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Xトライアル第3戦で、ボウがタイトルに王手
2016年Xトライアルは第3戦。今回はオーストリアのウイナー・ノイシュタットで開催された。トニー・ボウが2連勝で、2位にカベスタニー、3位にラガが入った。これでチャンピオンシップはボウが2歩リード、という戦況となった。藤波は3戦連続の5位。しかし惜しい5位だった。
今回のゲストライダーはドイツのフランツ・カドレック。今年からガスガスに乗ることになった若手ライダーだ。ゲストライダーは地元の人気ライダーが選ばれることが多いのだが、オーストリアのライダーをXトライアルに連れてきたら一歩も走れないか死んでしまうかどちらかなので、お隣のドイツのトップライダーであるカドレックがやってきたということになる。
しかしカドレック、なかなかあなどれない。昨年のこの大会にもゲスト出場しているカドレックだが、去年は最下位の8位だったが、今年はちょっと気を吐いた。まずトライ順を決めるスピードレースでカールソンを破り、カールソンを先に走らせてトライを進めた。今回のセクションはクォリファイに6セクション。第4セクション、第5セクションでカールソンよりも減点をかさんでしまい、カールソンには上位を譲ったものの、続く藤波とフェレールの対戦ではフェレールが第4セクションで失敗。これでカドレックはフェレールより上位に入ることになった。
フェレールは、今回は散々だった。序列からいけば、ここまでの2戦のトップ4はいずれもスペインが独占。5位は2戦続けて藤波、フェレールは2戦続けて6位となっている。フェレールとすれば、打倒藤波、5位獲得が大きな目標となるわけだ。最初のスピードレースで藤波に負けたフェレールは、藤波に先行してトライをする。ところが第4セクションで5点。ここはカールソンがクリーン、カドレックが2点となったところだから、フェレールは当然クリーンしなければいけなかった。この5点がなければカールソンと同点となったはずなのだが、これでフェレールは最下位争いとなってしまった。第5セクションを1点で抜けて、ここを3点のカドレックに対して2点追いついたものの、第4の5点は大きかった。
2戦連続5位、しかも第2戦ではファハルドに1点差でクォリファイ敗退が決まった藤波は、今回こそファイナルに進出して、4位以上、できれば表彰台を獲得したいところだ。表彰台を獲得するには、まずはクォリファイを通過しなければいけない。
クォリファイは前回までの下位の選手からトライしていくから、藤波がトライするときにはまだ上位の4名はトライしていない。上位4名は藤波以上のスコアをマークすればファイナル進出はできるから、計算や調整ができる点で有利になるわけで、藤波とすれば見えないライバルを相手に戦わなければいけないことになる。目の前の相手はフェレールだが、フェレールに勝ったからと喜んでいてはいけないわけだ。
今回の藤波は好調、フェレールとの勝負に圧勝するの明らかだったが、問題はトップ4の誰かをしのぐスコアになっているか、だ。惜しむらくは、藤波より下位の3名が1点で抜けた第1セクションを、藤波は2点で抜けている。ちょっと惜しかった。
さて、藤波のあとはファハルドとカベスタニーが走る。彼らは第1セクションをクリーン。ところがその後、ファハルドの方に細かい減点が出て、戦況が微妙になってきた。カベスタニーは難セクションの第2セクションを2点で抜け(藤波も2点で抜けている。ファハルドは3点)、第4を1点とした以外はクリーンばかりで、カベスタニーがファイナルに進出するのはまずまちがいない。カベスタニーのクォリファイの減点は3点。対してファハルドは7点だった。
藤波は8点。なんと、2戦連続にして、ファハルドに1点差でファイナル進出を逃すことになってしまった。しかも今回は、第1セクションであと1点もしくは2点減らすのは充分可能だったと思われるから、その悔しさもひとしおだろう。
最後の組はラガとボウ。ラガとボウは、ともに第2セクションを減点2としただけで6セクションを走りきって、タイブレイクによってボウのクォリファイ1位、ラガのクォリファイ2位が決まった。これで2016年のXトライアルは、3戦連続でスペイン勢ばかりがファイナルを走り、スペイン勢が表彰台を独占することになった。問題は、どのスペイン人が表彰台に乗り、どのスペイン人が表彰台の中央に乗るか、だ。
ファイナルは、クォリファイと同じ6つのセクションで競われる。ただし今度は、進行方向が逆側。最近のXトライアルではよく使われるやり方だ。ファハルドは第1セクションこそクリーンしたが(タイムオーバー1点がある)、4つのセクションで5点とちょっと奮わず。勝負の焦点は、カベスタニーとラガの2位争いとなった。
今回のセクション、第1と第5はクリーンセクション(トップライダーにしてみたら)、第2と第6は5点でしょうがないという感じの設定だった。カベスタニーが第1で1点、第3をタイムオーバー1点でクリーン。ラガは第1はクリーンしたものの、第3で5点となってしまった。続く第4ではカベスタニーか5点、ラガは減点1点、タイムオーバー1点で2点。これで両者は同点だ。ところが残る第5、第6は、クリーンと5点。二人の減点に変わりはなく、両者は同点で6セクションを走り終えた。
二人のために用意されたタイブレイクは、イベントの最後を飾るドラマチックな演出となった。この勝負はカベスタニーが勝利。開幕戦を勝利、2戦目で2位となったラガは、3戦目を3位で終えることになった。
前回第2戦までにチャンピオンシップポイントを同点まで戻したボウだったが、これで一気にそのポイント差を8点まで広げることができた。TRSのデビューシーズンは優勝で始まる最善のものとなったが、タイトル返り咲きにはちょっと苦しい展開になってしまった。
8点差は、計算上はまだまだタイトルが確定的というものではないが、ボウは最終戦で勝利の必要がなくなった。2位となればタイトル獲得はできるという計算だ(ボウが3位、優勝がラガだと、ポイントは同点で最終戦で勝利したラガがチャンピオンとなる)。ここまでの戦いっぷりを見れば、まずボウの10回目のタイトル獲得は確定的といったところだろう。
今シーズンはパリ大会がキャンセルとなって、全4戦のショートスケジュールとなった。いつもなら、毎週のように開催されるXトライアルが、今年は1ヶ月に1度というペース。最後の2戦だけが、2週続けて開催となる。最終戦マルセイユ大会(フランス)は、早、この週末に開催される。
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Photo:FIM/Good Shoot & Repsol Honda Team