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2018 Xトライアル、早くも開幕
Xトライアル、2018年開幕戦が、早くも2017年のうちにフランスで開幕した。
勝利はやっぱりトニー・ボウ。しかし今年はメンバーのマシンが大きく変わっていて、しかも表彰台の順番も昨シーズンとはちょっとちがった。2018年、なにかが変わってきそうな予感である。
Xトライアルは、アウトドアの世界選手権、トライアルGPとはまったく趣の異なる世界選手権だ。週末の夜、屋根の下で開催されるからちがうのは当然だが、主催者団体もルールもちがう。ライダーとオートバイだけが共通していて、でもよく見ると、Xトライアルに出場するライダーは、胸のゼッケンにトライアルGPではなく、Xトライアルとプリントされている。Xトライアルの主催者は、アウトドアのスポーツ7に対して2プレイとなっている。親分はフランス人で、長くインドアトライアルの主催をやっていた人だ。
トライアルGPでも、昨今は出場できるライダーが決まっている。Xトライアルは、興業的な意味合いもあって、参加台数を絞り、合わせてテレビ中継などを考慮したコンパクトで密度の濃いイベント運営となっている。
通常は、全戦参加が決まっているノミネートライダーが5名ほどと、各イベントだけに出場するワイルドカード・ゲストライダーが数名という顔ぶれになっていた。今年はノミネートライダーがきちんと発表される前にシーズンが始まってしまい、トライアルGPランキング5位の藤波貴久が不在のまま開幕という、ちょっと違和感のあるスタートとなった。参加ライダーは今回は9名だ。
ゼッケン | Name | 名前 | 国籍 | マシン | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
1 | Toni Bou | トニー・ボウ | スペイン | モンテッサ | 11回のXトライアルチャンピオン |
67 | Adam Raga | アダム・ラガ | スペイン | TRRS | 4回のXトライアルチャンピオン |
69 | Jaime Busto | ハイメ・ブスト | スペイン | ガスガス | ガスガスに移籍 |
4 | Jeroni Fajardo | ジェロニ・ファハルド | スペイン | ガスガス | ヴェルティゴから移籍。ゼッケンも変更 |
22 | James Dabill | ジェイムス・ダビル | イギリス | ベータ | ベータに移籍 |
16 | Benoit Bincaz | ブノア・ビンカス | フランス | スコルパ | |
33 | Jorge Casales | ホルヘ・カサレス | スペイン | ヴェルティゴ | ヴェルティゴに移籍 |
8 | Matteo Grattarola | マテオ・グラタローラ | イタリア | モンテッサ | モンテッサに乗り換え |
16 | Arnau Farre | アルナウ・ファーレ | スペイン | ヴェルティゴ | ヴェルティゴに移籍 |
9名の選出について、まず2017年世界ランキングのトップ3ははずせない。アウトドアではボウ、ラガ、ブスト、Xトライアルではボウ、ラガ、ファハルドになる。これで4名。いずれもスペイン人となる。強いライダーを呼びたいいっぽうで、マシンや国籍があまり偏らないような配慮も必要で、ライダーの人選はそのあたりがむずかしい。
イギリス人のダビルは唯一のベータライダーでもあり、アウトドアではカベスタニーを抜いてランキング6番となった。ビンカスは実力的にはまだまだ他のライダーにはかなわないが、Xトライアルの開催の多いフランスのライダーであり、フランスのスコルパに乗っている。モンテッサに乗ることになったグラタローラはイタリア代表だ。ヴェルティゴに乗るスペインライダーが二人いて、カベスタニーと藤波の名前がないあたりは違和感ありだが、藤波は第2戦から全戦の出場が決まっているという。
9名のライダーは、最初に3人ずつが組になり、6つのセクションを一気に走る。6つのタイムの走破時間が記録されていて、もしも減点数が同一になったら、このタイムの早いほうが上位になるという試合形式だ。この最初の戦いは、今までクォリファイ(予選と訳せばいいのだろうか?)などと呼ばれていたが、2プレイ仕切りのXトライアルではラウンド1と呼ばれる。
採点も、インドアはアウトドアと異なる。今年はライディングの美しさを競う、いわば芸術点のような概念が加わるという話だったが、ライダーの猛反対を受けて元に戻ったということだ。元に戻ったというのは、バックはOK。タイムオーバーは30秒ごとに1点、足つきは4回目で5点。ステアケースなどにアンダーガードを引っかけるカメと呼ばれるテクニックは1点となる。7位から9位については、このラウンド1での結果でリザルトが決まる。
3人ずつ3組で減点の少ないものから6人が、次のステップに進む。今回、これを6位で通過したのがラガだった。セクションが簡単だから、ちょっとのミスが致命的となってしまうという問題もあったが、ただラウンド1の失敗は、トライ順が少々不利になるだけで、ラウンド2には引きずらない。すべての減点が集計されていたら、この時点で今回のラガは表彰台進出の望みを失っていただろう。
ラウンド2は、同じく3人1組で、今度は6人だから2組が走る。今回はラガも大きな失敗はなかったが、しかしラガより1点好スコアをマークしたのが、ガスガスでのデビュー戦となったブストだった。ラウンド2では、ここで減点が少ない二人が最後の決勝に進出する。今回ファイナルに進んだのはボウと、そしてブストだった。3位から6位までは、このラウンド2の成績で順位が決まっている。
そしてファイナル。第1で1点、第2で5点となったブスに対し、ボウは第3までをクリーン。ほぼこれで勝負あった。第4では、ボウが1点ついたのに対しブストはクリーンをしたが、結局勝負はこのまま、ボウ1点、ブスト6点で、ボウが新しいシーズンの最初の勝利を得た。
ところで、2018年シーズンとはいえ、この大会は2017年12月に開催されている。ライダーの契約は2017年12月31日まで残っていて、契約上、そこまでは2017年のマシンとライダーの組み合わせが適用される。過去にもXトライアルは同様のスケジュールを組んだことがあり、その場合も開幕戦だけ前の年の契約のマシンで走り、1月からは新しい契約のマシンで走るライダーがいたものだった。
今回、2017年と同じチームとマシンで走っているのはボウとラガ、そしてビンカスの3人だけ。あとの6人はみんな新しいチームとマシンで走っている。今までの例だと、ブストはこの1戦をモンテッサで走り、1月の第2戦をガスガスで走るということになっていたのだが、すでに移籍の発表もあり、契約を持ち出して古いシーズンの組み合わせで出場を強いるのは、ライダーにもチームやメーカーにもメリットがないから、契約は契約として、現実問題としてXトライアルは開幕戦から新しい契約の元で走る、ということになったものという。
すべてのメーカーがこういう慣習に同意しているかどうかはわからないが、今回出場した移籍ライダー全員が新しい契約のマシンで走っているところから見ると、契約書を盾に意地を張るメーカー(やライダー)はいなかったようだ。
https://www.shizenyama.com/wp-content/uploads/2017/12/1801XFrance.pdf