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全日本北海道大会
全日本選手権第5戦北海道大会は、旭川北方、上川郡和寒町のわっさむサーキットにて開催された。
台風5号が本州をかすめながら北上し北海道に再上陸するおそれもあったが、幸い襟裳岬南方を通過、試合当日、すべてのライダーがスタートを終える頃には、厳しい日差しが注ぐまでになっていた。
試合は国際A級スーパークラス(完走7人)では小川友幸、国際A級(完走23人)では成田匠、国際B級(完走29人)では平田貴裕が優勝を得た。
なお、当日の試合速報は自然山モバイル速報にておこないました。
結果の詳細は自然山リザルトページをご覧ください。
●国際A級スーパー
●国際A級
●国際B級
台風はすでに通過しているので、天候は回復傾向。しかし土曜日は雨模様だったから、コンディションが複雑でむずかしい大会となるか!?
(写真は土曜日の高速道路にて。高速道路は冬季のなごりか、路面に深いわだちができていてまっすぐ走れませんでした。でも、ここまで曲がってしまうと、どうしようもない)
【国際A級スーパークラス】
手堅い走りを見せていた黒山健一が突然調子を崩したのは、1ラップめの第8セクションでのことだった。水の中から直角の岩に登るポイントで失敗。そこから、黒山の不調は始まった。
それまで、接戦ながらも野崎史高、小川友幸には確実な点差をもって試合を進めていた黒山だった。いつもの黒山なら、ライバルがミスをするのを尻目に、最小限の減点で試合をまとめていくはずだった。しかし今回は、失点を重ねていったのは黒山だった。8セクション、9セクション、10セクションと、黒山は5点減点を続けてしまった。
第8セクションで、黒山は今シーズン序盤で苦戦を強いられることになった肩の手術あとを痛めてしまっていた。ちょうど1年前、肩の脱臼癖が致命的なかたちで試合中に出てしまったのが、この北海道大会だった。あのときも、黒山は為すすべなく破れていった。今度も、黒山の走りは、痛む肩に支配されることになった。
減点を重ねて優勝戦線から後退していった黒山に対し、小川と野崎は緊迫した優勝争いを続けていた。1ラップめ、最初に3点減点をとって劣勢に回ったのは野崎だったが、第9セクションで小川が5点をとって、結局1ラップめの減点は小川9点に対して野崎8点。わずか1点差だが、野崎がトップで試合を折り返した。
ところが、そこから小川の底力が発揮された。小川は、去年シーズン、3連勝をしながら黒山に逆転を許してタイトルを逃している。タイトルを獲得するには、勝利し続けるのはもちろん大事だが、同時に、勝てないときにいかに上位をキープするかが大きな課題でもあった。06年は、小川が勝っているときには黒山は2位をキープし、一方黒山が勝利するときには、小川は3位以下にポジションを落とすことが多かったのだ。
07年、小川はその教訓をよく守っている。序盤の2連勝のあと、黒山が2連勝しているときには、がまんにがまんを重ねて2位をキープした。その成果が、現れようとしている。
勝利に向かって、小川の仕上げは完璧。野崎が2ラップめを2点でまとめて好調をアピールすれば、小川は10セクションすべてをクリーンして野崎の上をいった。これで試合は小川が1点リードに変わった。さらに3ラップめも、小川は10セクションすべてをクリーン。これで、野崎の勝利の目はついえた。野崎は時間に追われ、暑さに翻弄されて、試合終盤、集中力を欠いた状態でトライしなければいけなかった。勝負は完全に小川のものとなっていた。
もっとも、小川とて余裕で勝利に向かって突き進んだわけではなかった。この日のセクションは、クリーンもできるかわりに、失敗すれば5点になるリスクも非常に高かった。5点をとってしまえば、勝敗は簡単にくつがえる。野崎に先駆けてトライをしていた小川には、ライバルの動向はつかみにくい。結果的には、試合終盤に向けて、野崎が減点を増やしていたので、小川は勝利を確信することもできたはずなのだが、小川は最後まで緊張を絶やさず、野崎との逆転に細心の注意を払いながらトライを続けた。その結果の勝利だった。
また小川は、世界選手権日本GPの際に負った負傷の影響が、まだ残っている。5時間を通してトライアルをしたのはもてぎ以来この日がはじめてというし、膝の靱帯損傷の影響で、マシンに乗る姿勢もしっくりこないでいるという。そんな背景もあって、この日も自信を持って勝負に挑める状況ではなかったのだが、それでも試合が中盤から終盤に進むにつれ、細心の注意を払いながらも自信にあふれた走りを見せる小川がいた。
不調に陥った黒山は、小川毅士(イタリアから一時帰国。マシンはイタリアでのものと同仕様に仕上げた)や田中太一に3位の座を奪われるのも半ば覚悟しながらの試合となったが、終わってみれば3位は安泰。不幸中の幸いで、ぎりぎりのポジションを死守することに成功した。残り3戦を3連勝すれば、小川の成績如何によらず、黒山はチャンピオンの座につける。自力優勝の道が残るぎりぎりのポジションが、この日の3位だった。
【国際A級】
SY125Fを駆る成田匠が終始し試合をリードしてシリーズ3勝目。ランキングでは2位の小森文彦に6点差だが、底力を見せつけた感じ。いつものように、マシンの非力さをマンパワーでカバーしてセクションを走破していく成田。ぎりぎりのパワーで駆け抜けていく姿は、いまや全日本の名場面のひとつとなった。
試合開始直後の第1セクション、入り口のIASとほぼ共通の2段では、多くのライダーが刻んで横にそれて岩をクリアしていく中、野本佳章がきれいに岩ふたつを跳びきってクリーン。このセクション、岩にまっすぐ向かってクリーンしたのは1ラップめでは野本だけだった。ほか、竹屋健二と成田がここをクリーンしたが、このふたりは刻んで登っていった。野本は1ラップめには4位につけていたが、最終的には9位。3ラップを通して安定して上位をキープするのは、むずかしい。
【国際B級】
平田貴裕が2勝目。ライバル滝口輝とは2点差で辛勝ではあったが、流れとしては余裕のある勝ちっぷりだった。今回の勝利で、平田はA級昇格を決定した(このあと3戦を欠場しても昇格はゆるがない)。
平田、滝口の若手コンビに続いて3位、4位を占めたのは荒木隆俊と村上功のベテランコンビ。荒木は息子隆介との親子参戦。隆介はこれまで無得点が続いていたが、今回初めてポイント圏内に駒を進めてきた。1ラップめには、父親にあと2点差にまで迫っていたから、荒木家の世代交替ももう間もなくかもしれない。
荒木、村上のベテラン勢の追い上げが始まる2ラップめまで3位をキープしていたのは西村亜弥。全日本に初参戦した06年北海道大会では減点1点差でポイントをとりのがしたが、今回は減点1点差で表彰台を逃すことになった。国際B級歴は妹の萩原真理子より長いが、ポイントの獲得はこれがはじめて。国際B級としては遅咲きではあったが、全日本フル参戦で活躍を見てみたいところ(デ・ナシオン参戦断念もたいへん残念。今年の走りをヨーロッパでも見てみたかった)。