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相模川河川敷のお話
神奈川県を流れる相模川という一級河川がある。
厚木のちょっと上流、猿が島と呼ばれる界隈のここは、今に始まったことではなくて、もう20年も30年も、オフロードを楽しむ人たちの間では知られているエリアだった。
今でも、ここで遊んでいる人はたくさんいる。ただし、オフロードパークというわけではないし、ある意味、みんな勝手に走っている。それで、まぁたしょうの悶着がありながら、20年も30年も、なにごともなく、すぎてきた。
でも、それでいいんだろうか。あらためて考えさせられる問題提起が、去年の夏ごろに起こった。そして、それは今でも続いている。誤解があるようだけど、この問題提起は、とても興味深くて、おもしろい。
話の発端は環境応援団いっぽの前田さんのところに相模川総合整備事務所から連絡があったところから始まった。そのあたりの経緯は猿ヶ島利用者連絡会の経過報告にも詳しい。
かいつまめば、あのあたりの河川敷には地主さんもいて彼らの気持ちを害することが起こっていないかということ、整備事務所が施工した水門の周囲が荒らされていて莫大な費用をかけて修復の必要があること、などが伝えられたわけだ。もともと環境応援団いっぽは、サーフィンを楽しむ人が砂浜のゴミを片づけるところから始まり、ゴミの源流をたどって相模川のこのあたりまでやってきていた。今回の話も、彼らが相模川のゴミ片づけをする過程で培われた行政との連絡の中から出てきた話だった。
とはいっても、相模川は誰が管理しているものでもなく、みんなが勝手に走り回っている。「ぼくは水門のところは走ってないもんねー」「われわれはマナーよく利用しているぞ、文句あるか」「悪いことしてるのは、ごく一部だろう」という声もあって、こういう話をまとめるのは、なかなかむずかしい。
このエリアを長く見守っていた側からは「10年に一度、オートバイで走るなという話が出る。その都度オートバイ愛好者はきちんと対処してきた。まじめにやっている人はまじめにやっているので、話を広げるな」という主旨のアドバイスもあった。
でも、実は河川の利用は法律的にいろいろあって、最近では一律に締め出すことなく、正しく利用してもらおうという風潮が出ているし、実際に国土交通省の答申でも、利用についての前向きな指針が記されている。ここには、モトクロス場についての微妙な記述もあるんだけど、この機会に、モータースポーツ側はもっと国土交通相にオフロードスポーツの存在を訴えなければいけないのかもしれないと思わせる答申でもある。
そういう意味でも、相模川を走り続けるなら、こっそり走っている時代ではないんじゃないか。すぐに行政に認めてもらうことはできないけれど(道路や河川敷の使用許可なんて、ちょっとやそっとでは出るものではない)やるべきことをやって、少しずつ歩み寄っていけるのではないだろうか。これは、オートバイと河川敷が仲よくなれるよい機会なのではないかという印象があった。
正直なところ、相模川で遊んでいる人たちの間には、横の連絡がない。モトクロスの人がトライアル遊びをする人と話をすることはほとんどなかったんじゃないかと思うし、まして、釣りやラジコンを楽しんでいる人と交流をもつなんてなかったと思う。
でも、今回はちがった。2004年夏ごろから、第三日曜日を相模川河川敷浄化運動の日と決めて、お昼から1時間くらい、自主的にゴミを拾う運動が始まった。自分で用意したゴミ袋にゴミを拾い集めて、集めたゴミは持ち帰る。この運動は、もともと釣りを楽しむ人たちがはじめたもので、これにオートバイを楽しむ人がのっかったかたちだ。
この運動が、行政の方にも認められたようで、2004年11月28日には相模川座架依橋付近河川敷での活動として、かなり大きな活動がおこなわれた。このときには、集めたゴミを行政が持っていってくれるということになった。ゴミを拾ってやるんだから持っていくくらいは行政がやれよと思うのは庶民感情として当然かもしれないが、行政がこんなふうに民間と共同でアクションを起こすのは、かなり珍しいケースなのだ。
今のところ、こういった活動の成果もあって、相模川からオートバイが締め出されるという予兆はない。けれどそれにはいくつか条件がある。
○利用者同士が仲よく利用すること
○大きな地形変化(破壊)を起こさないこと
○ゴミの不法投棄はしないで、むしろ可能な限り持ち帰る
○水門付近の人工建造物周辺は走らない
特に行政としては、最後の水門付近の破壊は、税金を投入して修理が必要な懸案なので、犯罪行為であるとも考えている。人が作ったものをこわしたのだから、立派な犯罪なんだろう。正直なところ、相模川を走ったことがある人で、水門を走ったことがないと自信を持てる人は、ほとんどいないんじゃないだろうか。ぼくも、その犯罪者の一人です(もちろんうんと前のことだけど)。今となっては、平らだった土手斜面は削れてしまってかっこうのオフロードパークみたいになってますが、ここだけは走るのをやめましょう。
河川敷で遊んでいるほかの人たちに出会ったら、アクセルを戻すなんてのは当然のマナーだが、機会があったら、なかよくお話をしてはどうだろう。
相模川クリーンアップトライアルは、こういった相模川の現況を知ってもらおうという意味もこめて、開催をはじめたもの。集合場所は、中洲のモトクロス仲間の集う広場になっている。オフロードを楽しむ人の中には、入り口にクルマを止める人が多いようだけど、対岸には釣りを楽しんでいる人がいる。排気音でうるさくしたら、もうしわけない。ちょっとごとごと走って、奥のモトクロスコースまで入っちゃってください。モトクロスコースには、子どもたちがたくさん走っている。元気な子どもたちを見ていると、こっちも元気になるし、彼らも、トライアルには少なからず興味があるみたい。そのうち、トライアル仲間とモトクロス仲間の合同オートバイ運動会なんかができたら楽しいねと、このあたりのモトクロス仲間をまとめている片倉さん(IB片倉久斗選手のお父さん)や小方さん(IA小方誠選手のお父さん)と話をしているところなのである。
モトクロスのパドックは真っ平らですから、ここをトライアルパークとは思えないけど、トライアル仲間が集う場所として、今後はここをベースにしたらどうだろう。
モトクロス、トライアル、そして四駆も交えて、モータースポーツみんながそろって、釣りやラジコンやバーベキューを楽しむ人たちと交流を持ちながら、河川敷を上手に使っていけるかどうか、使う人たちの意識と気持ちが問われている。
風の噂では「なんだかめんどくさいことが起こっているから、しばらくおとなしくしていよう」という人もいるらしい。そうじゃないのだ。みんなで河川敷に遊びにきて、正しく遊んでいる姿をきちんとアピールすることで、河川敷とオートバイの新しいおつきあいが始まるのではないだろうか。
今度の日曜日は、ふらりと相模川に遊びに行ってみてください。そのときは、ゴミ袋持ってって、ちょっとでも、ゴミ片づけてくださいね。
★このお話し、自然山通信誌上では何度かとりあげましたが、サイト上でも書いておこうと思い、これまでの経緯をまとめてみました。