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日本3位表彰台、2017トライアル・デ・ナシオン
2017年トライアル・デ・ナシオンは、スペインの西のはずれ、ポルトガルのすぐ北側のバイヨーナで開催された。
日本チームは、昨年同様、藤波貴久、小川友幸、黒山健一の3名が参加。世界選手権、全日本選手権で上位につける3名による、文句なしの日本のベストチームだ。
日本チームはイギリスとの2位争いを展開、惜しくも3点差で3位表彰台の獲得となった。
会場は観光スポットでもあるお城そのもので、周囲の遊歩道を中心に、海側と丘側にセクションが設けられていた。特に、つるつるに滑る海側のセクションは、なかなか難度の高いものが多かった。
TDNではワールドクラスとインターナショナルクラスの2クラスがあるが、日本が参加するワールドクラスはスペイン、日本、イギリス、イタリア、フランス、ノルウェー、ドイツの7カ国による戦いとなった。
予選は各国1名がタイムを競うが、真っ先に登場したイギリスのジェイムス・ダビルがなんとターンで転倒、一番スタートなってしまった。藤波貴久がアタックした日本はスペイン、イタリアに次ぐ3番手で、ドイツに次いでスタートすることとなった。
序盤、5セクションまではトップチームはクリーン。もっとも、3人のうち誰かがミスをしても、二人がクリーンすればチームの減点はクリーンになるので、そこはチーム内でどれだけフォローができるかが鍵になる。TDNではライダー個々の減点は発表されない。これは個人の選手権ではなく、あくまでもチームとしての戦いだからだ。
日本が最初の減点したのは第6セクション。波に洗われるようなポイントにあるセクション。ここで小川友幸と藤波が5点になってしまい、唯一ここを抜けた黒山健一の2点減点と合わせ、チームは7点の減点となった。イタリア、フランスは3人とも5点の10点だが、イギリスはダビルがクリーン、ジャック・プライスが3点、イワン・ロバーツが5点。チームとしては3点で抜けている。いきなり4点の差がついてしまった。
続く第7セクションでも日本は8点を失った。さらに第8でも1点。イタリアは第6こそ10点だったが、第7を1点、第8をクリーンしてきていて、日本はこの時点ではスペイン、イギリス、さらにイタリアに次ぐ4位。第6からは難セクションになるというのは木曜日に下見をした時点からわかっていたことだったが、それにしても厳しい戦いとなってきた。
藤波は、世界選手権後半のアメリカ大会から調子を崩している。より走破力を高めようと変更したセッティングのコントロールに苦労があるためで、じっくり乗り込む時間的余裕のない今、細かいセッティング変更で乗り切ろうとするのがややもすると裏目に出てしまう。
小川はいつものとおり、藤波のスペアマシンでの戦いとなる。日本で乗っているマシンと同型だが、セッティングはまったく異なる。ハンドルを交換しただけで、あとはほとんど藤波仕様のまま、人間が合わせるというハンディを持っての戦いだ。
その点、北海道大会を走ったマシンを整備した上で日本から持ち込んだ黒山健一には、安心要素が強い。第8セクションなど、小さな岩を越えた途端にエンジンが止まってしまうなどの不運もあったが、ときに小川や藤波が失敗したセクションを豪快なエキゾーストノートとともに走破して観客をわかせたりもしていた。
TDNでは、昨年からマインダーが1チームふたりに制限されている。それも男女共通でふたり。チームはぐっとコンパクトになった。3人で二人だから、3人がそれぞれ自分のマインダーを連れて来るわけにはいかない。今回は藤波のマインダーのカルロス・バルネダと黒山二郎の二人がチーム・マインダーとなった。他に選手会長の小谷徹がチーム・マネージャーとしてセクションを巡る。状況の把握と、下見中にマシンを支えているのがお仕事。整備したりという仕事は一切できないのだが、とにかく日本は人手が足りないので、3台のマシンを一人で支えている。
日本チームは鬼門となった海岸の難セクション3つの他、第12、第13、第15で減点をして、1ラップ目のトータルは20点。フランスは36点、イタリアは37点と、この2チームにはアドバンテージができているものの、イギリスは15点で、5点差をつけられている。
今年の世界選手権同様、20分間のインターバルを置いて、2ラップ目に突入。しかしこの頃から、晴れていた空がにわかにあやしくなって、そして天気予報通り、雨が降ってきた。ざぁざぁ降りではないものの、髪や服を濡らすには充分、もちろん、路面も濡れている。
雨はときどきさぁーっと降り、また止んでまた降るというきまぐれな感じ。それまで乾いていた岩も、濡れてやっかいな滑り方をするところもあり、戦況はあいからず厳しい。こうなると、予選で失敗して一番スタートとなったイギリスが有利となっているふしも出てきた。
2ラップ目、鬼門の第6セクション。小川が美しいクリーンで最初のポイントを抜けるも、ここで停止をとられてしまった。今回、ライダーが採点に異をとなえるシーンはほとんどなかったが、厳しすぎる採点や、この小川のように、本人が確信を持って止まっていないという場面での停止5点も多かった。オブザーバーはオブザーバーで信念を持ってやっている印象はあったが(なんと、他ライダーがトライ中に下見をしている母国のエースライダー、トニー・ボウにセクションから出ろとたしなめるオブザーバーもいた。ルールは確かにその通りだが、ライダーがセクションアウトすれば、すぐに次のライダーがトライを始めるから、ライダーが通りすぎたところから下見をしていかないと、下見をするタイミングはやってこないことにもなる)、トライアルがオブザーバーとの戦いになっている面は否めない。この小川の5点を見た藤波は、停止こそとられなかったが登りきれず。黒山が1点で通過していたので、このセクションは6点。しかしイギリスは2ラップ目も3点で抜けていて、さらに点差を広げられることになった。
今回、 イギリスのダビルはなかなか調子がよさそうに見えた。イギリスという国、いつもの個人戦より、団体戦となったほうが強くなる気がする。同胞の応援、チームの盛り上げ、仕事人たちの確実な仕事などなど、ライダーの実力を高めるチーム力が、イギリスにはある。残念ながら、日本にはそれがない。
それでも、第8でイギリスがフルマークである10点、さらに第13では1ラップ目同様5点を献上するなど、ちょっとずつその差が縮まってきた。
しかしこの日の勝負は、とにかく鬼門の海側の4セクション、第6から第9までをいかに小減点で抜けるかが勝負になるのだが、ここで日本は多くの点数を失っている。この4セクションのみを集計すると、イギリスが32点、日本が41点と、ほぼ10点差をここでつけられている。
結果、イギリス42点に対し、日本は45点。わずか3点差で、2位表彰台をイギリスに譲って、3位表彰台に乗ることになった。
昨年はわずか1点差で勝ちえた2位表彰台。おそらくイギリスもそうとうにくやしかったはずなのだが、その借りをきっちり返されてしまったかっこうだ。
優勝したスペインはといえば、今回はボウとブストがいまひとつ本調子ではなかったということだが、それでも減点はたったの6点。圧勝などというレベルではない圧勝ぶりだった。今回のスペインの代表選手は世界選手権のランキング順で、ボウ、アダム・ラガ、ブストの3人。ブストは初めてのTDN参加で、そういえばこれがブストの世界選手権初勝利、ということになるのかもしれない。
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2017/09/2017TDN-RESULTS.pdf