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ボウ連勝、藤波復活の兆し
2018年7月15日、黒山健一がEクラスに出場した世界選手権第5戦フランス大会。会場はフランス・アルプスと呼ばれる山の中、標高が2000m近い山の中だった。
モーターなら標高が高くて気圧が低かろうが影響はないが、空気を燃料の一部にしているクラシックな(笑)ガソリンエンジンバイクでは、この標高はパワーダウンを伴い、苦しい戦いを強いられることになる。
今回の開催は、TRGP、TR2、TRGPW、TR2W、そしてTREの5クラス。日本GPと並ぶ開催クラスの多さになった。日本GPでは125が組まれていたが、その代わりにTREが組まれているわけだ。
標高の高いむずかしい戦いだったが、戦況はいつもと変わらないものになった。トニー・ボウはやっぱり強く、日本GPでの足踏みはなんだったのか、世界選手権100勝の記録を打ち立て、今回はさらにその記録を更新することになった。予選もトップだし、まったく非の打ちどころがない。
1ラップ目こそ、13点と16点、2位のジェロニ・ファハルドが3点差に迫ってきていたが、2ラップ目はただ一人一桁台で回ってきてしまった。ボウの22点に対してファハルド29点。点差こそ7点差だが、その勝ちっぷりには安定感が戻ってきている。
ボウも好調だが、ファハルドも好調をキープしている。ボウを追いつめるパフォーマンスはみごと。この調子でチャンピオンシップもと期待したいところだが、ボウが安定して勝利し続けているので、ランキングポイントはじりじりと離されていっている。
このファハルドから10点差、ちょっと点差は離されたが、3位にはハイメ・ブストが入った。ファハルドとブスト、今年、ガスガスの二人は好調だ。今回は、1ラップ目も2ラップ目も3位。ランキングも3位だ。ただ打倒トニー・ボウの最右翼の存在として、2017年がランキング3位だったのだから、今年はさらに上位を目指さないとかっこがつかない。ラガもカベスタニーも失速気味だから、この期に一気にボウを追いつめたいところだが、今年はファハルドに勢いを阻まれている。いっしょにガスガス復帰をした若き後輩にあっさり先を越されるでは立場がないとばかりに、今シーズンのファハルドは調子がいい。序盤はあわやランキングトップをボウから奪ってしまうかの勢いだったから、その調子よさもほんものだ。
しかし今回のハイライトは、日本人びいきを脇へ置いておいても藤波貴久の復調ではないだろうか。日本で9位、アンドラで12位となったあとのポルトガルで8位。こうなると、8位がベターといいたくなるような戦況だが、もちろん藤波はそんなところで納得するライダーではない。肩の故障もまだ完治はしていない。昨シーズンから悩んでいたマシンの方向性は、いったいは結論が出て乗り込みに励んだものの、どこに原因があるのか、マシンとの一体感を失ってしまい、成功しても失敗しても納得ができない戦いが続いていた。
藤波は、これまで標高の高いGPで好結果を残すことが少ない。アンドラの12位は不運もあったが、アンドラが高地の大会であることも不振の一因だった。今回も高地の大会だ。しかし藤波のスコアは悪くない。
納得のいかない採点があったりということはあった。それでも藤波の1ラップ目の順位は3位だった。ボウ13点、ファハルド16点、藤波25点。ブストが26点、ラガが27点と藤波に僅差で迫っていたが、これまでの戦い方とはまったくちがった。ライバルとの戦い以前に、しっかりとマシンがコントロールできている。その結果がクリーンだったり、あるいは5点だったりはして、順位の変動はあるものの、それがトライアルの戦いというものだ。これまでの何戦かは、セクションとの戦い以前のところに問題をかかえてしまっていたようだ。
結果的に、藤波はブストとラガに表彰台を奪われ、5位に落ちて試合を終えた。表彰台争いをしていたのだから、この結果は残念だったが、表彰台争いに復帰ができたことが、今回の藤波のなによりの収穫だった。点数的には3位のブストに11点差だから、最後は引き離されてしまったことになる。そのあたりの問題を解決できれば、表彰台争いから再び表彰台にのることも充分に考えられる。
今シーズンのタイトル争い、トップ争いはまず3人。ボウとファハルドとブストは、まず安定してトップをキープしている。4位以下は混戦だが、これは、ラガも藤波同様に今シーズンは調子を落としていて、たびたび表彰台をはずしてしまっているからだ。されど、今シーズン好調のファハルドとブストがボウにタイトル争いを挑むには、ボウの勝利をもう少し阻んでいかなければいけない。新しい流れを感じさせながらも、ボウの強さはまだまだ健在というトライアルGPだ。
●予選1回目
18R5QUAL1s●予選2回目
18R5QUAL2s●TRGP
18R5STGP●TRGPW
18R5STGPW●TRE
18R5STE●TR2
18R5ST2●TR2W
18R5ST2W