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13回目のライアと日本勢

9月6日、フランスのLA CHATREで、女子世界選手権最終戦が開催された。例年のとおり、翌日がトライアル・デ・ナシオンとあって、この最終戦は参加者が多い。今回も、44名の女子選手が世界各地から集まった。日本人選手も3人出場した。
そして2013年のチャンピオンはライア・サンツが獲得。開幕戦2戦を欠場したものの、その後の3戦をすべて勝利して、有効得点制のルールによってタイトル奪取となった。彼女の世界タイトルは、これで13個目となる。

やっぱりライア・サンツは強かった。でも表情は必死だ。
結果から見れば、ライア・サンツの13回目のタイトルは、楽勝と思えるものかもしれない。有効得点制で、全部で5戦ある戦いのうち、成績のいい3戦の成績でシリーズランキングを決めるシステム。失敗する予定がなければ、2戦は出場する必要がない。
しかしそれでも、万一はある。事実ライアは、2007年にわずかなミスで世界タイトルを逃した苦い経験もある。今回も、勝てばチャンピオンだが、万一エマ・ブリストに破れて2位になったとしたら、チャンピオンはエマのものとなるという厳しいものだった。
いま、ライアはエンデューロやレイドと、戦いの舞台が幅広くなっている。トライアルへの比重が下がっているのは否めない。今年はルールがノンストップに変わっているが、新ルールへの完熟も充分とはいえない。
それでも最終戦の1ラップ目、ライアは12セクションをオールクリーンしてきた。

すっかり印象が大きくなったエマ・ブリスト
これに対して、ここまでランキングトップにつけているエマは、1ラップを2点で回ってきた。第7セクションで2点を取っただけの、クリーン11。やはりライアが強いのか、という印象のある一方、エマのがんばりも光っている。
2ラップ目。両者の戦いはますます接近戦となった。第4セクションでライアが5点。ここをエマが1点で通過する。つまりこの時点で、ライアは5点、エマが3点と、トップはエマがとった。このまま試合が流れれば、チャンピオンはエマとなる。
しかし第7でエマが5点。これで2ラップを終えて、ライア5点、エマ8点となった。たったの3点差で最終ラップ。この点差は、まだまだ安泰とはいえない。
3ラップ目。ライアが第3で2点、対してエマは3点。じりじりと点差は開いていくが、緊迫した接戦は、最後まで続いた。第8セクション、ライアが3点となるも、エマが5点となったところで勝負はついた。終わってみれば、ライア・サンツ10点、エマ・ブリスト17点。ダブルスコアに近い点差とみるか、たった7点差とみるか。
ライアに次ぐ2位争いをしている時代のエマとはちがって、打倒ライアがはっきり見えている今のエマ・ブリスト。その存在は、近年、急速に大きなものになっている。

FIM Good Shootから送られてきた沖本さんの雄姿
いっぽう、トライアル・デ・ナシオンに参戦のためフランスに渡った日本女子チームの3人も、この戦いに参戦している。佐々木淳子(東北)、沖本由香(近畿)、小玉絵里加(近畿)の3人だ。ノンストップルールで試合を戦うのも初めてだが、海外でトライアルをするのは3人ともこれが初めて。はたして実力通りの戦いができるのか、そこが最大の課題だった。
結果は、沖本が33位(減点110点)、小玉が36位(減点123点)、佐々木が42位(減点169点)となった。今シーズン、世界選手権には全部で47名の女子選手が参戦した。そのうち、ポイントを獲得できた(15位以内に入賞できた)のは、わずか22名でしかない。前の戦いで一桁入賞した選手が、次の戦いでは16位以下に落ちるという厳しい世界がそこにある。
一部の選手の友好の場であった創世記の女子世界選手権から、今は完全に世界のトップを目指してしのぎを削る戦いの場になった。その現場に、藤波貴久以外の日本人選手が、久々に打って出たというのは、未来のある話題となった。
翌日は、日本チームとして3人が戦う、トライアル・デ・ナシオンが開催される。

小玉絵里加のトライ。残念ながら、佐々木淳子さんの写真は手に入らず