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トニー・ボウ、2019世界タイトル獲得のフランスGP
7月21日、フランスはオーロンで開催されたトライアルGP第6戦、トニー・ボウが今シーズン無敵の7勝目をあげ、最終戦を待たずして2019年の世界チャンピオンを決定した。これはボウの13回目のアウトドア世界タイトル。すでに13回目のインドア世界タイトルを決定しているから、これでボウの世界タイトルは26となる。
2019年のボウは鉄壁だった。12月の負傷した背骨は、インドアシーズンでこそ障害となったが、アウトドアシーズン開幕の頃にはほぼ完治。影響をまったく感じさせない走りで開幕戦から連戦連勝。ときに接戦を制し、ときに序盤の苦戦から追い上げ逆転をし、そしてぶっちぎりの圧勝。共通しているのは最後にはまちがいなく表彰台の真ん中に立っているということだ。
最終戦オーロンは、標高の高い会場で、繊細な4ストロークエンジンにはどちらかというと厳しい会場だ。ボウはバルセロナの生まれだが、いまはアンドラに住んでいる(税金対策とかもあるのかもしれない)。アンドラは標高の高い国だから、ボウは住まいを高地に移して高地対策をしているともいえるのだが、それでも厳しい戦いとなるのはまちがいなかった。
試合は、ハイメ・ブストとの一騎打ちとなった。ブストは今季アウトドアシーズンからヴェルティゴに乗り換えているが、どうにも調子が上がらない。マシンとの相性の問題かと思うが、乗り換えにはかなり苦戦しているようだ。そのブストが、いよいよ本領発揮か、そしてヴェルティゴの初勝利なるかという展開だったのだが、やはり1ラップ目中盤からきっちりトップに躍り出て、結局ダブルスコア以上の点差で勝利した。
タイトル争いのライバルはアダム・ラガ。ラガは序盤は6位以下にもまれていたが、いつものように終盤にきっちり表彰台争いに食い込んで、3位表彰台を獲得した。ただし今回のフランス大会、ボウのタイトル獲得を阻止するには、ラガはボウよりランキングポイントで2点以上多く稼がなければいけなかった。3位だろうが2位だろうが、ボウより上位に入れなかったという点で、ボウのタイトル獲得を祝福する側に回ってしまうことになった。
ボウのポイントリードはフランス大会を前に22点あった。20点リードを守ればタイトル決定だから、ボウがフランス大会でタイトルを決定する要件としては、特に勝利は必要ない。ラガが1位となった場合はタイトル決定は見送りだが、2位なら3位に入ればいいし、3位なら4位に入ればよかった。しかしもちろん、それでよしとするボウなら、ここまで連続タイトルを続けられはしなかっただろう。
現時点で、ボウとラガのポイント差は27点差。もしも最終戦でボウが欠場してラガが勝利しても、7点差でボウのリードは変わらず、という計算になる。
ボウのタイトルは決まったが、ランキング2位以下はまだ争われている。ラガとランキング3位のジェロニ・ファハルドのポイント差は18点。逆転はふつうに考えればほぼ不可能だが、計算上は可能性が残っている。ファハルドとランキング4位の藤波貴久の点差は7点。藤波が優勝してファハルドが5位以下だった場合などに、藤波が逆転、ランキング3位に浮上することになる。
今回の藤波は、予選で転倒してひじなどに負傷を負い、早いスタートでセクションを回ることになったのだが、どうも藤波は早いスタートの戦い方をマスターしたかに思える。
序盤の藤波はトップ争い。しかも序盤はファハルドがミスをして、6位以下に低迷していた。これはいい結果が期待できるかと思ったのだが、2ラップ目終盤、藤波に5点のミスが連発した。これで表彰台争いからも脱落し、しかもなんと、終盤に追い上げてきたファハルドにも逆転されて5位。ファハルドとのランキング3位争いが命題の藤波としては、痛恨の5位転落となった。
今回2位入賞のブストは、ここまでの低迷が響いて藤波に11点差のランキング5位。ブスト優勝、藤波が5位以下だと、ブストは藤波を逆転してランキング4位を獲得できることになる。
残りは1戦。トライアルGPはしばらくの夏休みとなり、最終戦はトライアル・デ・ナシオンの1週間前、9月22日、スペインはバレンシアのルシアで開催となる。
トライアル2ではアレックス・フェレールが2勝目を挙げ、ガブリエル・マルセリが2位。ランキングトップのマテオ・グラタローラは3位で、マルセリに1点差まで迫られて最終戦を迎えることになった。
女子GPはエマ・ブリストが減点20で勝利したが、ベルタ・アベランが8点差でブリストに迫って2位。アベランは3戦連続で2位入賞で、世界ランキング2位も具体性が増してきた。今回3位、ランキング3位はアベランと同じくスペインのサンドラ・ゴメスだ。
女子トライアル2はドイツのビビアン・ワッシが2連勝。上位3名は開幕戦と同じ顔ぶれだった。