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黒山とTY-E、フランスGPで勝利
2018年7月15日、南フランスのアルプス地方オーロンで開催されたトライアルGPで、黒山健一がみごと勝利を果たした。
2017年から始まったトライアルEクラスへの出場で、今年はこのフランス大会と翌週のベルギー大会、2戦の戦いでタイトルが決定される。2位はガスガスのロリス・グビアン、3位はEMのクリストフ・ブルオンで、どちらもフランス人。EMでは成田匠も出場したが、体調不良で予選のみを走ってリタイヤとなった。
同じ日には北海道で全日本選手権が開催されていて、もともとなら黒山はそちらに参戦してタイトル奪還をねらうはずだったのだが、ヤマハの電動トライアルバイクの活動が急速に発展、ファクトリーチームとして世界タイトルを狙いにいくことになって、全日本は欠場。黒山とヤマハファクトリーチームにとっても大きな決断だったが、電動トライアルバイクで世界タイトルをとりにいくという命題は、TYS250Fiで全日本タイトルをとる以上の重要度があったということだ。
ライバルはロリス・グビアン(ガスガス・ヤマハ)、クリストフ・ブルオン(EM・フランス)、成田匠(EM・日本)、バスティアン・ヒェィッテ(EM・フランス)あたりになると目されていた。グビアンは昨年までGPクラスを走っていたが引退を表明していた。ブルオンは野崎史高と同期でスコルパから世界戦に参戦していたが、その後デモンストレーターとして活躍していた。成田はご存知の通り、最近ではヤマハTY-Eのプロモーション映像のライダーも務めた。ヒェィッテはEMライダーの先駆者として、フランス選手権に参戦を続けていた。いわば、筋金入りの電動ライダーというわけだ。
世界選手権のTR-Eは昨年にも組まれていた。ただし昨年2017年はたった1戦のみでタイトルが決定。初代チャンピオンはガスガスのチーム監督たるマルク・コロメ(1996年モンテッサで世界チャンピオンとなっている)だった。
TR-Eは、レギュレーションで緑色のラインを走ると決められている。緑色はTR125のセクションでもある。いま、TRGPには5つのラインがある。トップクラスのTRGPは赤ゲートを通る。難易度的にその次となるのがTR2でゲートは青。緑はその次の難易度ととなるだろうか。現在のTRGPにはWomenGPの紫、WTR2の黄色があって、5つのラインが設定される。
黒山、グビアン、ブルオン、成田はブランクの多少はあれど、いずれもTRGPを走っていたライダーで、ライダーの格としては緑のラインは簡単すぎる。ゆえに彼らの戦いが極端な神経戦となるのは容易に想像ができた。
最初の予選ではグビアンが速かった。やはり予選を走り慣れたライダーには一日の長があったということだろうか。グビアンのタイムは27秒16、対して黒山はわずかに遅れて27秒37だった。しかし予選本番の2回目、黒山が安全に走って28秒12をマークすると、グビアンが最速をマークすべく気合いを入れ、その結果が5点。予選2位はブルオンで29秒台、成田は4番手で39秒台。しかし成田は頚椎に支障がある状態でのGP参戦で、予選を走ったところで翌日の出走は断念していた。
そして本番。真っ先にスタートするグビアンに対して、最後にスタートする黒山。黒山にはグビアンの点数が把握できるが、グビアンは黒山に先行して走らなければいけない。予選で失敗すると、こんなハンディが生じる。
そしてなんと、グビアンが第1セクションで3点。超神経戦が予想されるだけに、出だしのこの3点は痛かった。逆に黒山にすればなんともラッキー。油断ができないのは当然だが、いきなり3点のマージンをもらって戦うことができる。
ブルオン以外のその他のライダーは、黒山のライバルというのにはちょっと格がちがう感じで、オールクリーンを続けるのは黒山とブルオンの二人だけ。ブルオンが第12セクションで5点を取ると、トップは黒山のオールクリーン、2位にグビアンの3点、3位がブルオンの5点という流れになった。1ラップ目は、結局この点数のまま終了。黒山にすれば、わずか3点、されど3点の点差を守れば優勝できる。対してグビアンとブルオンは、ベストを尽くすのは当然で、その上で黒山のミスを待たなければいけない苦しい戦況となった。
2ラップ目、第4でグビアンが1点。第7で黒山も1点をつくが、まだ3点リード。ここではブルオンが5点となり、ブルオンはほぼトップ争いから脱落とみていい感じになってきた。あとは黒山とグビアンの一騎打ち、そして1点、2点をめぐる戦いだ。
黒山はその後、第11セクションで1点を失う。グビアンは第4以降はオールクリーンを続けている。しかしそのまま黒山が減点2点を守ってゴール。グビアンはがまんのトライを続けたものの、最初の3点を取り戻せず、開幕戦は黒山の勝利、グビアンの2位で終了した。
黒山は、TREクラスチャンピオンに向けて、まず1勝。次は1週間後のベルギー。フランス大会では女子クラスが組まれていたが、ベルギーは125が組まれている。つまりフランスでは緑ゲートはTRE専用ゲートだったのだが、次は125のことも考えなければいけないゲートということになる。もしかすると、今回よりさらに難易度が下がると、今回以上にオールクリーン必須の超神経戦になる可能性はある。
もしベルギーでグビアンが勝利すると、直近大会で上位の選手がランキングで上位となるレギュレーションにのっとり、グビアンが世界チャンピオンとなる。ブルオンが勝利するとまた計算がややこしいが、この場合でも、黒山とグビアンは上位につけたほうがチャンピオンとなる。つまり事実上、勝負は次のベルギー大会にかかっているということになる。
いつもの全日本大会に増して、ヤマハの期待を一身に受けて、そのプレッシャーも最高潮。黒山健一の負けられない戦いのスタートのカウントダウンは始まっている。
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