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熾烈なトップ争いが期待される電動トライアル
ヤマハと黒山健一の参戦で盛り上がっているトライアルE(電動)世界選手権。今年は6月23日オランダGPと30日ベルギーGPの2戦にわたって開催される。FIMサイトでは、オランダGPに出場するライダーのリストが発表された。
今年の参加ライダーは6人。昨年よりちょっと減ったが、今年は大物が並んだ。単純な評価はしにくいが、3年目にして、メーカーや町工場のテストや趣味の延長から、本格的な世界選手権大会に進化してきている感じがする。
今回の6名の内訳は、ガスガス3台、ヤマハ、EM、メカテクノが1台ずつとなっている。
昨年のチャンピオン、ロリス・グビアン(フランス・ガスガス)とランキング2位の黒山健一(日本・ヤマハ)は今年も参加する。クリストフ・ブルオンや成田匠の名前がないのはちょっとさびしいが、今年はなんと、今シーズントライアルGPから引退したばかりのアルベルト・カベスタニーが、ガスガスTXEに乗って参戦することが発表になった。
2017年トライアルEチャンピオンのマルク・コロメ(スペイン・ガスガス)は1996年(トライアルGP)世界チャンピオン。健一は1997、1998年の(トライアルGP)ランキング3位。2018年にチャンピオンになったグビアンは2008年のジュニア(トライアル2)チャンピオンにして2017年トライアルGPランキング20位。今のところ、トライアルEのトップを争うのは、かつて世界のトップを走ったトップ・ベテラン勢という図式ができあがりつつある。コロメもグビアンも黒山も、いずれもそれにはずれていない。
しかしカベスタニーは、そんな中でも一枚上手だ。引退したといえ、2018年のGPランキングは5位。藤波貴久よりも上位につけている。これまでの実績だけを比べれば、ぶっちぎりに格上のライダー、ということになる。
しかし、技術の優劣がそのまま結果につながるかというと、走破行かないのがトライアル競技だ。レギュレーションによれば、トライアルEのセクションはトライアル125と同様となっている。125のセクションは、もてぎの例で見ると女子GPよりはちょっと難度が高いが、トライアル2よりはやさしく設定されていた。どんぶりでたとえてしまうと、IAクラス中ほどから、IASの簡単目のセクション(だいぶどんぶりだが)ではないかと思われる。とすると、グビアン、カベスタニー、黒山の3人は、オールクリーンが大きな目標となるはずで、セクション難度への挑戦よりも、クリーンしなければいけないと言うプレッシャーとの戦いが大きくなることも想像される。
エントリーリストをみると、さらにもうひとり、イタリアのジャンルカ・トルノールなるライダーも参加の予定となっている。トルノールもガスガスに乗る。すでにガスガスは市販されているから、メーカーのファクトリーチーム以外でも、プライベートライダーとしてこれに参加することは可能だ(トルノールがプライベートなのかどうかは未確認です。すいません)。
トルノールは、2011年にトライアル2(ジュニアクラス)で日本GPで優勝したこともある。2016年にトライアルGPでランキング21位となって以来世界トライアルとはごぶさた。正直なところ、トルノールは技術的にはグビアンや黒山とは勝負にならないが、セクションがやさしくなれば、彼にもチャンスは回ってくるのではないかという想像もできる。つまり、どんな結果になるのかは、昨年同様、今年もまたさっぱりわからないのである。
初の電動マシンとなったEM(エレクトリック・モーション、フランス)は電気的に動力をカットする装置はついていたが、機械的に動力をつないだり切ったりしてパワーをためる装置としてのクラッチを装備したのはガスガスが初めてだった。ガスガスは通常のエンジンのクランクから先はそのまま使う、みたいな考え方で電動バイクを構成している。なのでトランスミッションもそのまま装備している。
ヤマハのTY-Eはクラッチのみを装備している。モーターはフレキシビリティが高いので、ギヤを変えなくても電気的なコントロールをおこなえば、広いレンジで対応が可能という事情もあるのだろうが、電動トライアルに求められる仕様も、まだまだ固まっていない。
その将来性を占うにも、オランダGP、ベルギーGPの2連戦は注目ということになる。