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マヨルカで、藤波表彰台

3月11日、日本では全日本選手権が開催されていたその日、海の向こう、地中海に浮かぶスペインの観光島、マヨルカ島では、Xトライアル第5戦が開催されていた。
今回のセクションは木やU字溝などが使われて、スペイン風の鉄板だらけのインドアセクションに比べると、ちょっとナチュラルな感じ。インドアにナチュラルもなにもないが、スペイン式鉄板セクションを見慣れると、感覚もおかしくなってくる。
感覚がおかしいといえば、トニー・ボウの勝ち方もそう。今回もボウは勝利して、2011年シーズンから続いているインドア連勝記録を更新しているが、今回はカベスタニーに2点差の僅差。大量リードをとらないボウを見ると、ちょっと心配になってしまう。もっとも、2点差でもダブルスコアなのだが。
3位は藤波貴久。3月11日という、日本人にとっては特別の日に、見事表彰台を獲得。表彰台の上から、日本への思いを語った。

スペイン式セクションは、これでもかというくらいに高く、ボウにしか行けないポイントかそこここにある。しかし今回は、セクション設定はやさしめ。ボウにとっては神経戦で、珍しく誰でも勝つチャンスのあるトライアルとなった。
まずクォリファイ。5セクションで、8名のうちセミファイナルに進出する6名を選び出すこの戦いは、なんと上位6名がオールクリーンという結果となった。減点をしたのはマイケル・ブラウンとアルフレッド・ゴメスの二人。ブラウンが11点、ゴメスが15点(それぞれ2個ずつのクリーンを出している)だから、彼らにとってはけっして簡単なセクションではなかったのだといえる。これを見ると、今の世界のトップがいかにかけ離れたテクニックを持っているかがわかるが、一方、若いロリス・グビアンがかなり実力をあげてきているのもわかる。
さて、6名がオールクリーンで6名のセミファイナル進出は決まったが、クォリファイの順位は最終順位を決める材料となることもある(ファイナルで同点の場合、クォリファイの順位で最終順位が決まる)。ここは序列をつけておかなければいけない。第1セクションを全員で再トライし、セクション走破時間が早い者から上位ということになった。一番遅かったのがファハルドで22秒、ラガが20秒。カベスタニーがそれより5秒速く15秒。ところがボウはさらに5秒近く速くて、10秒2で走ってしまった。
藤波は?というと、ボウに次ぐタイムが出そうな勢いで走っていたのだが、そのスピードが裏目に出て、木から落っこちてしまって5点となった。残念。グビアンも5点で、このふたりはこのふたりでさらに同点決勝をおこなった。藤波が20秒3、グビアンが22秒2。藤波も、2度目はスピードはある程度セーブして走ったようだ。

セミファイナルでは、第1セクションでラガとファハルドとグビアンが5点になった。この3人は、これに先がけておこなったダブルレーンで3人とも敗北している。3人が減点6。ボウがクリーン、カベスタニーが1点、藤波が3点。セミファイナルは、ファイナルに進出する4人を決める戦いでもあるが、同時に最終成績を決める戦いでもある。
セミファイナルではオールクリーンはなかったが、ボウが1点、カベスタニーが2点、そして藤波が3点。ラガもダブルレーンの1点と第1セクションの1点以外はすべてクリーンしたが6点で4位。ここまでがファイナル進出を決めた4人となって、5位は12点のグビアンとなった。毎回ファイナル進出を逃してくやしい思いをしているファハルドは、今回は3つの5点を喫して16点と6位。ランキングでは藤波に大差をつけられての5位だが、グビアンにその座も狙われているという厳しい状況となった。
セミファイナルは、ボウとカベスタニーが2点で同点トップとなっている。

そしてファイナル。ファイナル最初のダブルレーンでは、4人ともが真剣勝負だ。ここでは最大減点が3点(全敗)、最小が0点。今日のような減点を撮るところが少なそうなセクション設定では、ダブルレーンでの減点は大きい。ここでラガが全敗した。3点。これでラガのトータル減点は9点。藤波はカベスタニーとボウに負けて2点を追加。トータルは5点。カベスタニーはボウに1敗、ボウは全勝で、カベスタニーがトータル3点、ボウが2点。なかなかの大接戦だ。
最初のセクションで、ラガが1点を取った。これでラガに対する藤波のリードは5点に広がった。ところが次のセクションで、藤波が失敗。5点のリードは一気に縮まり、同点に。勝負は最終セクションで決まることとなった。
まずラガがトライ。ラガは、1点でここを抜けた。こうなると、藤波に表彰台のチャンスが回ってくる。そのためには、藤波がすべきことは、最終セクションをクリーンすることだ。大きなプレッシャーが、藤波にかかってきた。そして藤波はプレッシャーに打ち勝って、見事最後のセクションをクリーンした。
このセクションは、カベスタニーも1点で抜けているから、けっして楽なものではなかった。藤波、大金星。ボウは結局ファイナルを減点なしで走り抜け、セミファイナルでの減点のみの2点で試合を終えた。カベスタニーは4点。藤波はこれに遅れること6点の10点。ラガと1点差で勝ち取った表彰台だった。
今シーズン2度目の藤波の表彰台だが、藤波は表彰台の上から、いまだ災害の渦中で苦しんでいる祖国への思いを語ったのだった。
