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藤波が優勝したルマンでトニー・ボウ負傷
2月18日、フランスのル・マンでインドアトライアルが開催され、トニー・ボウ、藤波貴久らが出場した。この大会、序盤でボウがクラッシュ、背中を強打して戦列を離脱。藤波はフランスのアレックス・フェレール、ブノア・ビンカスを下して見事勝利を飾った。
ボウは背骨の横突起と呼ばれる部位を骨折していて、3週間の安静を求められているという。
17日にモンベリアル(フランス東部)、そして日曜日の18日にル・マンでと、タイトに開催されたインドアトライアルは、Xトライアルと称されているが、世界選手権ではないノンタイトル。主催しているのは世界選手権のXトライアルと同じで、彼らとしてはインドアトライアルを称してXトライアルと呼んでいるのかもしれないが、ちょっとわかりにくい。
わかりにくいのはルール。もともと今年のXトライアルは、芸術点を加味した新しいルールでおこないたいと主催者は提言していた。テストをした上でライダー側からの猛反発があって、世界選手権のXトライアルは従来通りのルール(ただしバックはOK、4回以上の足つきは5点、アンダーガードの接地は厳密に1点など、アウトドアのルールとはずいぶんちがう)で開催されることになった。その代わり、というか、世界選手権のタイトルがかかっていない興業イベントでは、主催者のやりたいようなルールでおこなわれた、ということだ。
クラッシュをしたボウは、そのまま病院へ運ばれ、競技を続行することはできなかった。今回の大会には、ボウ、藤波、フェレール、ビンカス、マテオ・グラタローラ、ミケール・ジェラベルトが参加、5セクションによって争われたが、ボウの離脱で、優勝争いは藤波とフェレールのものとなり、藤波が12点差で勝利を決めている。
とはいえ、フランス式新ルールは走っている当のライダーにも難解なもので、結果表を見てもどうやって勝敗が決まるのかさっぱりわからない。結果表からわかるのは、トライしていないボウの点数が0となっていて、点数の高いものから勝利しているということくらいだ。
ボウの負傷について、レプソルHondaチームはプレスリリースを出し、レントゲン写真も公開された。骨折している横突起は背骨の左右にあるでっぱった骨で、背骨の骨折とはいえ、神経などが通っている部分ではない、いわばバンパーのような部位なので、安静にして治癒を待つということになるようだ。チーム・ドクターによると、その期限は3週間だという。
ボウは今シーズン、腕がすぐつるという症状に悩まされていた。セクションひとつくらいならまだいいのだが、いくつかのセクションを連続して走るとつってしまうという。Xトライアルではクォリファイ、セミファイナルと6セクションを連続して走る必要があるから、条件的には最もきつい。
これに加えて今回の負傷ということになる。しかし逆に言えば、ボウにとっては腕の治療と安静もまた、今回の3週間の間に可能となったという見方もある。3週間の間には、Xトライアル第6戦のセビリア大会がある。ボウがタイトルを決定する1戦となるのではないかと見られていたが、はたしてこれに出場できるかどうか。セビリア大会は負傷から2週間と5日、3週間にはぎりぎり足りない。
タイトルの行方を計算してみると、ざっとこんな感じ。
・アダム・ラガが術後の安静でセビリア欠場、ボウが4位になればボウのタイトル決定
・セビリアでボウが欠場ラガ勝利の場合、残り2戦中ボウが1戦勝利すればボウのタイトル決定
・ボウがセビリア欠場、ラガがセビリアからの後半3連勝ならラガが逆転タイトル獲得
・ボウとラガの欠場具合によっては、ランキング3位のブノア・ビンカスのチャンピオンもあり。
ラガがバルセロナの後手術入院しているから、これがボウにとっては不幸中の幸い。戦況はそれでもボウに有利だ。それでも、23個目の世界タイトルを目前にして安静を強いられるボウにしたら、ゆっくり休んでいられる心境にはなれないだろう。しかともあれ、ボウの早い復帰をお祈りしたい。
あわせて、手術休養中のラガと、靭帯を損傷したアルナウ・ファルレの回復もお祈りします。