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小川友幸ホンダ4stで初優勝

5月7日、全日本選手権第3戦、天候は朝から小雨。ときどき少し激し目の雨。
この大会、ホンダRTL250Fに乗って2年目の小川友幸が、ついに全日本で勝利した。国際A級スーパークラスで4ストロークマシンが勝利するのはこれが初めてだ。
この大会では、黒山健一と野崎史高がヤマハDOHCエンジンを積んだニューマシンをデビューさせた。まだ出来立てのマシンでセッティングが完璧でないこと、ライダーがニューマシンと完全なコンビネーションをとれていないことで、彼らを持ってしても走りには苦しさが目立っていた。
国際A級は小森文彦が2勝目、国際B級は平田雅裕が2連勝を飾った。
<国際A級スーパークラス>
天気予報は雨だったが、降りそうで降らず、降らないと思うと降り出すという微妙な天気。しかしセクション的には、もうすっかりマディコンディションだ。
序盤は、黒山健一が好調だった。ただひとり第1セクションをクリーンすると、第4セクションまではクリーン一直線。第1を2点で抜けた小川友幸が3点、渋谷が4点でこれに続く他は、みな第1セクションを5点となっていて、出だしから出遅れてしまった。

ところが黒山は第5セクションの沢セクションで3点となると、とたんに調子を崩してしまった。詳細は不明なれど、沢でエンジンが水を吸ったような印象もあった。黒山本人は試合後「セッティングがまだ万全ではないから。猪名川くらいまでにはセッティングを出して戦いたい」と語ったが、セッティング不良にしろマイナートラブルにしろ、できたてのマシンを全日本に投入して初の試合だから、これも想定の範囲かもしれない。
「乗り方もまだ完全ではないし、慣れない乗り方で走っているから、試合の後半には疲れも出てきた。今日は勝てなくても予定通り」という黒山だが、見ている限りは慣れない4ストロークマシンを、なかなかしっかりコントロールしているように見えた。
対してもうひとりのヤマハ4ストロークエンジン使いとなった野崎史高は、すでに関東選手権新潟大会とT1トーナメントと、実戦を兼ねて2回のテスト参戦を済ませている黒山に対して、圧倒的に乗り込み不足を感じさせる走り。黒山を破るかの勢いを見せた2ストローク時代とは別人の野崎がスタートしているようだった。
実はこのマシン、黒山と野崎のために、一刻も早くとフランスから送られてきたもので、エンジンのない、ばらばらの状態で日本に到着したという。まだまだ市販状態とはいえない段階で、野崎も最初にこのマシンに接した時にはそれまでの楽観的な態度が一変、そうとう困り果てたというが、ようやく乗れるセッティングが出てきて今日の日を迎えたというところ。今シーズンの野崎は、病み上がりの第一戦、そして今回と、まずは参加することに意義のある戦いが多くなってしまった。
こんな中、好調にセクションを消化していくのが小川友幸だった。序盤こそ黒山にリードを奪われたが、といって、5点をとるような失敗もなく、ほぼ全員が5点のつるつる斜面の第7セクションをただひとり登りきるなど、黒山を追いつめ、そして逆転しリードを広げていった。
「ヤマハエンジンが4ストロークマシンをデビューさせたし、ホンダの4ストローク乗りとして受けて立たねばという思いが、今回はいいように働いた」と語る小川。いつものパターンだと、こういうプレッシャーにはつぶされることが多い小川だが、今回は見事なメンタルコントロールができたようだ。

渋谷は、勝負への執念はまったく見受けられないものの、セクションを攻めにいく気持ちは見ていて気持ちがいい。渋谷だけは、トライアル大会で勝負しているというより、デモでもやっているかのような感じ。この気持ちの持ちようが、今の渋谷にはいいのかもしれない。
1ラップ目、発表になった暫定結果はタイムオーバーが含まれていないもので、タイムオーバー次第で結果が変わってくるから、このへんからみんなが試合結果を把握できなくなってきた。1ラップ目(3時間半)のタイムオーバーは小川が3点、黒山が5点、渋谷が2点、田中太一、野崎史高が4点。田中善弘を除いては、全員がタイムオーバーとなっている。第1セクションがむずかしくてみんなが粘ったのと、岩場のセクションで失敗したライダーの脱出に時間がかかっていてこんなことになっている。それにしても、一番最後にスタートした黒山がもっともタイムオーバー減点が多いというのは珍しいパターンだ。
1ラップを終えたところで、タイムオーバーを加えた減点は、小川が23点、渋谷が24点、黒山29点、太一34点、野崎42点(リザルトにはトータルのタイムオーバーしか記載されていないが、すべて1ラップ目のタイムオーバーだった)。
小川同様、今回はチャンスだったはずの田中太一だが、しかし太一はまだ4ストローク1年目なのだ。考えてみるとこの5名の中で、去年と同じマシンに乗っているのは小川だけ。2ストロークに乗っているのは渋谷だけだ。
小川は、2ラップ目には難関7セクションを1点で通過し、いよいよ黒山の3連勝の望みを断ってしまった。対して黒山は1ラップ目にクリーンした第1セクションで5点となり、減点を増やしている。渋谷はこの時点では、まだ黒山に若干のリードを保って2位につけていた。
3ラップ目、渋谷が崩れた。コンディションも悪くなったのだが、一気に減点を10点増やして、このラップだけで黒山に15点も追いつめられてしまった。これで黒山の2位が確定。しかし渋谷も、今シーズン初表彰台。だれも上れなかった最終11セクションを、2度もクリーンした渋谷は、やはり類いまれな才能の持ち主であることが、あらためて思い知らされた。
1位 小川友幸 66点
2位 黒山健一 80点
3位 渋谷 勲 88点
4位 田中太一 108点
5位 野崎史高 123点
6位 尾西和博 139点
7位 井内将太郎 147点
8位 田中善弘 149点
(リザルトで成田匠がリタイヤとなっているが、エントリーしていたからリタイヤとなっているだけで、成田匠本人はスコットランドにいて会場には現れていない)
<国際A級>

小森文彦が3ラップともにトップをキープして、真壁に続いてシーズン2勝目。昨年は九州大会の勝利だけだった小森だが、早くも2勝目。今回の小森は、自分の走りに集中できて、満足いく戦いができたようだ。ライバルの動向を気にせず、早まわりをして自分の走りに集中し、途中ライバルに出会ってもトライを見ないようにしてなるべく自分以外の存在を消しながら試合を進めた。だから試合の流れも、終わるまで知らないままだった。もっとも、小森についたマインダーの田中裕人は、ある程度戦況を把握していたようだったが、この情報はライダーには伝えなかったとのことだ。
小森は、今回HRCの260ccキットパーツを組み込んでの出場。スムーズなパワーフィーリング、グリップ感など、たった10ccのスケールアップの効果は絶大だという。
2位の白神孝之は、2ラップ目の減点がちょっと大目だったのが残念な結果。それでも、今シーズンはまだ勝ちのない白神の、初めての2位となった。1ラップ目の11位から見事に追い上げた竹屋が3位。九州でも2位に入って、今年は気合いがはいっている。
4位はそろそろ表彰台の常連となりたい宮崎航。5位からはベテランが並び、岡村、三谷、本多、小谷、佃といずれもスーパークラスの経験者。10位に去年の暮から好調の西元良太がはいった。11位斉藤晶夫はA級での初ポイント。
1位 小森文彦 42点
2位 白神孝之 52点
3位 竹屋健二 57点
4位 宮崎航 60点
5位 岡村将敏 60点
6位 三谷英明 61点
<国際B級>

終わってみれば、わずか2点差での平田の勝利だった。B級2年目。1年目はポイント獲得が目的で、2年目の今年は開幕戦6位と、徐々に力を蓄えているように見えた平田だったが、九州大会では見事優勝。そしてこの大会でも勝利して、2連勝を飾った。
平田には年子の弟がいて、中部選手権では兄を破ることもあるという。その弟が、前戦から全日本に参戦している。初参加の九州大会はポイント圏外だったが、今回は弟、貴裕もしぶとい走りを見せている。お父さんは兄のサポートにつき、弟はひとりで走っている。ちょっとお気の毒だが、これがたくましさにつながっているのかもしれない。
この弟が、1ラップ目7位。対して兄は17位と出遅れた。正確な点差はわからないながら、ポイント獲得も一時はあきらめたという平田だったが、なぜか2ラップ目に大奮起。1ラップ目の16点をたったの5点まず縮めてトップに出た。3ラップ目は23点とまた崩れたが、ライバルもまた同じように崩れていて、2位に2点差の優勝だった。
今回のリザルトは、中部勢ばかりが並んだ。3位の大沢は関東のベテランだが、1位平田(愛知)2位志津野(岐阜)4位兼松(愛知)5位平田(愛知)。中部ばかりが強い理由は、なにかあるのだろうか?
グラチャン優勝のルーキー藤原は7位。大型新人ではあるが、優勝が当然のような前評判だったので、7位では物足りない気がしてしまうのはお気の毒。
1位 平田雅裕 44点
2位 志津野佑介 46点
3位 大沢一 47点