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トニー・ボウ、22回目のタイトル決定
2017年シーズンも終盤戦、9月10日、チェコ共和国での戦いは、アダム・ラガが快勝した。しかしシーズンの流れは、もはやラガには向いていない。苦しみながら2位表彰台を獲得したトニー・ボウは、ラガにポイント差で25点のアドバンテージを得て、最終戦イタリア大会を残してシリーズチャンピオンを獲得した。
3位にはハイメ・ブストが入って、ランキング3位争いを一気にリードしてきた。計算上はジェロニ・ファハルド、藤波貴久にランキング3位の可能性が残っているが、1戦を残して10ポイントのアドバンテージは大きい。
チェコは、滑る路面とむずかしい地形で、概してスペインライダーが好む高さのある単純なむずかしさとは異なる困難があった。どちらかというと、藤波あたりが得意なパターン。ベテランのラガも苦手ではないし、ボウももちろんきちんと攻略してくる。しかし若井ブストになると、まだこういったセクションは苦手意識が見えることが多い。
ところが明けてみれば、雨にも見舞われるむずかしい戦いで、1ラップ目にリードをとったのはブストだった。今シーズン中盤までは、ランキング6位争いとデビュー2年間と変わらず、伸び悩みに苦しんでいたルーキーだったが、中盤以降は急速にトップライダーのポジションをキープするようになった。1ラップ目、最終セクションで5点になってラガに追いつかれて同点となったが、ボウやラガと伍して、確実にトップを狙えるライダーに成長してきた。今年のブストの成長は著しい。
藤波は、今回もまた予選があまりよくなかった。トップのボウに約4秒遅れの10位。トップライダーの中では最も早いスタートとなったが、それでも1ラップ目には3位につけた。
1ラップ目、タイムオーバーを父君での集計でトップに立ったのはラガで19点、2位がブストの21点、そして藤波が28点だった。4位にミケール・ゲラベルト29点、そして5位が30点のボウだった。
湿った地形が難物だったか、それともタイトルを獲得する決定的試合の緊張感からか、今回のボウは減点が多い。4位以上になればチャンピオンが決まるが、もしこのまま5位でゴールするようだと(ラガの結果次第ではあるが)タイトル決定を最終戦イタリア大会まで持ち越しとするおそれもあった。
しかしそのまま沈んだままで終われば、22回目のタイトルを狙う絶対王者ではない。今回、手堅くまとめに走っているラガには追いつけそうにないが、表彰台にはのっておきたい。2ラップ目、必ずしも絶好調とはいかなかったが、ライバルの浮き沈みの中、1点差の攻防を制して2位表彰台までポジションを戻してきた。ボウ53点に対し、ブストとファハルドが54点。仮にこの二人に敗したとしてもボウのタイトル決定は変わらなかったわけだが、ボウにとってはベストとは言えずともベターな22回目のタイトル獲得劇となった。
ブストは2ラップ目に1ラップ目の倍近い減点を喫し、初勝利は夢と消えたが、今シーズン5回目の表彰台。日本大会のあと、アンドラで初表彰台を獲得して以来、表彰台を外したのは1回のみ。表彰台獲得回数で言えば、ボウ、ラガに並ぶ強豪となった。
ブストに同点で表彰台を逃したファハルドは、3戦連続で藤波の上位につけて、ランキングでもようやく藤波を逆転して4位に出た。
ファハルドに5点差で5位に甘んじたのが藤波。前回アメリカ大会が7位と8位と低迷していたから、5位は最善にはほど遠いも、まずまずの結果といえる。ファハルドにはランキングで2点をリードされているが、これは最終戦1戦で逆転可能。ランキング3位を後輩のブストにゆずるのはやむなしとして、ランキング4位はなんとしても確保したい藤波だ。
ちなみに藤波の後ろ、ランキング6位のアルベルト・カベスタニーは藤波とは11点差。今年のカベスタニーは2度の3位、2度の8位と、例年になく浮き沈みが激しい。もう一踏ん張りは、あるか。
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2017/09/R7-RESULTS-GP.pdf
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2017/09/R7-QUAL-RESULTS.pdf
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2017/09/STANDINGS-TRIALGP.pdf
■トライアル2
ポイントリーダーのイアン・ロバーツ(イタリア・ベータ)は2位に入ったが、タイトル獲得にはいたらなかった。ランキング2位のガブリエル・マルセルには16点差。ロバーツのタイトル獲得は、ほぼ確定的ではある。ただ、ロバーツの勝利は日本での1回だけで、ぜひとも最終戦イタリアで勝利してチャンピオンを決めたいところだ。
勝ったのはTRRSに乗るマーク・リバ(スペイン)。ラガと並んで、TRRSが2クラスを制覇した。リバは今シーズン3回目の表彰台にして優勝を果たした。
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2017/09/R7-RESULTS-2.pdf
■女子GP
女子GPは、エマ・ブリスト(イギリス・シェルコ)が圧勝。2位のサンドラ・ゴメス(スペイン・ガスガス)の31点に対し、ブリストはたった5点だ。
ライア・サンツのエンデューロ転向と入れ替わりに女王の座につくようになったブリストだが、強さにはどんどん磨きがかかっている。サンツのような、絶対的王者となってきた。この女王に土がつく日は来るのだろうか?
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2017/09/R7-RESULTS-TGPW.pdf
■女子トライアル2
14人が参加した女子トライアルGPに対し、女子トライアル2は16人が参加。勝者はベータに乗るスペインのネウス・サドーニ。アメリカ大会初日に続いて2勝目を挙げた。同じくスペインのカルラ・リベラ(ガスガス)に7点差で選手権をリードしている。
女子GPに対して、2017年に誕生したいわば2軍のこのクラスだが、このクラスのライダーの急速なレベルアップが、近年の女子トライアルの盛り上がりが生んだ産物だ。
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2017/09/R7-RESULTS-T2W.pdf
最終戦はこの翌週、北イタリアのトレントで開催される。開催カテゴリーは、アメリカ以降共通の、トライアルGP、トライアル2、女子トライアルGP、女子トライアル2の4クラスだ。