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2015、最後の勝利はガスガスのラガ
2015年最終戦はスペインのテオで開催された。9月12日、13日。ワールドプロクラスと125クラスではすでにチャンピオンが決まっているが、ワールドカップクラスはランキング1位2位が大接戦で、最後の最後までタイトル争いがもつれ込んだ。
そして最後の戦いは、アダム・ラガの2連勝となった。ここまで、トライアルデビュー以来ガスガス一筋で戦ってきたラガが、最後に見せた意地の勝利だった。
セクションは減点を取るポイントが少なめ。こうなると、ボウの圧倒的なポテンシャルの強さは勢いをそがれ、正確に、慎重に、集中力よく戦ったライダーが勝利をおさめる。はたして勝利を得たのは、実によくセクションをコントロールしたラガだった。この2日間、ラガの集中力はそれはそれは見事だった。タイトルを決めながら、最後に勝利を奪われたボウにとっては悔しい悔しい最終戦となったが、ボウもこの日のラガの戦いには称賛するしかないものだった。
今シーズン、ボウはぶっちぎりの勝利を飾ることもあったが、総減点の少ない大会では、いくつかラガに敗北を喫している。かつて、ボウいじめと揶揄されるような、スタート順をひっくり返したり下見を禁止したりというレギュレーション変更が行われたが、そのいずれもが(ボウいじめが目的だとしたら)失敗に終わっている。ボウはレギュレーションの変かを誰よりも吸収し、さらに強くなっていった。そのボウでも、神経戦の戦いでは勝ちを取りこぼすことがある、ということだ。
ランキング3位は、ファハルドが獲得した。最終戦は5位と3位。カベスタニーは3位と4位で、その差はわずかながら縮まったが、最後には13点差をもってのランキング3位だった。
今シーズンのランキング3位争いは、ファハルド、カベスタニー、藤波で争われ、最もコンスタントに上位入賞を続けたファハルドが3位を得た。表彰台獲得は10回。2回の2位入賞があった。
後輪の上に燃料タンクを持つマシンでの最後の戦いとなったアルベルト・カベスタニーは、土曜日に3位表彰台を得たが、ファハルドを追撃することはできなかった。表彰台獲得は6回。藤波に次ぐ年長ライダーのカベスタニーだが、まだトップライダーとしての貫録は充分だ。
藤波は、最終戦でも本領を発揮することができなかった。ポルトガル大会前に発生した腰の痛みが尾を引いて、土曜日にはなんと10位という、近年の藤波にはあり得ない順位となってしまった。日曜日には7位と少し順位は回復したが、もちろんこれは藤波本来の成績ではない。
今年の藤波はひざの手術からの復活、さらにひざをかばうことによって変化してしまったライディングスタイル、加えていくつかの負傷があって、とても満足の行くシーズンにはほど遠かった。特に中盤フランス大会日曜日以降には表彰台獲得がないままに終わってしまった。シーズンの表彰台獲得は3回。開幕戦日本では2位入賞も果たしている。
しかし藤波の状況を理解しているチームや関係者の間では、この逆境でこれまで同様のランキング5位獲得は大きな評価を得ることになった。今年のランキング5位は3位争いから脱落したもので、内容的には去年のランキング5位とは異なるのだが、これが藤波の奮起となって、最年長と日本人ライダーの誇りは、2016年シーズンに再爆発してくれるにちがいない。
2016年のハイライトの一つは、ハイメ・ブストの登場だった。ちょっと不思議なキャラクターのブストは、4位入賞を3回得て、ランキング6位を獲得した。後半戦は不調の藤波を完全に食っていたが、藤波との間にはランキングポイントで14点差があった。チャンピオン経験者の藤波とルーキーのブストではまだそれだけの貫録差があったわけだが、さて来シーズンはどうなるか。ボウが頭一つ出ている実力差は明白だが、2位以降はかなり熾烈なものになる予感がある。
もうひとり、今シーズンは開幕戦に負傷して、7戦で得点できないという憂き目に遭いつつ、アメリカ大会で初めての表彰台に乗ったホルヘ・カサレスも、来シーズンが楽しみな一人だ。ブストの登場で次世代のスペインを担うライダーとしての注目は薄まってしまった印象だが、表彰台獲得はブストに先んじることができた。
後半戦は6位以内の入賞を繰り返し、ランキングは9位となった。
ベルティゴでの活動の初年度となったジェイムス・ダビルはランキング8位で、フランス人のシェルコライダー、アレックス・フェレールに次ぐポジションを得た。ダビルはマシンを開発しながらの世界選手権挑戦で、ちょっと苦しいシーズンとなった。
地味ながら、着々と腕を上げているのがスウェーデンのエディ・カールソン。カールソンは4人目のモンテッサ・ライダーだが、カールソンが乗るのはモンテッサ・コタ4RT RR。ロングストロークエンジン300ccを積んだ最新市販マシンだ。
300ccマシンは、低中速ではファクトリーマシンよりもパワフルという話もあって、カールソンの活躍は、このマシンを購入して各選手権を戦うライダーを勇気づけるものとなった。
■世界選手権ワールドプロクラス2015ランキング
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2015/09/150913_spa_pro.sta_.pdf
ワールドカップクラスは、ランキング2位と2位が同点という激しい接戦となった。ワールドカップと125クラスは有効ポイント制で競われていて、全18戦のうち16戦の上位の成績を抽出する。
全戦をトータルした場合と有効得点を集計した場合、トップが入れ替わるということになってのタイトル獲得劇だった。有効得点制の場合、高順位を獲得したライダーが上位に出て、全戦トータルの場合は確実に得点を重ねたライダーが上位に出る。もともとは全戦参加ができない経済的事情をも加味した制度だが、今年の結果はちょっと考えさせられるものがある。
■世界選手権ワールドカップクラス2015ランキング
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2015/09/150913_spa_cup.sta_.pdf
125はすでにアメリカ大会でタイトルが決まっている。通常、チャンピオンが決まると上位クラスに参戦を始めるライダーが多かったのだが、今年のチャンピオンはこのクラスで勝ち続けることを望んだ。
全18戦中、なんと17勝。ボウ以上の圧勝ぶりを見せて、有効得点制でのポイント差を72点としてシーズンを終了した。
■世界選手権125クラス2015ランキング
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2015/09/150913_spa_125.sta_.pdf
■世界選手権ワールドプロクラス結果
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2015/09/150912_spa_pro.sec_.pdf
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2015/09/150913_spa_pro.sec_.pdf
■世界選手権ワールドカップクラス結果
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2015/09/150912_spa_cup.fin_.pdf
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2015/09/150913_spa_cup.fin_.pdf
■世界選手権125ccカップ結果
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2015/09/150912_spa_125.fin_.pdf
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2015/09/150913_spa_125.fin_.pdf