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アンドラGP、トニー・ボウ完勝。藤波が土曜日に3位
標高の高い、山のてっぺんでの開催となるアンドラGP。表彰台の1位、2位は、土曜日、日曜日ともに同じ顔ぶれだった。勝利はトニー・ボウ、2位はアダム・ラガ。日本GPの日曜日以降、5戦連続同じ結果ということになる。
土曜日の3位には、藤波貴久が入った。ただし日曜日は6位で、ちょっと不本意な2日間となった。それでもぎりぎりのところでランキングは3位を守っている。日曜日の3位はジェロニ・ファハルド。ヴェルティゴに移籍してから、これが初めての表彰台となった。
アンドラは18セクションの2ラップの戦いとなる。12セクション3ラップとセクション数は同じだが、長く標高差のあるコースは、厳しい戦いをライダーに強いることになる。
アンドラは、国が丸ごとピレネー山脈のまっただなかにあって標高が高い。それでも、今回のパドックは町の中にあって比較的標高が低く、大半のセクションは山のはるか上。第1セクションと最終セクションが町に近く設定されていた。17セクションから最終18セクションまでは、標高差1000メートルほどを一気に降りてくることになる。
すっかり成績がいいので、みんな忘れてしまっているかもしれないが、トニー・ボウはいまだにけが人である。藤波同様、簡単には治らないかもしれない。今回は右肩に青いサポーターを装着して試合に臨んだ。手負いのボウにとって、長い下り坂でのコース移動は厳しいものになった。
ボウのライバルは、いつものようにアダム・ラガだ。ボウが負傷している今シーズンは、ラガにとっては大きなチャンスでもある。今回のような高地では、2ストロークマシンより4ストロークマシンの方が空気の薄い影響が顕著に出る。
金曜日の夜、アンドラは雨に包まれた。濡れたアンドラの岩はよく滑る。むずかしい大会になりそうだ。ただしトライアルGPクラスのスタートまでには雨は止んで、その後は徐々に乾き始めた。後半になるほど、セクションコンディションはよくなる。しかし特に1ラップ目は、時間がない。
ボウ、ラガ、そして藤波と全員がタイムオーバー、しかもボウに至っては、最終18セクションをエスケープしてなお、5点のタイムオーバーが残るという厳しさだった。
実はボウは、17セクションでパンクに見舞われた。気がついたときにはすでに18セクションへの長いコース移動にかかっていて、そうなるともはやマインダーも追いついてこない。そのまま18セクションまで下りきったときには、ビードも落ちきっているという悲惨な状態だった。コースが下る一方で、のぼりがなかったから助かったようなもの、もしものぼりがあれば、ビードが落ちたタイヤでは走破できなかったはずだ。そしてボウは、最終セクションをトライするのをあきらめ、申告5点をもらうことになったのだった。ラガは最終セクションをクリーンして、7分のタイムオーバー減点となった。ボウは5分のタイムオーバーに5点。これでリードを3点奪い返されることになったが、最悪の事態よりはずいぶんと結果は良かった。1ラップ目、ボウ34点、ラガ33点。数字はラガが1点リードしているが、内容的にはボウの強さが光っている。
藤波は2分のタイムオーバーで1ラップ目の減点は41点だった。4位ハイメ・ブストには3点差、5位アルベルト・カベスタニーには7点差。まだまだ先行きはわからない。
2ラップ目、ボウはいよいよ絶好調だ。3点ひとつ、1点三つで計6点。ラガもよくおいすがったが、3点と5点貸って、ぎりぎりの差で勝利はボウのものとなった。
ボウはバルセロナの出身だが、今はアンドラに住んでいる。いわば地元での勝利というわけだ。そしてまた、この地に住みながら高地でパワーを引き出す方法を模索してきてもいた。その成果が、ばっちり結果になったアンドラ大会だった。
3位は、すっかり藤波で決まりだと思いきや、ブストがことのほか好調。最終セクションまで、藤波を3点リードして3位につけていた。このままゴールすれば、ブスト自身初の表彰台だ。ところがこれがプレッシャーとなったのか、最終セクションで5点。表彰台はまたも夢物語となって、藤波が2点差で今シーズン3度目の表彰台獲得となったのだった。
ブスト4位、カベスタニー5位。今シーズン、ランキング3位は藤波とこの二人の間で接戦。ちょっと離されてジェロニ・ファハルドとジェイムス・ダビルのヴェルティゴ・コンビがつけている。
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2016/06/101-TRIAL-GP-07-AND-2016-FINAL.pdf
日曜日
土曜日の夜もまた雨が降った。これはまた厳しい戦いになるのではないかと予想される一方、意外に少数減点の勝負となった土曜日のこともあり、セクションはやさしくされるばかりでなく、難易度をあげた変更をされたところも少なくなかった。
あけて日曜日、コンディションは土曜日よりさらによくなった。雨が止むのが早く、乾きも早かったからだ。土曜日の2ラップ目が、10点内外の減点の勝負となったから、日曜日はさらに少数減点の勝負となりそうな予感はあった。神経戦だ。
この日も、トップ争いはボウとラガの一騎打ちになった。1ラップ目、ボウは土曜日に続いて絶好調。1点4つで、スコアをたった4点でまとめてきた。ラガも負けていない。1点は4つ。しかしラガには、第3セクションでの痛恨の5点があった。この神経戦では5点ひとつは致命的。しかしいまはノーストップルールの時代だ。ボウとてもワンミスで5点をちょうだいするかもしれない。
しかし2ラップ目、二人は見事だった。18セクションを一度も足をつかず、減点ゼロで走りきってしまった。二人がともにオールクリーンで2ラップ目を終えてきたので、トータル減点は1ラップ目のスコアがそのまま、ボウが4点、ラガが9点。ラガの1ラップ目の第3セクションでの5点は、とても手痛い失点となったのだった。
3位争いは、この日はファハルドが好調だった。ボウとラガには届かなかったが、1ラップ目に3位につけると、2ラップ目に1点二つで4位以下を振り切った。ファハルドは、今シーズンからヴェルティゴに乗るも、ダビルに表彰台獲得で先を越され、ちょっと苦しい状況になってしまっていたが、これでひと安心といったところだろうか。
1ラップ目の10点台はファハルドの他、ブストがいた。しかしブストは、またしてもまたしても表彰台に届かず。もっとも多く4位をキープする安定感はすばらしいが、表彰台が遠いのは、なにか理由があるのだろうか。
1ラップ目20点台は3人だった。カベスタニーが22点、藤波が23点、ゲラベルトとダビルが25点で、この4人が5位争いということになった。この中で、2ラップ目に一桁減点をマークしたのがカベスタニーと藤波で、5位争いはこのふたりに絞られた。この日のカベスタニーと藤波は接戦だったが、1ラップ目に1点、2ラップ目に2点、トータルで立った3点さながら、カベスタニーの5位、藤波の6位が決まった。今回はファハルドはちょっと届かない好調ぶりを発揮していたが、藤波からブストまではわずか5点だったから、4位から6位はどう転がっていてもおかしくなかったわけだ。
ボウはアンドラを完全勝利で、この大会だけでラガに6点差をつけることができた。藤波は土曜日の3位で喜びを味わったが、日曜日に6位、終わってみればランキング3位が維持できたのがよかったところで、あまり印象のいい週末とはならなかった。ブストは安定して4位に入るも、すでにこのルーキーの目標は4位ではない。またも表彰台を取り逃がしてちょっと失意の週末となった。
ファハルドは藤波とは正反対に初日の6位から日曜日に3位表彰台。ようやくシーズン初表彰台となったが、今年のファハルドは先輩カベスタニー、後輩ブストに敗することが多く、ランキングは彼らにやや離されての6位となっている。
なお、この大会で、TRSのポル・タレスが引退を表明した。偉大なチャンピオン、ジョルディ・タレスの甥っ子であるポルは、なかなかその血筋を結果に活かすことができず苦戦。ケガも多かった。最後の大会は、14位と16位だった。
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2016/06/101-TRIAL-GP-08-AND-2016-FINAL.pdf
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2016/06/CHAMPIONSHIP-2016-TRIAL-GP.pdf
さてシーズンは中盤戦真っ盛り。次の戦いはすぐ翌週のフランス大会だ。
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2016/06/102-TRIAL-GP-07-AND-2016-SECTION-TRIAL.pdf
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2016/06/102-TRIAL-GP-08-AND-2016-SECTION-TRIAL.pdf
■トライアル2
今シーズン、ここまで4人の勝利者が出ているトライアル2。その中で唯一2勝以上をあげているのがジャック・プライス。ドイツ大会での完全勝利に続いて、4勝目3連勝を達成だ。
しかし日曜日はアルナウ・ファーレがシーズン2勝目。プライスは2位となった。ランキングはプライスが独走状態だが、誰が勝ってもおかしくない今年のトライアル2は、稀に見る激戦区となっている。
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2016/06/CHAMPIONSHIP-2016-TRIAL-2.pdf
■トライアル125
ドイツ大会で、それまでトライアル2に参戦していたヤルモ・ロブランが勝利して、このクラスもおもしろい展開になるかと思いきや、このライダー、地元でのたった1戦だけ完全勝利して、またトライアル2に戻っていった。ドイツ大会まではトライアル2で無得点続きだったのが、今回のアンドラでは14位と15位ながらポイントを獲得。こんな調整の仕方もあるのだろうか。
さてお騒がせの強敵がいなくなって、土曜日はジャック・ピースが勝利に戻った。しかし日曜日、ピースの連勝はならず。勝ったのはドイツのマックス・ファウデだった。ファウデはランキング2位の選手だが、今シーズンは初優勝。ピースは2位で、あいからわずランキングトップを守っている。
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2016/06/CHAMPIONSHIP-2016-TRIAL-125.pdf