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最終戦イタリアGP土曜日のあれこれ
9月16日、朝からしとしと雨が降っていたけれど、昼になって太陽が顔を出した。いいお天気。ちょっと暑くなった。
あしたはトライアルGP、2017年の最終戦。午前中に予選の練習が終わって、午後には予選が行われる。
日本大会を含む、シーズン前半戦はトライアルGP、トライアル2、トライアル125の3クラスが組まれていたが、アメリカ大会以降はトライアル125に代わってレディースクラスが開催されている。トライアルGP、トライアル2、女子トライアルGP、女子トライアル2の4クラスが後半戦のトライアルGPカテゴリーだ。
絶対人数も多いし、なにより女子ライダーがパドックのそこここにいるのは楽しい。最近はホテル暮らしをするトップライダーが増えたけど、女子ライダーはモーターホームでの移動が多いようで、パドックには一家で現れたりするライダーが多い。食事時にはパドックのそこここからいい香りがしてきて、トライアルはファミリーで生活なんだなと思う。
ドギー・ランプキンのマインダーを務めていたこともあるイギリスのトップライダー(代役だけどTDNのイギリス代表で走ったこともある)のベン・ヘミングウェイが予選のスタートオフィシャルをやっていたので、ちょっと話をした。ベンは今はトライアルの第一線から退いて、SSDTやエンデューロで競技を楽しんでいる。次の競技参戦はスコットトライアルだそうだ。エンデューロもトライアルも楽しいけど、エンデューロは楽しいコンペティションで、トライアルはファミリーだと言ってた。
今回の会場はモトクロスコースで、会場がメッツラー(タイヤ)の支援を受けているのか、メッツラーの看板が多い。トライアルとはいまのところ関係がないメッツラーだけど、メッツラー看板の前でミシュランユーザーが飛んだり跳ねたりする光景はおもしろい。
モトクロスだけじゃなく、エンデューロもトライアルも、どうやら自転車やトレッキング(歩きの)のコースもあるらしい。今回はモトクロスコース周辺の、観戦しやすいあたりに15セクションが設けられていた。
アダム・ラガのTRRSには、今回から金色に光フロントフォークが装着されている。11年連続のランキング2位を確定したラガ。ボウの11年連続チャンピオンとは比べるべくもないけど、これもまた、大記録にちがいない。しかもボウがタイトルを決める一戦で一夜を報いて勝利しているのだから、最終戦の戦いも期待しちゃいたい。
今年、一番の成長株はハイメ・ブストだ。GPクラスにデビューして2年、いきなり4位に入った割には、その後が伸び悩んだけれど、先輩格でありコーチ役でもある藤波によると、あまり心配していなくて、そのうち表彰台に上がって皮が剥けたら、一気に表彰台の常連になるよと話していた。そのとおり、今年表彰台に上がったら、もう表彰台にいないほうが珍しくなった。日本GPでは表彰台に乗り損ねていたから、あれは皮の剥けていないブストの最後の姿だった。来年日本に現れるブストは、きっとちがう。
藤波はちょっと残念な戦いが続いている。ケガもないし、そうそう調子が悪いわけではないので、運がないというか、ブストの例でいえば皮をかぶった状態なのかもしれない。シーズン前半、ランキング3位を維持していたが、アメリカで失速してブストにランキング3位を奪われて、チェコ大会ではランキング4位もファハルドに奪われた。ブストにはランキングで12点差をつけられたから、事実上逆転は無理(ブストはファハルドにも10点差をつけているから、おそらくランキング3位はまずまちがいなくブストのものになるだろう)。ランキング4位はまだ決まっていない。ファハルドに逆転されたとはいえ、藤波はファハルドに2点差。再び逆転をするには、藤波がファハルドより上位につけるのはもちろん、2点以上の差をつけなければいけない。ということは4位が必須。もし5位以下なら、ファハルドとの間に、もうひとり誰かに入ってもらう必要がある。上位陣でタイトル争いが接戦でおもしろいのはこのファハルドと藤波の4位争いくらいだと思われる。もちろん、ライバルがリタイヤするようなことでもあれば、逆転劇が起きる戦いは他にもある。
土曜日は朝11時から予選の練習が行なわれた。みんな、トライアルセクションを速く走るスキルはこの1年で格段に上がっているような気がする。今回は平地に岩を配置した規定演技のようなセクション。ラインは何本かあるも、女子トライアル2の下位グループにはむずかしい段差がある感じ。男子トライアル2のラインはみんなクリーンはできるけど、速く走ろうとして失敗してるライダーもいる。ボウは後半でテープを切って5点、ブストはゆっくり感触を確かめるように走っていた。最後の方で練習をした藤波は、前半の飛び降りで1回足をついた。走ってるのを見る限り、カベスタニーは速く走るのがあんまりお得意でないのか、速く走ろうとする気配はあるけど、あんまりスムーズに走れてない気がする。ショーとしてはおもしろいけど、いわゆる従来のトライアルとは別のいろいろのある予選システムだなというのは、ヨーロッパで世界選手権を見てあらためて思った。予選の結果、トップライダーのトライが離れてしまうことがあるのはいかがかというのはお客さんのことを考えると痛感するけど、選手としては自分の有利になるように全力をつくすわけで、こういう予選がある限りは、速く走るスキルもどんどん磨かれてくるにちがいない。
女子トライアル2にはむずかしい、とさっき書いたけど、それでも女子の全体レベルはものすごく向上した。2000年に女子クラスが始まった頃は、それこそ日本によくいるような女子ライダーがいっぱいいて、遠慮がちにセクションを攻め、がちゃんとアンダーガードを打ち付けて助けを求めていたものだけど、いまや、そういうシーンはごくわずかになった。もちろん難度が高まればちがうのだけど、みんなの目つきを見ると、確実にコンペティションになじんできた女子ライダーが増えている。ライア・サンツが女子クラスを席巻していた頃は、先生と幼児たち、みたいなあったけれど(サンツをおびやかすことができたのは、まだ現役だったイリス・クラマーと、萩原真理子だけだった)、ヨーロッパの女子トライアルは、高校野球の存在で技術レベルが上昇した日本の野球みたいに、どんどん上に向かっている。日本は出遅れて16年になるから、これをなんとかするのはむずかしいかもしれないなぁ。
さて、予選。トライ順はくじ引きで決められていて(といっても、箸を引くようなクラシックなくじ引きではなくて、エレクトリカルなやつ)ブストが一番を引いてしまった。ボウが3番目。でもふたりとも(ボウは当然かもしれないが)まったく動じることなく、速さを発揮した。ボウは速いというよりテクニックが光っていて、技の速さという印象。すごい。カベスタニー(1点)とかカサレス(5点)はこの予選がやっぱりへたくそっぽい。ブストは速いという感じ。他にはダビルがうまかった。藤波は足が出そうになっていたけど、まぁぼちぼち結果で、6番手というぼちぼちの結果を手に入れた。ファハルドの次、グラタローラ、ブストの前だから、スタート順としては(ランキング争い的にも)悪くないのではないだろうか。でも予選については、スタート前にお客さんに盛り上げをアピール。イタリアは日本の次に藤波のホームということだけど、藤波のこういうキャラクターも、イタリア人にうけのよいところだ。
予選は、女子トライアル2、トライアル2,女子トライアルGP、トライアルGPの順でおこなわれた。サンドラ・ゴメスがものすごく気合いの入った顔をしていると思ったら、やっぱりトップタイムをたたいた。こういうところ、ヨーロッパのライダーは概して強い。
お天気は、午後になってすっかり晴れて、いいお天気だった。あしたはどんなかな? 午後6時を過ぎたら、めっきり涼しくなりました。