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ドギー・ランプキン、SSDTで10勝目
5月7日、2016年SSDTは最終日を迎えて、無事終了した。勝ったのはドギー・ランプキン。昨年、ヴェルティゴをデビューウィンさせたトライアル・キングは、ヴェルティゴで2連覇。6日間のうち、3日間でオールクリーン、残る3日間も一桁減点のみで走り抜けて、トータル減点はたったの17点というすさまじい勝ちっぷりだった。ドギーはこれでSSDT6連勝。そして自身10回目の勝利を得た。
とはいえ、ドギーに続くはマイケル・ブラウンが6点差で追ってくるという展開だ。1日30個もセクションがあるのだから、6点差は簡単にひっくり返される点差でもある。最終日のドギーは、さすがにオールクリーンというわけにはいかなかったから、最後の最後まで気の抜けない6可汗の戦いとなった。
マイケルは、去年の日本GPでの負傷から世界選手権では実力発揮ができていない現状だが、今回の6日間では、ドギーにはかなわなかったものの、6日間をすべて一桁減点で走りきり、トータルで26点、1日平均5点弱という素晴らしい集中ぶりを見せた。世界選手権ほどセクションが厳しくないとはいえ、6日間に渡って荒野を走るこのイベントも、身体的にはなかなかたいへんなはず。本調子ではないとはいえ、マイケルも着々と復調に向かっている、その証明となったSSDTランナーアップだった。
マイケルに続く3位はジェイムス・ダビル。ダビルは2007年と2011年、2度のSSDT勝者。今回は金曜日にオールクリーンを達成して、マイケルに遅れること6点で3位となった。ヴェルティゴは優勝と3位を得て、大成果だ。
この、上位3人に続いては、ジャック・シェパード、サム・ハスラム、アレックス・ウイグ、サム・コナーと、世界選手権やジュニア選手権で活躍した往年のライダーが並び、8位にスコットランドのトップライダー、ギャリー・マクドナルドが入っている。ウイグは2010年、コナーは2005年にSSDT勝者となっていて、今回は水曜日のオールクリーンで帰ってきた。
初出場の選手によるニューカマー賞は、日本GPにも来日したトム・フーパーが勝利。総合では20位、トータル減点は87点だった。
フーパーに続いて総合21位に入ったのがアモス・ビルバオ。今回アモスが乗ったのはモンテッサ4RTを、いわばトレッキング用にし立てた4Ride。いわゆるトライアルマシンのシルエットではないが、マシンの潜在能力と快適性、そしてアモスのいまだ高いトライアル能力を遺憾なく発揮した結果だった。トータル減点は91点。SSDTにはトレールマシン部門賞などはないのだが、アモスはイギリス人以外で最も好成績をあげた者に授けられる外国人賞を獲得した。アモスはまた、40歳以上部門の第2位。この部門の勝者といえば、やっぱりドギー・ランプキンなのだった。
ドギーが乗ったのはヴェルティゴ300だが、いとこのジェイムス・ランプキンはベータ250に乗った。そして見事250cc以下クラスで勝利した。ジェイムスは総合では17位だった。
81年の世界チャンピオンにしてSSDTチャンピオン、フランスのジル・ブルガは総合79位。総減点296点。今でも純粋にオートバイを楽しんでいるという風情のチャンピオンだ。
9人が参加した女性ライダークラスでは、当然のように世界チャンピオン、エマ・ブリストが勝利した。エマの総合順位は42位。総減点は176点。日本GPで優勝したダン・ピースに40点差ほど、ドギーの弟のハリー・ランプキンには2点差で勝っている。トライアルが上手だから世界チャンピオンになったのは当然だけど、この人は世界チャンピオンになってから、どんどんうまくなっている気がする。今回の勝負では、25年前の世界チャンピオンより、現役の女子チャンピオンの方がだいぶ成績がよい、という結果が残った。
女子2位はスペインのサンドラ・ゴメス。エマには倍近い点差をつけられたが、かつてはイギリスナンバーワンだったベッキー・タルボット・クックに僅差で勝利した。地形や環境への慣れもあってか、SSDTはやっぱりイギリス人が強いから、サンドラのこの結果はなかなかがんばった結果。総減点335点で総合96位だった。クックは総減点351位で102位。132位に、SSDTやノーストップルールではがぜん本領を発揮するケティ・サンターが総減点408点で入っている。
女子クラスではあと5人。3人が完走して、ふたりがリタイヤ。女子トライアル・デ・ナシオンのイギリス代表となり、3度勝者となった実積のあるつわものだが、今回は木曜日にリタイヤとなった。マシントラブルの模様だ。
そして今回が6回目の挑戦となる小林由利子は、やはり残念ながら2日目のセクション群見落としで失格となった。オーバーフローによるガス欠の恐怖(去年はガス欠で荒野から歩いて帰ってきた経験あり)から、申告5点をしにいく余裕もなくセクション群を通過してしまったものらしく、この場合、セクションの見落としは50点減点(10点減点ではない!)ですむのだが、3〜4のセクションがまとまっているセクション群(ヒル、丘という)をまるごと不通過だと、競技を続けることができない決まりなのだった。
さて、今回は2名の国際A級ライダーが参加した。波田親男と喜岡治だ。今回の日本勢8人の中で、喜岡だけがモンテッサに乗り、波田と接戦を繰り広げていたが、木曜日以降は負傷の影響もあってこの争いから一歩後退。それでも無事に(無事じゃないのだが)完走。波田は483点152位。喜岡は625点202位だった。
ミッショントラブルで井之前正輝(愛知県。参加2度目)がリタイヤとなったが、その他の皆さんはみなオンタイム(毎日1時間以上のタイムオーバーで失格となる)完走を果たした。
大西弘晃(岡山県。参加2度目)が832点で228位、河野完次(岡山県。参加3度目)が849点で231位で初完走。宮原剛司(愛知県・初挑戦)が876点で233点。杉浦勝好(愛知県・参加2度目)が935点234位。完走は234人だった。
ゴール後の写真の中に、こんなのがある。この2台はともにランプキンの競技車両で、写っている二人もランプキン。右側のちょっとおっさんはドギー・ランプキンで、左のじいちゃんはアラン・ランプキン。ドギーのおじさんで、先日亡くなったマーチン・ランプキンのすぐ上のお兄さん。アランの息子がジェイムス・ランプキンで、今回も250ccクラス優勝をしているSSDTの名手だが、一時はドギーのマインダーを担当していたこともある。左側のマシンは、そのジェイムスがプレ65に出場したマシン。ジェイムスは総合優勝こそしなかったが、200cc〜250ccクラスで優勝している。実はアランは、1966年にBSA250でSSDTに勝利している。未確認だけど、おそらくこのBSAはアランが50年前に勝利したマシンそのものだと思われる。プレ65の200cc〜250ccクラス優勝は「Theランプキンカップ」と名付けられている。ジェイムス本人がいないのがちょっと残念だけど、このふたりと2台のツーショットはランプキン家の偉大さを物語る1カットだ。今回のドギーの勝利は、ランプキンファミリーにとって、15勝目(ドギー10回、マーチン3回、アランとアーサーが1回ずつ)のSSDT勝利となった。
Photos : Trialscentrai.com