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Xトライアル第4戦グラナダ
ボウの強さ、加速
2019年Xトライアル第4戦は、2月23日、スペインのグラナダで開催された。優勝はトニー・ボウ。ボウはこの勝利でチャンピオンシップのリードを13点とし、13回目のXトライアルタイトルの可能性をぐっと引き寄せている。
今回のワイルドカードは今シーズン2度目の出場となるガブリエル・マルセリ(スペイン・モンテッサ)とソンドレ・ハガ(ノルウェー・TRRS)、それにノミネートライダーのミケル・ジェラベルト(スペイン・シェルコ)の弟であるアニオル・ジェラベルト(スペイン・スコルパ)がXトライアルデビュー、そしてランキングの上位争いを続けるジェロニ・ファハルド(スペイン・ガスガス]もワイルドカードのひとりだ。
ラウンド1は、ファハルド以外のワイルドカードライダーが、7位から9位までの下位を占めてしまうことになった。オール5点はいなかったが、残念なり。しかたがないといえばしかたがないが、7位のマルセリは14点。6位は13点だったから、惜しいところでのラウンド1敗退となった。
Xトライアルは、出場選手にかたよりがないように配慮されていて、マシンメーカーや国籍などから参加ライダーを選ぶのだが、今回は9人の出場者中、7人がスペイン人となった。インドアトライアルについては、やはりスペインライダーには一日の長がある。マルセリがブノア・ビンカス(フランス・ベータ)に1点差で敗れたのは、第2セクションでの1点だった。しかし第2では、ファハルドがおなじく1点、アダム・ラガ(スペイン・TRRS)は2点を失っているから、マルセリも健闘していたといえる。
ラウンド2に進み、ヒート1、ヒート2の3位(最下位)となって、表彰台争いから脱落したのは、まずミケル・ジェラベルトだった。初登場のアニオルの前でいいところを見せたかった兄だが、今回はちょっと残念。ヒート2はボウとラガを相手にする降りな戦いではあったが、減点19はラウンド2に出場した6人の中で最多減点。6位が決まってしまった。
もうひとり、ラウンド2で表彰台争いから脱落したのがファハルドだった。ファハルドは第1戦3位、第2戦4位と、ここまではハイメ・ブスト(スペイン・ガスガス)とランキング3位争いの大接戦をしていたのだが、第3戦で6位となると、今回も5位、ランキング3位争いでブストのリードを許しただけでなく、ランキング4位の座もビンカスに奪われてしまう結果となってしまった。
今回は、ラウンド1での結果にちょっと波乱があった。ボウとランキングのトップ争いをしているラガが、5位と低迷してしまっていたのだ。Xトライアルのシステムでは、ここで何位になろうと、ラウンド2で1位か2位に入れば勝利のチャンスはある。ただ、ラウンド1の順位でラウンド2のどちらのヒートに組み込まれるかが決まるので、その点は勝負の行方を左右する。
ラウンド2のヒート1(先に対戦する3人の組)はラウンド1の2位、3位、6位が進出する。今回で言えば、ブスト、ファハルド、ビンカスの3人だ。走る順は、ラウンド1の成績の逆順で、ビンカス、ファハルド、ブストになる。最初に走るから、前を走るライダーのトライを参考にすることはできないが、ここからファイナルに進出するのは、減点数でなく順位だ。誰か一人を破れば表彰台争いに残ることになるし(3位か4位が決定する)、二人を破ってトップになれば、表彰台が決定して優勝争いに残ることになる。
最初に走るラウンド1で6位だったビンカスは一番スタートで、さすがに不利はあったのかもしれない。5セクションを走ってクリーン1。5点が一つで11点だった。ところが次を走ったファハルドは、ビンカスが3点だった第3をクリーンしたまではまずまずで、最終セクションを前にビンカスに3点リードをしていたにもかかわらず、最終セクションで5点になってしまった。最終セクションのビンカスはクリーンだったから、ここでの勝負は2点差でビンカスとなった。ビンカスのインドアでのうまさは去年から周知だったが、ここへ来てさらに力をつけてきているように見える。
最後に走ったブストは、5点なしの8点。とはいえ、ファハルドの最終がクリーンなら同点だったわけで、そんなに上出来とも言いがたい。それでもラウンド2の勝利にはちがいなく、これでブストは優勝争いに進出することになった。
もうひとつのラウンド2ヒート2は、ラウンド1の1位、4位、5位が対戦する。ラウンド1の勝者のボウにしてみると、相手が4位と5位だから楽勝パターンかと思いきや、この日はラウンド1でラガが不調で4位になっていたから、このラウンド2のヒート2が、ある意味優勝決定戦のようにもなった。
最初に走るのはラガ。第1で5点になって幸先はよくなかったが、次の第2を1点、すると残る3セクションは全部クリーン。ブストの8点に対して6点でまとめてみせたが、しかしここで問題なのはブストとの点差ではなく、あくまでもボウとの点差になる。
ラガの次はジェラベルト(兄貴のミケルのほう)。しかしこちらは今回は勝負の輪の中に入れてもらえなかった。5点3つの19点。ファハルドの13点にも劣っているので、6位はジェラベルト、ファハルドの5位がここで決定した。
最後を走るボウは、5点を一つ取ればあとがないから、それはそれなりにプレッシャーのあるトライとなった。ボウは、ラガが5点の第1を1点で抜け、その後の4セクションをすべてクリーン。結果として、ラガに大きな点差をつけてラウンド2を勝利した。
そしてファイナル。まず全6セクションのうち4セクションで3位決定戦。これに登場するのはラガとビンカス。ラウンド2ではラガが6点、ビンカスが11点だったが、もはやその減点数は関係なくなり、ここで勝利したものが3位表彰台を獲得する。
第1でビンカスが5点となった時点で、ほぼほぼ勝利はあったようなものだが、しかしビンカスもよくがんばってクリーンを出す。結果、第1での点数差が、そのままふたりの点差となった。ラガ2点、ビンカス6点で、3位表彰台獲得はラガとなった。
そしていよいよ、優勝決定戦。ブストとボウの決戦は、第1でブスト5点、ボウ2点で始まった。この勢いで接戦が始まるかと思いきや、ブストは2点、5点、1点と減点がかさみ、ボウはクリーン連発。結局ボウの減点は第1の2点と第5の5点のみの7点。ブストは6セクションを走って23点と、なかなかの大量減点となってしまった。しかしブストは、これで今シーズン初めての2位入賞だ。
前回まで、ランキング争いではボウとラガが熾烈なトップ争い、これと同様に、ブストとファハルドが3位争いを展開していた。しかし今回の結果、ボウとブストはともにライバルを突き放し、さらに順位争いにも変化が見られる。1位ボウと2位ラガの点差は7点差。ラガと3位ブストの点差は17点で、こちらはちょっと差がついてしまっているが、ブストはリードを12点まで広げた。そしてブストのランキング3位争いのライバルはファハルドではなく、ビンカスとなっている。ファハルドはビンカスに2点差で、ランキング5位に転落している。
とはいえボウは、いまだ昨年末に日本で負った負傷の影響があって、体のコンディションは万全ではない。それでもこの勝利だから、ボウの持てる能力の高さと、勝負に対する集中力の賜物だ。
残りはマルセイユとアンドラの2戦。この調子だと、次戦マルセイユでボウのタイトルが決定する可能性もなくはないが、ラガが最後に粘って、タイトル決定は最終戦までもつれ込みそうだ。とはいえ、ボウの強さがひときわ際立っているのには、変わりない。
1902Granada