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ストップ? orノーストップ
2010年から、世界選手権のルールが変更されるかもしれないという動きが出ている。
ルール変更は「ノーストップ」。マシンの停止を5点と採点するルールの採用だ。FIMトライアル委員長のジャン・マーク・クルミエ氏によると「ルール変更はまだ決定ではないが、その方向で動いている」という。
ライダーは、ルール変更に備えて練習方法を変更する一方で、このルール変更に疑問を呈しており、ストップが1点となる可能性も示唆している。
いずれにしても、決定は近々おこなわれるFIMトライアル委員会で決定されることになる。
(写真は09年開幕戦アイルランド大会を観戦するサミー・ミラーさん。往年の名ライダーは今のトライアルになにを思うか)
トライアルのルールは、何年かに一度、変更を議論されるのが通例になっている。現在のルールは、1999年から採用されているもので、世界選手権の現場では、表面的には大きな混乱もなく機能してきた。
しかしそれ以前は、1997年にバックを採点から不問とする(足をつきながらバックしても、足をついた数だけがカウントされる)ルールを採用したり、その翌年に一転、一瞬の停止を1点とカウントするなど、やや迷走状態を続けた時期もあった。
2005年には、採点マシンなる電子機器の開発もとりざたされた。これはマシンのフロントアクスルに装着し、マシンのストップを検知して5点を宣告するという秘密兵器。しかし実際にテストをした結果、マシンの耐久性、信頼性を含め、以後、このマシンが話題に上ることもなかった。
伝統的に、セクション内でマシンをストップさせるべきではないという意見は、トライアルに長い伝統を持つイギリスの大御所から発案されることが多い。トライアル委員会は、現在はフランス人がトップにいて、ノルウェーやルクセンブルク、イギリスの委員が脇をかためている。今回のノーストップ論は、トライアルとはどうなるべきかという、トライアル委員会内での方向性の現れかもしれない。
こういったルールの変化と同時に、セクションでの持ち時間制限というのも導入された。1997年にバック可となった時代には、持ち時間の制限がなかったから、ライダーは疲れ果てるまで延々とトライすることも可能だった。1分半(全日本選手権は1分を採用)の持ち時間が採用されている現在は、スピーディなトライが実現している。
セクションの持ち時間生の導入をもって、再びバックをしてもOKとすべきという意見もある。セクショントライに制限時間がある中、バックをしたりホッピングを繰り返すことは、持ち時間を消費することにつながり、必ずしも減点を減らす好材料とはならないからだ。ホッピングもバックもスタンディングスティルも、トライアルのテクニックのひとつ。持てる技術をルールによって制限するのはいかがなものかという意見もある。イギリス人が守るべきトライアルの伝統はあるにせよ、時代もマシンもテクニックも進化している。トライアルも進化すべきという意見は根強い。
一方、水泳などでもある一部のテクニックが制限されることはよくある。F1など、強力なエンジンを持てば優位に立てるモータースポーツでは、排気量の制限や最低重量の設定でイコールコンディション(一部のライダーが突出して好順位を独占するのを防止したい)を維持しようとしているが、トライアルではそれらの制限がイコールコンディションにはつながらず、逆に技術レベルの格差を大きくすることも考えられる。
トライアルとルールの問題は、なかなか決着を見ないむずかしいテーマのようだ。いずれにしても、結論は今しばらく待たなければいけない。