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トニー・ボウ、25個めの世界タイトル
トニー・ボウは、Xトライアル第5戦マルセイユ大会で勝利。5戦中4戦で勝利して、2位のアダム・ラガにランキングポイントのアドバンテージを21点に広げて、みごと13回目のXトライアルチャンピオンを獲得した。
3月10日、地中海に面したマルセイユでの快挙だった。ボウは2007年にモンテッサ入りしてから、13年連続でXトライアルチャンピオンになっている。それ以前、ベータ時代にもXトライアル(インドア世界選手権)への出場経験はあり、優勝経験もあるのだが、タイトル獲得はモンテッサ入りを待ってから実現したのだった。
さて今回、直前にライダーの入れ替えがあった。ノルウェーのサンドレ・ハガが水曜日に負傷、急きょフランスのテオ・コライロ(ガスガス)がXトライアル初出場の機会を得た。
初出場のコライロは、制限時間の5分をたっぷり使ってオール5点。初出場のXトライアルを満点の9位で終えた。
イタリアのルカ・ペトレーラ(ベータ)も同じくオール5点だが、こちらはコライロより2分近く早く5セクションを走り終えて、8位。同じ点数の場合、速く走ったほうが成績が良いと言うきまりなのだが、5点の場合もそのきまりは生きる。つまりセクションの最後まで走って5点になるなら、インで5点になったほうが有利ということになる。最下位争いに勝利するためにインで5点になっていてはトライアルではないけれど、今のルールはそういう一面も持っている。
ラウンド1敗退の最後の一人は、2019年はT2への出場を決めたアレクサンドル・フェレール(フランス・シェルコ)。2018年のT2チャンピオンはマテオ・グラタローラ(イタリア)だったが、GP時代の実力をスライドすると、フェレールにはタイトル争いのポテンシャルが充分にあると考えたのではないか。GPクラスでランキング10位前後を獲得するより、T2チャンピオンになったほうが、より名誉(とそれにまつわる待遇)が大きいというのが、ヨーロッパのみんなのふつうの考え方のようだ(去年、もてぎでグラタローラに聞いたら、本人が走りたいのはGP、ということだった)。
フェレールは第2セクションだけ2点で抜け出て減点22点で7位となった。フェレールは今シーズン初出場だ。マルセイユはフランスの大会だから、フェレール、コライロ、そしてフランスナンバーワンのビンカスと、3人のフランス人ライダーが会場をにぎわせるも、ふたりがラウンド1で消えていった。
さてフェレールは減点22点だったが、フェレールよりも2点減点が少ないだけの20点でかろうじて6位に入ってラウンド2へ進出したのがジェロニ・ファハルド(スペイン・ガスガス)だった。フェレールが唯一抜けたのが第2だったが、ファハルドはここで5点。第2と第4を抜け出ての減点20点だった。ファハルドはビンカスとランキング4位を争っていて、前回ビンカスに破れてランキング5位に転落してのこの大会。ラウンド1敗退とならずにまずは安堵というところだ。
ファハルドと一緒に走ったのはミケル・ジェラベルト(スペイン・シェルコ)とブノア・ビンカス(フランス・ベータ)のノミネートライダーたち。ビンカスは5点一つで14点とファハルドを大きく上回った。さらにジェラベルトは5点一つクリーン2で9点。なかなかの好スコアをマークした。
最後に出てきたのがハイメ・ブスト(スペイン・ガスガス)、アダム・ラガ(スペイン・TRRS)、トニー・ボウ(スペイン・モンテッサ)のトップ3。ふつうに考えたら、この3人がジェラベルトのスコアを上回ってトップスコアをマークするところだが、なんと波乱。
最初に走ったブストは5点3つクリーンなしで17点。ファハルドには勝ったが、ビンカスには劣る。次を走ったラガは5点こそ一つだったがクリーンなし、コライロに次いで時間をたっぷり使って11点。ジェラベルトには勝てなかった。そして最後にボウが登場。ところがこのボウが、フェレールがアウトした第2で5点を取るなど、5点3つ、クリーン一つの乱調。16点はかろうじてブストに勝るスコアでラウンド1を4位で終えることになった。ボウはこの大会でチャンピオンが決まる。そのプレッシャーがライディングに影響を与えていたと、あとでコメントしている。
そしてラウンド2。最初の組には、6位のファハルド、3位のビンカス、2位のラガが登場する。最初に走るのはファハルド。誰も走っていないところでのトライだから、不利は否めない。第1はクリーンしたものの5点3つで16点がファハルドのスコアとなった。
次いでラウンド1を3位で終えたビンカス。ビンカスは、しかしファハルドにかなわない。5点4つで21点。ランキング3位争いは、今回はファハルドの勝利となった。
ところがこのラガも乱調だ。第1から連続5点。スコアはファハルドと同点の16点で、両者はタイム差8秒9で、ファハルドがトップ通過、ラガは2位となった。これでファハルドの2位以上が確定した。
ラウンド2の第1トライはブスト。続いてボウ、最後にラウンド1で好スコアをマークしたジェラベルトが走る。ブストはラウンド2ヒート1で最下位だったビンカスよりさらに減点が多い。あわやオール5点の勢いで、かろうじて第5を3点で抜けて23点。優勝決定戦にも3位決定戦にも進出できず、ビンカスより減点が多いブストは6位決定ということになった。ランキング3位のブストとしては、今回の6位はちょっと痛手。しかも前回2位に入っていただけに、残念な結果となった。
次なるトライはボウ。ボウも、いまだけっして絶好調とはいえない。第1こそ2点で抜けたものの、第2から第4までは5点。トータルは18点。このスコアはヒート1でいえば3位相当になって、表彰台から脱落ということになるのだが、Xトライアルのルールではラウンド2の順位争いはそれぞれのヒートで完結する。ボウの結果はよろしくないが、ヒート2でいえばブストに勝るスコアを得た。
最後のトライはラウンド1でトップスコアをマークしたジェラベルト。ブストとボウが不調だから、ここでトップスコアをマークして、決勝でファハルドに勝利すれば、ジェラベルトの初優勝という可能性が出てきた。
ところがジェラベルトはファハルドに勝る乱調で5点4つで20点。ブストには勝ったが、ボウには劣った。ジェラベルトの初優勝の望みは絶え、決勝はボウとファハルドの優勝争い、ラガとジェラベルトによる3位争い、ということになった。
3位決定戦はジェラベルトとラガ。3位決定戦は6セクションのうちの4セクションで争われる。第1はふたりともに5点、第2でラガが1点、ジェラベルトが5点となったところで事実上勝負があった。第3は1点同士、第4はクリーン同士で逆転はならず。ラガの3位表彰台が決まった。
ジェラベルトはラウンド1で好調だったにもかかわらず、結果は4位。それでも、開幕戦を欠場したジェラベルトにとっては、これが今シーズンの最上位となった。
ラガは、ボウのチャンピオン獲得の唯一の防波堤。ここで2位以上に入ればボウのチャンピオン決定を阻める計算だったが、残念ながらそれはならなかった。最後に表彰台を獲得したのは、ラガらしいしぶとさのあらわれだ。
さて、ラウンド1での不調から一点、ラウンド2ではトップスコアをマークしたファハルドと、一貫して聴視の出ないボウによる勝利争いがこの大会最後のハイライトとなった。
最後の決戦は、6セクションすべてを使った最難関対決となる。ここでようやくボウが本領発揮。というより、ファハルドがここへきて乱れに乱れた。なんと、6セクションすべてで5点。この場合、ボウのあとを走るという有利なトライ順が、ファハルドによけいなプレッシャーを与えることにもなった。減点30点。
対してボウはといえば、第1を1点で抜け、第4を3点、さらに第5、第6とクリーンして、尻上がりに調子を上げてきた。ライディング的には最後まで調子が出ることはなかったというボウだが、しかし結果オーライ。ボウが勝利、ランキング争いのライバルのラガが3位で、今回8点差をつけることに成功。点差は21点となり、仮にボウが最終戦アンドラを欠場しても、ランキング順には変動がない。ボウの、13回目のXトライアルタイトル、そして25個めの世界タイトル(個人のみ。この他にデ・ナシオンでのタイトルがある)獲得が決まった。
最終戦アンドラ大会は4月になってから開催だ。ヨーロッパでは、スペイン選手権などのナショナル大会が始まっている。
1903Marseille