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トライアル・デ・ナシオン

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ニッポン、2位!

07TDN表彰台

 2007年の世界選手権を締めくくる、トライアル・デ・ナシオン(TDN)が開催された。例年の通り、金曜日に女子世界選手権最終戦(といっても今年はベルギー大会の中止で、全2戦)、土曜日に女子TDN、そして日曜日が男子TDNとなっている。
 この大会、地元イギリスの久々の勝利なるか、常勝スペインがやはり圧勝するのか、そして日本の巻き返しなるかが注目された。
 結果は、見事、イギリス応援団のまっただ中にあって、日本チームがイギリスを破って2位に入った。優勝は定石通りにスペイン。スペインの圧勝ぶりは、ちょっと突き崩すのは不可能だから、日本の2位は、勝利にも匹敵する大金星となった。

Photo : Mario Candellone , Agnese Andrione


 日本チームには、さまざまなハンディがある。まず遠い。遠いから、遠征にお金がかかる。ここまでは誰もが納得するところだ。次いで、マシンの手配の問題がある。かつて、HRCとヤマハが全日本選手権でしのぎを削っていた時代は、TDNに参戦するのもワークス体制だった。ワークスマシンを空輸して、メカニックも大挙して現地に駆けつけた。今はそんなぜいたくな体制はない。強いていえば、現地のモンテッサと契約している藤波が、いつもの世界選手権と同じ体制で試合にのぞめるというだけだ。もっとも藤波は国籍は日本人だが、トライアル活動的にはヨーロッパ人だから、日本人のハンディと同列には語れない。
 黒山と野崎はヤマハ契約ライダーだが、マシンはスコルパが用意する。用意されたスタンダードに、自前のスペシャルパーツを組み込んで試合にのぞむ。小川友幸も田中太一も、過去TDNに参戦した日本人は、多かれ少なかれみんなこの作業を強いられた。しかしそれが4ストロークマシンになると、自前のパーツを組み込むのも楽じゃない。黒山と野崎は、ほとんど練習もできず、マシンを組み上げただけのぶっつけ本番で試合にのぞむことになった。
 小川は藤波が1年前に使っていたワークスマシンの提供を受けたが、これとてセッティングは藤波仕様。いくら幼なじみとはいえ、小川と藤波のセッティングはまったくちがう。けれど小川は、あえて藤波仕様のまま試合にのぞんだ。過去、自前のサスを持ち込んで、さんざん苦労してセッティングに挑戦して、結局うまくいかなかったことが何度もある。それよりは、最初から自分の好みではないマシンに乗りこんで慣れてしまった方が、結果がいい。
 スタート順は前年の順位によるグループごとのくじ引き。昨年3位の日本チームは、くじ運よく一番最後を引き当てた。おかげでイギリスやスペインの動向を観察しながら試合を進めることができる。本来、トライアルの採点は厳正なものだが、1日に15ものセクションがあると(TDNの場合はいつもの世界選手権とちがって、さらに多い18セクションが用意されている)、いろんな採点がある。地元イギリス勢が日本を相手に戦う図式なのだから、オブザーバーにどんな余念があっても不思議ではない。
 日本チームも、実はそんな懸念があった。だからイギリスチームがトライするときには、常にその場にいて、採点にあやしいものがないかをチェックするようにしたのだが、どこかの国とちがって、マン島の人たちはフェアに採点をしていたのが確認できて、ひと安心ではあった。
 序盤、日本チームは2位争いというより、もちろん優勝戦線に加わろうと考えていた。表彰台の一角を担うチームとして、最初から2位狙いではつまらない。そして序盤の10セクションあたりまでは、トップのスペイン(オールクリーン!)に対して3点と、まだまだ追撃も可能なポジションにつけていた。

07TDNボウ
優勝のスペインチームのボウ

 ところが11セクションで、日本チームは5点になった。ここから、日本の戦況はトップ争いから2位争いに移っていく。
 TDNでは、4人のうちいいほうの3人の減点をトータルして成績とするのがルールだから、5点というのは、4人のうちふたりが5点をとったことを意味する。すべてのセクションで誰かが必ず5点をとっていたとしても、残りの3人がクリーンすれば、チームとしてはクリーンが続く。逆に、すべてのセクションを4人ともがクリーンしてきたとしても、最後のひとつでふたりが5点とってしまうと、チーム減点は5点になる。3人が5点なら10点、4人が5点なら、15点だ。18セクションやって、前者は5点が18、クリーン54で減点0。後者は(4人ともが5点だとすると)5点がたった4個、クリーンが68、そして減点は15となる。個人の勝負よりも、チームとしての減点をまとめることが、いかにTDNでの好成績につながるかが、この計算でもわかる。
 イギリスは、11セクションで2点、ここまでのトータルを9点としている。対して日本は11セクションの5点で8点。次の12セクションでイギリスが1点を追加して8対10。13セクションでは日本4点に対してイギリスが5点で12対15。この時点でスペインは0(オールクリーン)、3位のフランスは63点だから、2位争いの接戦が際立っている。
 16セクション、イギリスの1点に対し、日本は2点。これで14対16。1点差。そして本部近くに帰ってきてのインドアスタイルの17セクション、ここでふたりが5点となった。対してイギリスはクリーンだ。日本の1ラップのトータル減点は19。イギリスは16。1ラップ目最後に逆転を許して、日本は3位となった。

07TDN藤波
07TDN小川
07TDN黒山
07TDN野崎
日本チームの4人。左から藤波、小川、黒山、野崎

 2ラップ目に入った。TDNでは、持ち時間はひとり7時間。いつもの5時間半よりも格段に長いが、そのかわりセクション数も多い。第一、いつもはまったくの個人競技で、ライバルやチームメイトをわざわざ待ってトライすることなどないが、TDNではチーム同士でラインを教えあったり声をかけあったりする。その真剣度やレベルは段違いだが、日本のツーリングトライアルの風景に近い。時間はいつもよりかかるようにできている。
 日本チームは残り時間を気にして、イギリスチームを追い抜いて先行する作戦に出た。日本のほうがあとからのスタートだが、最後の土壇場になると、彼らはとんでもない底力を発揮して追い上げてくる可能性があるから、日本は日本で急いでいた方が無難だ。
 セクションを回るペースを速めるのは、簡単な方法がある。4人のうち、ひとりがトライしないで先回りすることだ。しかしただ先回りをするだけだと、思わぬ減点をくらうことにもなりかねない。3人が確実にクリーンしたときにだけ、先回りが許される。つまりチームメンバーがクリーンを連発すれば、試合進行はどんどん早くなり、逆に減点を食っていると、なかなかペースは上がらない。
 日本は、この罠にはまった。3人トライでひとりはエスケープと作戦を決めているから、誰かが減点すると、エスケープすると決めていたモードをひっくり返して、クリーンをしなければいけない。チームプレーとはいいながら、なかなかたいへんな試合展開となってきた。この間、黒山が腰を痛めるなど、日本チームはあやうしの戦況だ。
 しかし、日本チームにもまだ目はあった。今回、イギリスチームの代表はドギー・ランプキン以下、世界選手権全戦参戦からは引退をしているグラハム・ジャービス(イギリス大会には参戦している)、トップ5の牙城を狙うジェイムス・ダビル、そしてジュニアチャンピオンとなって、最終戦アンドラ大会では9位に入賞したマイケル・ブラウン。世界選手権から引退した3人を擁する日本チームに対して、やや経験に勝っているという見方もできるし、反面、TDNの経験のないブラウンのプレッシャーも小さくはなかったという見方もできる。ブラウンは、当初予定されていたシャウン・モリスのキャンセルによる、急きょの出場だった。
 藤波によると、2ラップ目の日本チームは、1ラップ目よりはるかにできが悪かったように思えたという。第2セクションで1点、第3セクションで1点と細かい減点を重ね、第9でも3点。ラップ前半は、1ラップ目の倍近い減点をとっている。しかしイギリスは、クリーンを増やしたかわりに、5点がちらほら目立つようになった。それで、勝負は混とんとしてきた。
 日本チームのハンディは、国が遠くてマシンの調達に苦労するだけではない。関係者や応援団の数も少ない。今回はイギリスでの開催だから、イギリスの応援団は無数にいる。対して日本チームはほんの少人数だ。チーム監督であり選手会代表の小谷徹が必死で情報をかき集めるが、ただでさえ複雑なTDNの点数計算、正確な情報はなかなか集まらない。
 1ラップ目、日本にとって鬼門となった17セクション。本来なら、ここは日本の4人にとっては楽勝のクリーンセクションだ。残り時間は3分ちょっとしかない。藤波は、ばくちをした。3人がトライしたのを見届けてから最終セクションに走ったのでは、時間の無駄だ。2ラップ目は、3人ともクリーンしてくれるにちがいない。だったら一足先に最終セクションへいって、先にクリーンを出してあとの3人に余裕を与えてやろう……。
 仮に、17セクションで誰かが5点となったら、それで勝負は決まっていたかもしれない、いささか危険なかけだった。勝負も緊迫していたが、しかし時間も切迫していた。
 結果、17セクションは藤波以外の3人はみなクリーンをした。最終セクションも、3人がクリーンした。ゴール。公式結果を見ると、日本チームのタイムには28時間3分18秒とある。7時間×4なら28時間だから、3分18秒超過でタイムオーバーは3点となりそうだが(ヨーロッパでは3分59秒までは減点は3点。4分00となって、減点4が与えられる)、減点はひとりひとりに与えられて、そのトータルがチームに課せられる。だから7時間00分59秒でゴールしたライダーが4人なら、トータルタイムは28時間3分56秒となるが、タイムオーバー減点は0となる。少々計算が複雑だが、個人競技のトライアルをチーム戦としたところでのつじつま合わせがこんなところに現れている。日本チームは、タイムオーバー減点は2点。4人のうち誰かふたりが、7時間1分を越えてゴールしたというわけだ。4人はほぼ同時に走っているのだから、その境目はほんの数メートルだったはずだ。
 日本のちょっと前にゴールしていたイギリスは、しかし持ち時間的には日本よりも遅れをとっていた。イギリスのタイムは28時間6分6秒で、減点は5点となっていた。
 しかしゴール直後では、タイムオーバー減点も含めて、詳細な減点数などわかりようがない。ゴールしたまま、掲示板をにらみつけて結果を待つ日本とイギリス。結果、6点差で日本の勝利だった。日本の喜びは、優勝したスペインチームの印象を薄くしてしまうほどのものだった。
 2000年のスペイン大会以来、2度目の2位入賞。いつも苦しい日本チームだが、苦しくても日本はがんばる。2位入賞は、その証だ。

●トライアル・デ・ナシオン上位3チームのセクションごとの結果

Pos. Nation 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 Lap Time Tot. Clean
1 スペイン 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 7 120
0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 5 0 0 1 0 0 7
トニー・ボウ/アルベルト・カベスタニー/ジェロニ・ファハルド/アダム・ラガ
2 日本 0 0 0 1 0 1 0 0 1 0 5 0 4 0 0 2 5 0 19 2 39 98
0 1 1 0 0 0 0 0 3 0 4 0 6 0 1 2 0 0 18
藤波貴久/黒山健一/野崎史高/小川友幸
3 イギリス 0 1 0 0 0 0 2 0 4 0 2 1 5 0 0 1 0 0 16 5 45 99
0 0 5 0 0 0 0 0 1 0 5 1 7 0 0 0 5 0 24
ジェイムス・ダビル/グラハム・ジャービス/ドギー・ランプキン/マイケル・ブラウン

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