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ボウ、タイトルに王手
2008年世界選手権も残すところ2戦。第9戦(11試合め)ポルトガル大会は、9月14日に開催され、トニー・ボウが6勝目。計算上はいまだアダム・ラガのタイトルの可能性が残っているが、その差14ポイントは流れを見れば決定的。
2位に入ったのはジェロニ・ファハルド、ラガが3位で、藤波はいわくつきの4位となった。
最終戦はトライアルの本場バルセロナからほど近いサーキットで、翌週9月21日に開催される。
終盤戦にきて、このまま2位を繰り返していればタイトルが手に入る状況になったトニー・ボウだが、それではやはり納得しかねる。ここ2戦世界選手権ではラガに連敗を喫している。しかも1週間前に開催されたスペイン選手権でも、勝ったのはやはりラガだった。ラガが勢いづいているのは、ボウにとっては目の上の大きなたんこぶだ。
そのプレッシャーが、ボウの力になったか、今回のボウはすばらしかった。セクションは全体にやや簡単めといえたが、それがボウに有利に働くことはない。いくら簡単でも、世界選手権のセクションを連続12個にわたってクリーンし続けるのは、並大抵ではない。
13セクションでボウは5点になったが、しかしここは参加した全員が5点となったポイントだった。結局ボウは、13セクション以外をすべてクリーンして、5点で1ラップを終えた。2位はファハルドで9点、藤波が10点でこれに続いて、ここまでの勢いをさらに加速させたいラガは13点で、カベスタニーの11点、ランプキンの12点にも遅れをとって6位につけていた。
しかしラガは、後半がめっぽう強い。ここから反撃を開始する。まだ誰にも優勝のチャンスはあるが、事実上オールクリーンのボウはちょっと別格。2位の座は、9点のファハルドから13点のラガまで、誰のものになってもおかしくない。
2ラップめ第2セクションは、大岩のセクションだった。1ラップめにはご丁寧なきっかけが用意してあって(下位のライダーが建造したものらしい)トップにとってはクリーンセクションだったのだが、2ラップめにはきれいにきっかけがなくなっていて、いきなり超難セクションに。ランプキンもカベスタニーもあっさりとエスケープして5点になった。ファハルドもトライしたが、ポイントの直前で戦意喪失、5点を選んだ。きっかけがあれば岩をダイレクトに登れるのだが、きっかけがなくなった今、まっすぐは無理、別の岩からこの大岩に飛び移るのが唯一の選択となったが、その飛び移りがリスクが高い。飛べればラッキーだが、飛び足りなかったらとてもとてもたいへんなことになる。ファハルドが戦意喪失したのも、無理はない。
残っているライダーは3人。スタート順は藤波、ボウ、ラガと並んできたから、順番から言って、藤波が先頭でトライすることになる。藤波は躊躇なくここを飛んだ。飛びすぎるほど飛んで、逆に足が出てしまった。しかしここを(きっかけなしで)走破した初めてのライダーとなった。ボウは先を走った藤波に、攻略法を細かく伝授してもらってクリーン。ラガは1点でここを抜けた。
このとき、藤波のパンチカードにはクリーンが記録された。なぜかはわからない。そして世界選手権では、めったにないことだが、ありえないことではない。
試合はそのまま進み、ボウが2ラップめにふたつの5点をとったものの、トータル15点はほかを圧倒していた。
そして2位は1ラップめ10点、2ラップめ7点の藤波ということで、表彰式もおこなわれ、藤波は2位のシャンペンもいきよいよく抜いた。事態が急変したのは、その直後だった。
ラガの陣営から抗議が出され、藤波の第2セクションのスコアがおかしいということだ。藤波が表彰式でシャンペンを振っている間にオブザーバーが呼び出され、あれはいったい何点だったかのミーティングが開かれた。オブザーバーの一人は1点だったといい、もうひとりは2点だったと主張したということだが、これにラガの目撃情報が加わったという説もある。同じ足を2回出したのか、両足を出したのかも、どうもはっきりしない。こんな中、この場ではラガの主張が通り、藤波の第2セクションは2点となり(FIM発表のリザルトでは、第3セクションで藤波が2点となっている。一回発表したクリーンの欄を2点に書き換えるとき、2セクションと3セクションをまちがえたらしい。リザルトマネージャーのチャーリー・デマシューにはよくあるまちがい)なんと藤波、ファハルド、ラガの3人が19点で同点となった。こうなると勝負はクリーン数の勝負だ。藤波のクリーンは22、ファハルドは25、ラガは24。実は藤波は、クラッチに不調をかかえていて、それで細かいミスが出ていくつかのクリーンを失っていたのだ。
これで、表彰式での2位から、藤波は一転して4位にドロップした。しかもそのリザルト修正は、直接のライバルであるラガから出たもので、これに、現場を目撃していないファハルドも加わったという話もある。試合が終わってから、こんなふうに結果がひっくり返るとは、トライアルも困ったことになってきた。
ただ、幸か不幸か、これによってランキングには大きなちがいは出てこない。藤波は2位でも、ラガとのポイント差15点で、挽回はまず不可能。ファハルドは3位だとしてもカベスタニーに3点差でランキング4位を確保していたことになる。しかし、それはそれ、後味が悪い大会となったのは確かだった。
この大会、ジュニアカップは既報のようにロリス・グビアンが勝利してタイトルを決定。2007年ユースチャンピオンのアルフレッド・ゴメスが2位、2006年ユースチャンピオンのアレックス・ウイグが3位となった。
ユースクラスはフランチェスコ・モレットが勝利。鳴り物入りでデビューしたがイマイチ成績が伴わなかったポウ・ボテラが2位、終盤勢いのあったアドリアン・パストリーザが3位と、スペイン勢が表彰台を独占した。ユースクラスでは、スペイン勢の表彰台独占は、意外に珍しいことだ。
変わったところでは、16位に韓国の選手が入っている。ジュアン・ポンスのトライアルスクールからのエントリーで、スポーツ国籍はスペインとしてのエントリーだ。15位に20点差があるが、少し慣れれば、ポイント獲得はできそうな感じ。ポンスは、ライア・サンツを育てたことでも知られている。今はシェルコを使っての普及活動でがんばっている。
さて、世界選手権最終戦は、1週間後、9月21日にバルセロナ近郊で開催される。
RESULTS
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 計+TP | 合計 | C | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | Toni Bou | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 5+0 | 15 | 27 |
Montesa SPA | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 10+0 | |||
2 | Jeroni Fajardo | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 9+0 | 19 | 25 |
Beta SPA | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 10+0 | |||
3 | Adam Raga | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 13+0 | 19 | 24 |
GasGas SPA | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6+0 | |||
4 | 藤波 貴久 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 3 | 0 | 10+0 | 19 | 22 |
Montesa JPN | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 5 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 9+0 | |||
L1+L2+T/O | 計 | C | |||||||||||||||||
5 | Albert Cabestany | Sh | SPA | 11+9+0 | 20 | 24 | |||||||||||||
6 | Dougie Lampkin | Be | GBR | 12+12+0 | 24 | 23 | |||||||||||||
7 | James Dabill | Mo | GBR | 27+18+0 | 45 | 15 | |||||||||||||
8 | Marc Freixa | Ga | SPA | 27+30+0 | 57 | 14 | |||||||||||||
9 | Daniel Oliveras | Sh | SPA | 43+22+0 | 65 | 14 | |||||||||||||
10 | Henri Himmanen | Be | FIN | 44+43+0 | 87 | 8 | |||||||||||||
11 | Daniele Maurino | Ga | ITA | 48+43+0 | 91 | 7 | |||||||||||||
FIMジュニアチャンピオンシップ | |||||||||||||||||||
L1+L2+T/O | 計 | C | |||||||||||||||||
1 | Loris Gubian | Sh | FRA | 8+3+0 | 11 | 24 | |||||||||||||
2 | Alfredo Gomez | Mo | SPA | 6+6+0 | 12 | 24 | |||||||||||||
3 | Alex Wigg | Mo | GBR | 11+5+0 | 16 | 23 | |||||||||||||
4 | Guillaume Laniel | Ga | FRA | 10+13+0 | 23 | 20 | |||||||||||||
5 | Matteo Grattarola | Sh | ITA | 20+8+0 | 28 | 20 | |||||||||||||
6 | Julien Perret | Ga | FRA | 15+19+0 | 34 | 18 | |||||||||||||
7 | Ross Danby | Ga | GBR | 19+21+0 | 40 | 14 | |||||||||||||
8 | Jack Challoner | Be | GBR | 25+17+0 | 42 | 15 | |||||||||||||
9 | Fredrik Johansson | Be | SWE | 22+27+0 | 49 | 13 | |||||||||||||
10 | Ivan Peydro | Ga | SPA | 23+27+0 | 50 | 12 | |||||||||||||
11 | David Millan | Sh | SPA | 29+30+0 | 59 | 11 | |||||||||||||
12 | Laia Sanz | Mo | SPA | 29+36+0 | 65 | 10 | |||||||||||||
13 | Thibault Martel | Ga | FRA | 29+41+0 | 71 | 5 | |||||||||||||
14 | Jan Peters | Be | GER | 48+53+0 | 101 | 2 | |||||||||||||
15 | Ewoud Lalkens | Ga | NED | 69+68+0 | 137 | 1 | |||||||||||||
16 | Pedro Maia | Ga | POR | 55+61+1 | 117 | 2 | |||||||||||||
17 | Filipe Pavia | Ga | POR | 71+70+0 | 141 | 0 | |||||||||||||
FIMユースカップ125cc | |||||||||||||||||||
L1+L2+T/O | 計 | C | |||||||||||||||||
1 | Francesc Moret | Ga | SPA | 4+2+0 | 6 | 26 | |||||||||||||
2 | Pau Botella | Ga | SPA | 8+4+0 | 12 | 25 | |||||||||||||
3 | Adrian Pastoriza | Ga | SPA | 8+7+0 | 15 | 25 | |||||||||||||
4 | Maxime Warenghien | Sh | BEL | 10+7+0 | 17 | 20 | |||||||||||||
5 | Alexandre Ferrer | Sh | FRA | 18+2+0 | 20 | 23 | |||||||||||||
6 | Benoit Dagnicourt | Be | FRA | 16+6+0 | 22 | 20 | |||||||||||||
7 | Pere Borrellas | Ga | SPA | 12+19+0 | 31 | 18 | |||||||||||||
8 | Luca Cotone | Sh | ITA | 19+13+0 | 32 | 18 | |||||||||||||
9 | Janathan Richardson | Sh | GBR | 18+15+0 | 33 | 18 | |||||||||||||
10 | Simone Staltari | Ga | ITA | 17+16+0 | 33 | 17 | |||||||||||||
11 | Jake Whitaker | HM | NZE | 16+20+0 | 36 | 18 | |||||||||||||
12 | Marc Horrach | Ga | SPA | 25+11+0 | 36 | 17 | |||||||||||||
13 | Francesc Ciurana | Be | SPA | 20+20+0 | 40 | 12 | |||||||||||||
14 | Marcos Mendez | Sh | SPA | 30+18+0 | 48 | 15 | |||||||||||||
15 | Jonathan Walker | Sh | GBR | 25+23+0 | 48 | 14 | |||||||||||||
16 | Seoung Won An | Sh | KOR | 31+33+0 | 64 | 8 | |||||||||||||
17 | Jiri Fikejz | Sh | CZE | 40+26+0 | 66 | 7 |