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2016開幕戦は手負いのボウが勝利
2016年開幕戦スペインGPはバルセロナ近郊のカル・ロザールで、4月9日、4月10日の両日開催された。
さまざまな波乱ののち、2日間の総合勝者はトニー・ボウだった。2位にアダム・ラガ、3位にアルベルト・カベスタニー。今回は23人が出場するという、しばらくぶりににぎやかなトライアルGPとなった。
●土曜日
トニー・ボウを始め、スペイン人の多くはバルセロナ周辺の出身者だから、今回は地元中の地元の大会ということになる。
そんな中、シーズン開幕直前に、心配なニュースが飛び込んできた。トニー・ボウが負傷をして、インドアのXトライアル・デ・ナシオンを欠場するということだった。
負傷は右肩の靭帯の損傷ということで、安静にしつつ回復を待つことになったが、はたして開幕戦を走れるものか、あやぶまれるところでもあった。
もちろん、当人には欠場するつもりはない。しかし出場してもどれだけ走れるものか、今シーズンへの影響はいかばかりなのか。来れまた直前に飛び込んできたマーチン・ランプキンの訃報とともに、不安ぶくみの開幕戦となった。
今回の驚くべきは、ハイメ・ブストだった。昨年ランキング6位のルーキー。2年目の今年は、いよいよより上位にジャンプアップするためのシーズンとなるが、そのチャンスはいきなり訪れた。
1ラップ目、ブストは12セクションのうち11セクションをクリーンして、ラップスコアはたったの2点だった。2位につけたのがジェロニ・ファハルドで6点、3位がボウとラガが同点で7点、カベスタニーが10点だから、その好調ぶりが伺える。
ブストの好調は、2ラップ目にも衰えなかった。2ラップ目のブストは、2ラップ目ほどではないにしろ乗れていた。5点一つと3点一つで、ラップ合計は8点。このラップ、カベスタニーが4点をマークして追い上げてきたが、それでもまだ4点差で、ブストは全体のトップにいた。
しかし残念。ブストの初勝利は、もう少しお預けとなった。3ラップ目、それまでの2ラップとは一転、ブストのライディングが荒れてきた。多くのトップライダーが一桁減点で3ラップ目をまとめてきた中、ブストだけが16点。これでブストは、表彰台からも滑り落ちてこれまでの最上位記録を破れず、4位となった。
3ラップ目、追い上げが最も急だったのはボウだ。ボウのラップ減点は1ラップ目のブストと同じ2点。しかしボウは、2ラップ目に12点の減点を喫している。
ボウの次に3ラップ目に好スコアをマークしたのがファハルドだった。ベルティゴでの初めてのアウトドア世界選手権。2ラップ目の4つの5点が惜しまれる。
優勝したカベスタニーは、3ラップ目が6点。トータル20点は、ボウに対してたったの1点のアドバンテージだった。この勝利は、カベスタニーにとっては2012年のアンドラ大会以来。うれしい開幕戦勝利となった。
藤波貴久は2ラップ目は5点とカベスタニーに次ぐ好スコアをマークしたが、1ラップ目と3ラップ目にあわせて6個の5点があって、7位と低迷してしまった。しかし走りの内容もからだのコンディションも悪くないということで、巻き返しに期待したいところ。
今回は23人も参加者がいたから、ノーポイントに終わったライダーも少なくなかった。ベルティゴのフランチェスク・モレ、モンテッサ300の開発を務めていたエディ・カールソン、昨年の日本GPで大けがを負ったマイケル・ブラウンらが、16位以下に沈んでいる。
●日曜日
ボウの肩の負傷は、一晩寝たくらいでよくなるわけもなく、土曜日の苦戦はそのまま日曜日の苦戦につながるはずだった。
しかしトライアルでは、ときどき手負いのライダーがとんでもないパワーを発揮することがある。究極の身体能力が要求されるのはもちろんだが、それ以上にライダーのメンタル能力が勝敗を左右する、ということなのではないだろうか。
この日のボウは、最初から好調だった。結局1ラップ目から3ラップ目まで、一度もトップを譲ることなく、2位のラガに14点の大差をつけて勝利してしまった。かわいそうに、こんな勝ち方をしてしまっては、肩の負傷はたいしたことがないのではないかと思われてしまいそうだが、本人は、日本までにしっかり治して、次はもう少しよい状態で戦いに挑みたいとしている。
2位はラガ。土曜日に続き、セクションが比較的やさしめだったことで、ちょっとしたミスの5点が勝敗を決定的にしてしまう。この日のラガは、2ラップ目に11点と二桁減点を喫してしまったのが痛かったが、セクションごとに見ると、ボウが3ラップともにクリーンをした第6セクションで、3ラップともに5点となったのが決定的だった。ここは日曜日の設定変更で難易度を増したところで、ボウにすればしてやったりというところだ。
3位には、ジェイムス・ダビルが2012年祭終戦以来の表彰台を獲得した(2012年のこの時、ダビルが表彰台をファハルドに譲れば、ファハルドはランキング2位を得る状況だったが、ダビルは自身のトライアルを完遂した)。これは同時に、ヴェルティゴの初表彰台でもあった。ファハルドの加入で、ヴェルティゴライダーの先駆者としてのダビルの存在が微妙になるやもと心配していたところでこの結果。ヴェルティゴのポテンシャルは、これでいよいよ証明されることになった。
4位は、土曜日同様にブスト。しかし土曜日とは内容が一変。優勝争いから脱落して4位の土曜日に比べて、この日は最初から最後まで4位の走りだった。2年目を迎えてそろそろ表彰台がほしいブストには、日曜日のこの結果は大きな課題になったようだ。
土曜日の結果を改善できたかどうか、藤波は5位に入った。7位よりは5位の方がだいぶいいが、ブスト同様、表彰台を目指す藤波にとっては、課題を残す開幕戦となった。ただし昨年までのウィークポイントだったひざは、完治とまではいかないまでも劇的によくなっていて、調子は悪くない。ライダーの取り組み方などに問題があるということだ。
ファハルドは6位、カベスタニーは7位となった。きのう勝利したライターが今日は7位となるのだから、トライアルはおもしろい。セクションの難度が低い大会は、一部ではおもしろみに欠けるといわれるも、順位争いの変化が大きい点では、なにより効果がありそうだ。
トライアルGP土曜日の結果表PDFです。4ページあるので、スクロールして見てください。拡大もできるし、別に開くこともできます
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トルノール カルデンベルグ ソレンセン カールソン カサレス ノゲラ フェレール タレス
ダビル カベスタニー ラガ ボウ 藤波 ファハルド ブスト
●トライアル2
今回から、ワールドプロクラスはトライアルGPクラスに、オープンクラスはトライアル2クラスに、125クラスはトライアル125クラスとなった。
トライアル2の緒戦は、アルナゥ・ファーレ(スペイン・ガスガス)が土曜日に、イワン・ロバーツ(イギリス・ベータ)が日曜日に勝利した。今回のトライアル2は、土曜日と日曜日の上位陣の顔ぶれががらりと変わるおもしろい結果となった。ランキングトップとなったのは6位と優勝のロバーツで、2位は優勝と8位のファーレ、7位と3位のジャック・プライス(イギリス・ガスガス)が3位となっている。トライアル2クラスは30人の参加があった。
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●トライアル125
トライアル125は、土曜日と日曜日が同じ顔ぶれの表彰台となった。参加者は8名。トライアルGP、トライアル2に比べると、ちょっとさびしい顔ぶれだ。
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Photo:FIM/G2F MEDIA