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アウトドア開幕、勝利はやっぱりボウだった
5月20日、トライアルGPは、いよいよ2018年アウトドアシーズンが開幕した。今回はトライアルGP、トライアル2、トライアル125の3クラス。会場は昨年同様、ヴェルティゴオーナーのジャネさん所有の一帯、カンプラドでの開催だった。
トニー・ボウが勝利したと聞くと、あぁやっぱり、今年も強いなという印象を持つと思うが、今のボウはちょっと状況がちがう。去年、インドアトライアルで負傷した背中の傷が、まだ完全には癒えていなくて、ちょっとおっかなびっくり乗っている感じなのだという。なにしろボウといえば、人一倍フィジカルの強いライダーで、マシンに行く気がなくても、ライダーのボディアクションで難所をクリアしてしまうという協力なライダーだが、それだけに、フィジカルのトラブルは手痛いにちがいない。
それでも、ボウの走りはまったく危なげなく、手堅かった。1ラップ目のボウの減点は13点。2位は25点だったから、ほぼダブルスコアのぶっちぎりだった。
Xトライアルでも圧勝で12個目のタイトルを獲得したボウだが、その終盤で負傷、アウトドアの開幕までには問題がないと目されてはいたのだが、そんな不安をかかえつつも、ボウの強さは変わらなかった。そろそろボウもベテラン。若手の追撃を受けながら、しかし誰よりも努力している結果が、この開幕戦のリザルトにつながっている。
さて、ボウにやや離されての2位は、ハイメ・ブストだった。ガスガスに移って、Xトライアルではしばらく苦戦を強いられたブストだが、アウトドアでは開幕戦からまずまずの結果を叩き出した。とはいえ、ブストはまだ未勝利。表彰台獲得は一定の成果だが、望まれているのは表彰台の真ん中だ。
それでもブストのスコアを見ると、ボウにはやや離されたものの、3位以下とも大きな開きを作った。今年のブストは、要注意だ。
ブストに離されての3位というのは、ブストのチームメイトのジェロニ・ファハルドだった。ファハルドも今年からガスガスに移って心機一転。
1ラップ目は大接戦の3位争いの中、4位につけていたのだが、2ラップ目の雨の中、じりじりと減点を減らして3位を得た。ファハルドの表彰台は重要だが、チームにとっては二人が揃って表彰台に乗ったことはさらに大きな成果になった。Xトライアルでは、ブストもファハルドもいまひとつ本調子でない印象があったが、アウトドアではがぜん調子がいい。
調子のいいファハルドにおしのけられて、今回は表彰台から脱落したのが、鉄壁のナンバー2、アダム・ラガだった。しかもラガは、表彰台を逃しただけでなく、最後の最後、あとからやってきたホルヘ・カサレスが最終セクションを3点で抜けると、4位の座もカサレスに奪われ、開幕戦を5位で終えることになってしまった。
カサレスは去年までのベータから、今年はヴェルティゴに乗り換えてGPを戦う。去年は前日の下見の際にセクションに立ち入ったとして20点のペナルティをもらったりする不祥事もあったが、今年は開幕から好調だ。スペインは最近若手の台頭が目立っていて、カサレスあたりはその波に押されているかの印象もあったのだが、今年は開花の年になるのかもしれない。
カサレスに4位を奪われたラガは、試合記録をたどってみると、これまで278試合も走っていながら、5位になったのは13回しかない。2017年には1回だけ5位となっているが、開幕戦からこのポジションでは、ちょっと幸先が悪い。
さて、我が日本の藤波貴久はといえば、これがたいへんな戦いを強いられていた。5週間前、藤波はアウトドア大会の肩慣らしにと、スペイン選手権へ出場することにしたのだが、その際、予選(トライアルGPと同様の予選が、スペイン選手権でも行われている。ただしスペイン選手権はストップルール)の練習走行で前転。頭から落ちた藤波は試合は走らずに終わったのだが、顔の左頬や左肩に傷を作った見た目以上に、傷のない右肩、右腕に力が入らないというダメージを負っていた。
当初、それほど深刻に考えていなかったようだが、開幕戦1週間前になっても回復にはほど遠く、開幕戦への出場を断念しようかというほどに厳しい事態となった。
結局、開幕戦直前の1週間になって、ほんの少しずつ力が入るようになって開幕戦に出場したのだが、やはり本調子にはほど遠く、1ラップ目は12位と低迷、2ラップ目、かろうじて8位争いのトップに出て試合を終えている。
8位は藤波らしからぬ低順位だが、僅差で何人もがひしめいていたから、一歩まちがえれば最下位近くまで順位を落とす可能性もあった。そんな中、8位は望める最高位だったかもしれない。
2018年は始まったばかりで、この一戦で1年を占うこともできないが、藤波の不調は今回の特別としても、藤波までの7人は、今年のトライアルGPのトップ争いをするべく連中ばかり。ボウはともかく、ブストはまだまちがって順位を落とす可能性もあるし、これまでのように、トップ5のトップ5で安泰という世界ではなくなってきている。
乱戦模様。そんな2018年は、いつになく興味深いシーズンになりそうだ。
トライアル2は、GPクラスから移ってきたイタリアのマテオ・グラタローラがぶっちぎり勝利。ジャック・ピースが2位となって、3位に同じくGPクラスからの撤退を表明していたロリス・グビアンが入っている。
トライアル125は、昨年ランキング2位のビリー・グリーン(イギリス)が、これまたぶっちぎり勝利を破した。2位はスペインのマーチン・リオボ。去年は一桁入賞のなかった選手だが、若い選手はこんなふうに成長するから、目が離せない。
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