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SSDT 1日目
伝統のトライアルイベント、SSDTが始まった。
SSDTは、トライアルの発祥の地とされているスコットランドで、6日間にわたって繰り広げられる阿鼻叫喚のトライアルだ。
1日の走行距離200kmほど(もちろんその日によっていろいろ)、セクション数、1日30。トップライダーからアマチュアライダー(NBレベルだと、かなり苦戦する)まで参加するクラシックイベントだ。
初めての開催は1900年代初頭ということになっていて、詳しい年次はわからない。主催のエジンバラ地方モータークラブが結成されたのが1911年だから、今年はちょうど主催クラブ結成100年目ということになる。戦争の影響などで中止期間があるから、何回開催されたのかもよくわからない。今、宮崎県ではやっている牛の口蹄疫が流行して、イギリスのトライアルイベントが軒並み中止になったこともある。SSDTもまた、世の中の流れとともにある。
そして2010年のSSDTが、5月3日に始まりました。例年にならって、毎日届くリザルトを見ながら、ごいっしょにお楽しみください。
今年は、日本人参加者はいないみたい。1日目の30セクション(いくつかキャンセルがあったような感じでもある)を走って、トップで帰ってきたのはマイケル・ブラウンだった。世界選手権を走るブラウンは、今年はちょっと精彩のない成績を繰り返しているけど、だいたいイギリス人はSSDTを走るとがぜん元気になる。ブラウンの減点は3点。1点が3回だ。
2位につけたのはアルベルト・カベスタニー。カベスタニーがSSDTを走るのは初めて。今までは知っていなかったことが意外な気もするし、カベスタニーとSSDTは似合わないから、走っていることが意外な気もします。カベスタニーも減点3。順位はブラウン1位、カベスタニー2位となっているから、ゴール時間でもとったんだろうか? 以前は毎日の結果には順位は記載されていなかった。伝統を守りつつも、SSDTもだんだん現代風になってきている。
ということで、1日目の1位2位は、ともにシェルコのライダーが占めることになった。
SSDTでは、ファーストクラスとかスペシャルファーストとかって言い方で順位を数える。全体の何パーセント以内はスペシャルファースト、さらに何パーセントはファースト、以降、完走した人はセカンドクラス。ビリでもセカンドクラス。でもいったことがある人にはわかるけど、完走するってことが以下にどえらいことかを実感すると、セカンドクラスには「入った」と胸を張れるようになる。
3位はイアン・オースターミュール(と読むのかな)。イギリス人でベータに乗っている。彼の減点は、5点。4位も5点で同点。ベン・ロビンソン。ガスガスに乗る、イギリス人。
5位がアレックス・ウイグ。ウイグも、世界選手権を走るトップライダーだが、ユースクラスを走っていた頃から、SSDTではトップ争いをしていた。まだ優勝経験はない。SSDT優勝は、豊富な経験が必要だとされている。しかしイギリス人は、若いうちからSSDTに参加していて、トップ争いだけなら、かなり若い連中も参加してきている。それはきっと、世界選手権での戦いにも、生かされているはずなのだ。ウイグの減点は6点だった。6位はジョン・クリンソン。ベータに乗るイギリス人。やっぱり6点。これに7位の、同じくベータに乗るイギリス人、ベン・ヘミングウェイまでが6点だった。
ベータに乗るイギリス人が多いのにお気づきでしょうか。多いんですね、ベータに乗るイギリス人。ベータは別にイギリス製でもないんだけど、これはベータのイギリスインポーター、ジョン・ランプキンが、ライダーへのサポートを丁寧に行っていることが大きい。杉谷も、SSDT参戦についてノウハウを訊ねられると、日本でなにに乗っていようとも、マシンはベータにすることをお勧めしている。
もうひとつは、イギリスでは、ドギー・ランプキンとベータのつながりのイメージが強いんだと思う。1997年に初めてチャンピオンをとったのがベータ。それから3年連続でチャンピオンとなって、今またトライアル・キングはベータに乗っている。
7位のベン・ヘミングウェイは、ドギーのマインダーをやっていたことがある。そのシーズンは、ベンのマシンはモンテッサだったけど、マインダー業を退いたら、マシンはすぐにベータに戻った。実はヘミングウェイは、ドギーとは親戚関係にある。ドギーのお母さんが、ヘミングウェイ家の出身なのだ。
ドギーとジョンはいとこ。ドギーのお父さんのマーチンは初代世界チャンピオン、ジョンのお父さんのアーサーは、マーチンのお兄さん。真ん中の兄弟のアランと3人で、ランプキン三兄弟はオフロードイベントを席巻した。ただし世界選手権をとったのはドギーのお父さんのマーチンだけ、逆にマーチンだけが、SSDTで勝っていない。そしてこの時代のランプキン兄弟といっしょにトライアルをやっていたのが、ヘミングウェイのお父さんだ。
イギリスとトライアルの伝統は、ちょっとやそっと真似をしようとしても、追いつかないのでありました。
ヘミングウェイに続いて8位はギャリー・マクドナルド。スコットランドナンバーワンライダー。マクドナルドと同じく7点で9位に入ったのがジェイムス・ランプキン。ジェイムスはドギーのいとこで、アランの息子。ベン・ヘミングウェイがマインダーをやったことがあったと書いたけど、それは実は1年だけで、ドギーのホンダ時代、残るシーズンはジェイムスがずっとマインダーをやっていた。
世界選手権に出てくるライダーの名前を覚えるのもやっとという人は多いと思うけど、そんな人にとって、SSDTは名も知らぬライダーが目白押し。でもそういう無名ライダーが、世界のトップライダーを相手に好成績を挙げるから、SSDTはおもしろい。で、あたりまえだけど、そういうライダーは、けっして無名のライダーではなくて、イギリスで、またスコットランドでは有名人ばかりなのだ。
ジェイムスに続いて10位となったのが、8点のジェイムス・ダビル。世界選手権で、めきめきと頭角を現している若手ライダー。SSDTでも一度優勝したことがあって、しばらくぶりに参戦して、2勝目を狙っている。でもそんなダビルが、日本人的に無名のライダーにこんなに負けちゃっているというのが、SSDTの奥の深さだ。まぁでもまだトップと5点差だから、ぜんぜん先は読めません。
ざっと、日本人的に名前を知っててもおかしくない人を拾っていくと、13位にジョナサン・リチャードソン。今年のユースクラスで有名になるはずの人。14位がジャック・チャロナー。ユースチャンピオン。
チャロナーは、しかしなんと10点のタイムオーバー減点あり。ということは、足つき減点はたった2点。全ライダーの中で、この足つき減点はトップに位置します。10分のタイムオーバー、なにがあったんでしょうね。
15位ジェイムス・フライや16位ロス・ダンビーも、日本に来たことがある若手ライダーです。21位マーチン・クロスウェイとはスコルパのインポーターもやっていた世界選手権ランカー。22位、ダン・ヘミングウェイは、ベンのお兄さんです。
さて、一人大事なライダーが出てこない。さっきから、名前ばっかり出てくるけど、順位が出てこないのがドギー・ランプキン。なんと27分のタイムオーバー、足つき減点11点で合計38点。65位の滑り出しとなりました。
去年一昨年あたりは、オールクリーン達成かという勢いだったから、この滑り出しはびっくり。でも逆に、これでどこまで追い上げるかという興味が出てきた。27分のタイムオーバーはともかく、足つき減点の11点も、ドギーらしからぬスコア。まぁトラブルがあったからのタイムオーバーだから、結果も出しにくいのかもしれません。
本日の最高減点(最低減点)は1036点。セクションの不通過がいっぱいあるから、こういう人たちは失格になってしまいます。タイムオーバーも60分以上は失格。ただ走ってればいいというわけではないので、なかなか厳しい。
女性ライダーは、今回は6人参加。トップは世界ランキング2位のベッキー・クック。彼女でもタイムオーバーが8点あり、今日のコースが、なかなか厳しいことを伺わせます。トータル減点は51点。総合順位は100位になってます。
女性2位はエマ・ブリスト。エマにもタイムオーバーが11点あって、それでトータルは55点。つまりベッキーとエマの実力差は、SSDTではあってないようなものといえます。
女子3位はケティー・サンター。サンターのお父さんも、ランプキンやヘミングウェイのお父さんといっしょにトライアルをやっていた、第一世代のライダーです。ケティーの減点は62点。世界選手権では、ベッキーやエマとケティークラスには大きな実力差が出てしまうものだが、SSDTでは大きな差がないように見えます。
女子4位はジョアンヌ・コルス。125に乗る初参加の女の子。タイムオーバー22点で合計70点は立派です。
女子5位のクリスティ・マッキノンはオーストラリアからの挑戦。タイムオーバー22点で合計110点。健闘してます。
女子6位のポーリン・シュミットはドイツ人。お父さんだかお兄さんだかといっしょに参戦しているみたい。