちパターンだ。ところがなんと、黒山はこの大岩の攻略に失敗。耐える間もなく落ちてしまった。これで黒山が17点、対して小川友幸が18点、接戦になった。野崎は24点、小川毅士が25点で続いている。
第8セクションはそそり立つヒルクライム。次々と玉砕していく中、野本佳章が1点で登りきった。小川毅士、野崎も1点。黒山が4ストロークツインカムエンジンのパワーを絞り出して登りきれば、小川友幸も華麗に登りきって、ここはイーブン。次の第9は、岩の上からのヒルクライム。最後の岩に登るポイントがむずかしい。ここも、次々に5点となっていく。小川友幸も、黒山も5点だ。ところが最後にトライした小川毅士が、美しくクリーンしていった。黒山22点、小川友幸23点、小川毅士26点、野崎30点。小川毅士が、一気にトップ二人に迫ってきた。
10セクションは湿った土の斜面。小川毅士2点、黒山が3点、ほかはみな5点。小川友幸も5点だ。黒山25点、小川友幸と小川毅士が28点で同点、野崎35点……。
11、12と黒山、小川友幸はクリーン。小川毅士は3点2点と減点して、せっかく追いついたトップ2を逃がしてしまっている。最終13セクションは黒山と小川友幸だけが3点で抜け、1ラップ目の減点は黒山が28点、小川友幸31点、小川毅士は3位を守ったが38点と、やや点差をつけられてしまっている。野崎はぎっくり腰を患っていて、本領発揮にはほど遠い。41点で4位だ。
2ラップ目。1ラップ目の減点を、どこまで減らせてこれるかが勝負だ。第3セクション、全員5点の難セクションは、まず黒山が1点で攻略した。しかし第3セクションは、またも小川友幸のみが3点で通過。1ラップ目に黒山のみがクリーンした第5は、今度は黒山が5点、小川友幸は3点で抜け出した。どちらも一歩も引かないつばぜり合いが続く。
10セクション。1ラップ目と反対に、黒山が5点、小川友幸は、今度は1点で抜け出した。これでトータルでも小川友幸が1点リードとなった。その後、12セクションで小川友幸が1点を失い、再び同点に。最終13セクションは仲よく5点となって、勝負は3つ用意されたSSで決せられることになった。このまま同点なら、クリーン数に勝るであろう黒山に勝機がある。

腰に爆弾を抱えながら小川毅士の追撃をかわした野崎史高
小川毅士は2ラップ目になかなか減点を減らせず74点。10点以上スコアを削ってきて69点とした野崎に3位を譲っている。しかしこの時点で、彼らに優勝の目はない。
「前回と同じく、接戦となっているのはわかっていた。ぼくもプレッシャーがあったが、ライバルも同じように意識をしているのがわかったので、プレッシャーをかけ続けられるよう、ずっと我慢して、我慢した」
小川友幸は、この日の戦いを、こんなふうにふりかえった。我慢が実って、同点まではこぎつけた。しかしまだ、勝利には詰めが足りない。
SSの第1は、積み上げた岩々を越えながら、最後に大ジャンプのアーチを描いてアウト。宮崎、野本が3点で抜ける中、柴田暁、小川毅士が5点となった。トップ3はそろってクリーンだ。
SSの第2。例年の、大ジャンプが最後に待っている泥の斜面。しかし今年は来れも設定がむずかしかった。ここも次々に5点となっていく。そしてここで黒山も5点となった。小川友幸は3点。これで小川友幸が2点リード。しかしこの頃、持ち時間がほとんどなくなっていた。減点数では小川友幸に分があるが、タイムオーバー減点如何では、まだまだ結末はわからない。
最終セクションは、巨大タイヤをぽんぽんと飛び移ってからの法面の斜面登り。最後の斜面は、表面が崩れていて、登坂は簡単ではなかった。タイムオーバーを考えて申告5点とするライダーが多くいる中、宮崎、柴田、田中裕人が5点となり、田中善弘が1点で抜けた。小川毅士は5点となり、なんとSSをオール5点としてしまっだ。
野崎は2点だった。最初の巨大タイヤに向けて飛んでいくポイントで足が出てしまった。その野崎の直後、今度は黒山も同じように足が出た。黒山の減点は1点のみだったが、これにタイムオーバーが2点加わった。トータル57点で、黒山はゴールした。残るは小川友幸のみ。
野崎、黒山と飛びすぎてしまった最初のポイントを、小川はていねいに抜けた。最後の登りもスムーズ。クリーンだ。2ラップとSSの3セクションのトータルで52点。しかし小川友幸は、タイムオーバーが3点となった。小川がセクションを抜けたとき、計時の時計の秒針が新しい1分を刻んでいた。ほんの数秒の差だったけれど、タイムオーバー減点が黒山より多いということになった。

1年ぶりの勝利。そしてゼッケン1番をつけての初めての勝利。小川友幸
おそらく勝っているだろうけれど微妙だと、ゴールでの小川友幸は、まだ喜びを顔に出せないでいた。セクションを抜けて、チームのみんなに勝利がほぼ確定的であることを教えられ、ようやくその表情に笑顔が見えた。
チャンピオン小川友幸の、これが初めての勝利だっだ。小川は2007年に全日本チャンピオンとなっているが、その翌年2008年には、ついに1勝もできずに終わっている。2010年、小川は再びチャンピオンとなった。その翌年の今年、開幕して3戦は、いずれも黒山が勝利した。残る2戦で勝てなかったら、いよいよ勝てないチャンピオンの不名誉な記録が決まってしまう。チャンピオンとしての小川友幸、待ちに待った1勝だった。
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□国際A級

チャンピオンを決定した三谷英明
今シーズンは、三谷英明が強い。ベテランだし、実力ある選手だし、IAS経験者だしで死角はないのだが、やっぱりあるはずの体力的衰えを試合運びなどでカバーしてきっちり勝利していく。こういうベテランに頭を押さえられていると、伸び盛りの若手もやりにくい。
三谷はこの勝利で今シーズンのチャンピオンを決定。意外なことに、三谷がチャンピオンとなるのは、ミタニ英明のトライアル史上、これが初めてだそうだ。
1ラップ目は砂田真彦が2位につけた。このまま優勝争いをするかと思われたが、残念ながら2ラップ目にスコアを伸ばせず後退している。
2位に入ったのは本多元治。今シーズン3戦目の出場で、それでもランキングで2位につけてきた。ベテラン、強し。
3位は開幕戦に続いて表彰台に乗った滝口輝。若手の筆頭株だが、なかなか表彰台の頂点に向かえないでいる。若手勢力が国際A級の中で圧倒的少数派となってしまっているのが、若手から元気を奪っている。2008年、2009年の国際A級は、今IASで戦う柴田、野本、斉藤、宮崎らが気分よくベテランを抑えていたような気がするのだけれど、気のせいだろうか。このまま全日本の国際A級はベテランライダーの天下というイメージが定着してしまうと、日本の未来が危ないから、なんとかしてほしいところ。でも少子化高齢化でトライアルも高齢ライダーがひしめき合ってきたから、ベテランの天下が定着したら、そちらのほうが多くに歓迎されるのかもしれない。なんて言わせていないで、若手の皆さん、どかんと突き抜けてください。
今回は、北海道大会に続いて、成田匠がガスガス・ランドネで参戦した。FRP製の燃料タンクが装着され、見た目もスリムに。登りの多い今回の会場では不利な面は多々あったが、堂々4位入賞を果たした。
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□国際B級

2勝目を挙げてタイトルを決めた小谷一貴
2位と1位しかない小谷一貴。チャンピオンシップにも王手をかける。
しかし小谷自身としては、この日はミスがあって、表彰台獲得はともかく、優勝はむずかしいのではないかと考えていた。それでも1ラップ目が終わってみると、小谷が26点でトップに立っていた。鈴木克敏が27点、朝倉匠が28点と1点刻みで続いている。
2ラップ目、小谷は崩れなかった。実は2ラップ目の減点そのものは、小谷よりも鈴木の方が4点少なく回ってきたのだが、鈴木には6点のタイムオーバー減点があった。それで2点差にて小谷の勝利となった。
鈴木も今シーズン3位3位2位と好調だが、第1戦を18位とはずしているのが痛かった。ここまでランキング2位につけていた山口雄治は今回11位。小谷にとってランキング争いのライバルが足踏みしたことで、ポイントの貯金は27点となった。これで最終戦は無得点でも、小谷のチャンピオンは変わらない。三谷英明とともに、2011年全日本チャンピオンの誕生だ。
3位は1ラップ目の7位から追い上げた武井誠也。鈴木のチームメイトでもある。北海道大会での13位に続くポイント獲得が3位表彰台となった。
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