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ドギー・ランプキン、ウィリーでマン島1周
ドギー・ランプキンが、6月26日、また新たなトライアル記録に挑んだ。モーターサイクル伝統の島、そしてドギーの住むマン島のTTコースを、ウイリーをしたまま走りきるという挑戦だった。
この写真は、マン島TTレースでも有名なクレイニーバーという、有名なレストランのある左コーナーを抜けたところでウイリーをするドギー。ちなみに、クレイニーバーはレストランだからBarなのかと思いきや、CREG-NY-BAAです。マン島は英語とは少しちがう別の言語も持つので「baa」が「bar」のことなのか別の意味なのかはわかんない。
さてドギー・ランプキンは、いわずとしれたトライアル世界チャンピオンのビッグネーム。最近はトニー・ボウの大活躍にその名が隠れがちだが、圧倒的強さで世紀を越えてトライアル界に君臨した。7回のアウトドアと5回のインドア、合わせて12回の世界チャンピオンだ。ひところ、ドギーは7回の世界チャンピオンと呼ばれていた。なぜか世界チャンピオンといえばアウトドアばかりで、インドアは数に数えない風潮があった。そういえばホンダのホームページでも、レース結果に扱われるのはアウトドアばかりだった。最近、インドアも数に入れてもらえるようになって、世界選手権のタイトル数はインドア・アウトドア合わせて数えるようになってきた。トニー・ボウは10回ではなく20回の世界選手権チャンピオンだし、ドギーは12回のチャンピオンというわけだ。
そしてマン島は、ご存知の通り、市外地コースでのレースが行われている島。ビートルズが生まれたリバブールの沖に浮かんでいる。マン島TTレースは初開催が1904年だから、SSDTとほぼ同じ長い歴史を持つ。マン島での最初のモーターサイクル競技は、TTレースではなくトライアル(オフロード競技)だったという記録もあるが、ともかくマン島とモーターサイクルは深い絆があるのだった。
マン島はまた、ドギーのおうちのある島でもある。もともとドギーはリバブール空そんなに遠くない、シルスデンという町の生まれ。近くにシェフィールドというちょっと大きな町があって、ここで開催されているインドア大会は有名なところだ。マン島はタックス・ヘイブンの地としても有名で、たぶん高額所得者のドギーは、ここに住んで節税をしているということだ(ちょっとぐぐったら、マン島に投資して節税してもうけませんか、という詐欺があるらしいから、気をつけてください。ぜんぜん関係ない話ですが)。
TTレースの行われているコースは1周約60km(37.7マイル)。長いだけじゃない。コーナーの数は200とも300ともいわれるし標高差も400mに近い。途中にある橋では、路面の起伏によって大ジャンプを余儀なくされるところもある。ここをドギーは、愛車ヴェルティゴを駆って、後輪だけで走り抜けようというのだ。仕切りはエナジー・ドリンクのレッドブル。マン島TTは島の法律によって公道を閉鎖して開催されているが、レッドブルはドギーがウイリーで走り抜ける区間、時間だけ公道を占有することでこのイベントを実現している。レッドブル、すごい。
そしてまた、このウイリーチャレンジはRed Bull TVで生中継されるというわくわくのおまけもあった。ランプキンとしては、成功も失敗も白日の下に晒されるわけで、失敗できないプレッシャーは相当なものだったろう。
ウイリーで走り続けること自体は、ドギーにとって大きな困難ではないが、しかしマン島には悪天候がついて回る。標高の高い地点での強風など、障害は多々あった。事実、悪天候のため、日程は丸一日延期されている。そして本番中も、たびたび小さなふらつきを見せて、伴走の関係者や中継カメラをドッキリさせることがあった。トライアルライダーとしての現役時代のドギーの集中力は万人の知るところだが、1時間以上に及ぶウイリー走行の間、ずっと集中力を維持しているのは、ドギーにとっても並大抵ではなかったにちがいない。
60km無給油で走らなければいけないので、燃料タンクの増量などの改造も施しているようだ(工藤やすゆきさんがウイリー走行ギネス記録に挑戦した時には、走行中に給油ができるシステムを開発して使っていた)。フットレストも、後輪のアクセル付近に移動しているようだ。
イギリス人であり、マン島住民であるドギー・ランプキンによるマン島TTコース・ウイリー1周は、イギリスのモーターサイクル史に残る偉業となった。その偉業は、レッドブルテレビで見ることができる。
中継映像では、燃料の残り容量なども表示されてどきどき感をあおっている。サポートカーに乗るマネージャーのジェイク・ミラーがドギーにかける声なども収録されていて、臨場感たっぷり。もともとライブ映像だったけど、まだ視聴できるので、ぜひ見てみてください。
なおレッドブルでは、マン島1周ウイリー挑戦のオンラインゲームも用意している。