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ボウが12回目のアウトドアタイトルを獲得したイギリスGP
9月2日、世界選手権もいよいよ終盤戦となった。第7戦というか第8戦というか、7大会目、8試合目がこのイギリスGPということになる。
今回はTRGP、GPW、TR2、TR2Wの4クラスの開催。ウーマンクラスはこれが最終戦で、年間チャンピオンもここで決まる。そしてもうひとつ、トップクラスのタイトルも、ここで決定する。残り2戦で、ランキングトップのトニー・ボウは2位のジェロニ・ファハルドにランキングポイントで23点差をつけている。イギリスGPが終わった時点で20点差をつけていればボウのタイトルは決まるから、そこそこの順位でイギリスを戦えれば、ボウのアウトドア12回目のタイトルが決まることになる。
会場となったシルスデンは、知る人ぞ知る、ドギー・ランプキンの出身地だ。ドギーだけでない、父親で初代世界チャンピオンのマーチン・ランプキンも、いとこでベータUKのインポーターで、世界選手権で1勝したことがあるジョン・ランプキンも、その父親でSSDTの勝利経験のあるアーサー・ランプキンも、アーサーの弟(マーチンの兄)で長くドギーのマインダーを務めたジェイムス・ランプキンも、みんなこのシルスデンの出身だ。
セクションは、少々簡単めだった。雨でも降ればとんでもなく滑るイギリスの大地だが、このところのシルスデンは雨がさっぱり降らず、岩はからからに乾いて、強烈にグリップがよかったという。
序盤、第4セクションまでをクリーンしたライダーはけっこう多かった。アダム・ラガ、藤波貴久、アルベルト・カベスタニー、ハイメ・ブスト、そしてブノア・ビンカスとミケル・ジェラベルトだった。ボウやファハルドは細かい失点をしたが、まだまだ先行きはわからない。
第5で藤波とブスト、カベスタニーが5点、第7で藤波とボウが5点と、減点するライダーが出てくる中、しっかりと減点を最小限に抑えてトライを続けていたのがラガだった。第5を1点で抜けたラガは、第10で2点、第11で1点と、とてもステディな戦いを続けていた。藤波ほどではないが、今シーズンの序盤、ラガは本調子ではなかった。しかしここへきて、確実にボウを追いつめるポジションをキープするようになった。今回はシーズン初勝利の可能性もあった。ラガ4点、ボウ7点で1ラップ目のトップ争いの攻防が続く。
しかし、意外な伏兵があった。ジェラベルトだ。第5で1点、第7で1点、第11で1点と、ラガ以上に堅実な走りを続けるジェラベルトは、ラガ、ボウを尻目にトップを守って1ラップ目を走り続ける。そのうち崩れるだろうと最初は甘く見ていた先輩たちも、だんだんこの若者の好調がまぐれではないことに危機感を感じ始めていた。
1ラップ目、ラガとボウの勝負は、最後の最後でボウのものとなった。ラガが最終セクションで5点、さらにタイムオーバーがあって、ボウ13点に対し、ラガは15点となった。しかしこの争いはトップ争いにはなれなかった。ジェラベルトが3点を守りきって15セクションを走りきってしまったからだ。しかもジェラベルトにはタイムオーバーがない。さらに藤波が10点で続いていた。ジェラベルトがトップ、藤波2位、ボウは3位で、ジェラベルトに10点差を開けられていた。
ジェラベルトの初優勝なるか、藤波が2位を守ってゴールするのか、はたまたチャンピオンを決める予定のボウは、3位からポジションを上げることはないのか、2ラップ目の戦いに興味が集まる。計算上、ボウのタイトル争いのライバルとなっているファハルドは、ボウに3点ほど点差をつけられて5位争い。ボウのタイトル獲得はまずまちがいない。
第5で藤波が5点。ここは難セクションだったが、ジェラベルト、ボウ、ラガは1点、2点で抜けていたから、5点はちょっと痛いところだった。逆にここを1点で抜けたことで、ジェラベルトの好調は、いよいよホンモノと認めなければいけなくなってきた。初優勝のプレッシャーがジェラベルトを揺さぶれば、ボウやラガが上位に出るのはむずかしくないだろうが、ジェラベルトはなかなか崩れる気配を見せない。
ボウとラガは、1点、2点の最小減点で2ラップ目を進めている。藤波は第12で5点、これで藤波は、表彰台の権利を事実上失うことになった。表彰台はむずかしくなったが、カベスタニーやファハルドが追い上げを狙っているから、この先も油断するわけにはいかない。5点を取って、藤波は気合いを入れ直すことになった。
一方、この第12で3点を失って、走りが一変したライダーがいた。初優勝が目前かと思われたジェラベルトだった。続く第13で1点、第14で5点と、ここまでのトータルをたった5点でまとめていたジェラベルトが、たった3セクションで9点を失った。さらに最終で1点、ジェラベルトの初勝利は夢と消え、なんとか3位表彰台という結末で終わることになった。しかしジェラベルトにとっては、これが初めての表彰台だ。
トップ争いは、ボウとラガのがまん比べになった。2ラップ目、両者は意地の張り合いのように、そろって3点で15セクションを走りきった。つまり勝利は、1ラップ目にリードを奪っていたボウのものとなった。序盤の3位から、自力で勝利をつかんでアウトドア12回目、24回目の世界チャンピオン獲得に花を添えたボウだった。
GPウイメンは、女王エマ・ブリストが2位にきっちりダブルスコアの大差をつけて勝利。シーズン全勝で5回目の世界チャンピオンに輝いた。
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