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これがノーストップだ!?
FIMが、ノーストップルールのアウトラインをまとめた動画を発表した。いつものように、FIM-Live.comから見ることができるので、ぜひご覧ください。
世界選手権開幕戦に本大会ももう間もなく。さて、どんなシーズン、どんなに本大会になるのか、楽しみだ。
今年の日本大会は開幕戦。つまりイコール,2013年シーズンは日本で開幕することになる。
日本大会は、これまでに伝統的に6月の開催だった。2011年は震災の影響で8月の開催となり、過去には9月の開催ということもあった。しかし開幕戦となるのは今回が初めて。新しいシーズンを迎えて、選手の意気込みもひとしお。いつにない熱い戦いが見られるのではないだろうか。
それにも増して興味深いのは、ルール変更がどのように試合に影響してくるかという点だ。ノーストップルールは、過去に停止で1点というルールが採用されたことがあったが、停止で5点となるルールは(世界選手権では)初めてとなる。
新しいルールに対して、日本大会はいきなり本番となる。ライダーも主催者も(練習やシミュレーションはしているだろうけど)実戦でノーストップを経験するのはこれが初めて。逆にいえば、日本での開催状況がその後の世界選手権の指標になるということでもある。
FIMは、ノーストップルール採用を決めたが、これはメーカーからの要望だそうで、その理由がトライアル市場の活性化のため、ということだ。ノーストップルールがどうして市場の活性となるのかの理由は明らかになっていない。イーハトーブトライアルはにぎやかだから、その点を見れば納得もできるが、世界選手権は景色のいいところをツーリングするのとはちがうので、同じように考えにくい。

映像のエンドロールにある協力ライダーたち。そうそうたるメンバー
今回、映像として発表されたものは、FIMがトップライダーの協力をあおいで、採点と走り方のサンプルとしたものだ。トップライダーから女子ライダーまで幅広い選手が収録に協力している。ただし、トニー・ボウやジェロニ・ファハルドなど、一部のトップライダーの顔は見当たらない。
FIMに呼ばれてこの収録に協力している藤波貴久選手によると、収録にあたって、FIMはうんとまぎらわしいような走り方は要求してこなかったということだ。実はトニー・ボウも現場にはいたそうだが、もっと実戦的な映像を撮るべきだと主張していたという。しかしFIM側は首を縦に振らず、でき上がったのがこの映像だ。ボウが一度だけこれぞと思う走りをして見せたところ、オブザーバーの採点は5点とクリーンが半々になってしまったとのことだ。
FIMは、そんな微妙なケースを想定しての、はっきりした基準を作るのを躊躇しているのではないか。それでトニー・ボウはこんなのだったら二度と協力できないといって帰ってしまったという話である。映像の中で、最もわかりやすいライディングを見せてくれていたのは、藤波選手だった。
しかしこの映像を見る限りでも、ストップかそうでないかの判定は、きわめてむずかしいように思う。イギリス人の解説を聞いていると「Keep Moving」という言い回しがたびたび出てきているから、もしかするとノーストップとは前進し続けているにとどまらず、広義に動き続けていればいいのかという気もしてくるけれど、ヨーロッパの人はあんまり細かいことは気にしないで納得することが多いので、条文の検討については日本大会で初めてまな板に乗ることになるのではないだろうか。
当初、FIMのごり押しと伝えられていたノーストップルールは、メーカーからの提案であることがわかってきて、そうなるとライダー側としてはあんまり強くノーストップに反対はできない。採点の混乱はともかく、ルールそのものには反対しないというライダーもいるようだから、もう少しきっちりと新ルール導入に配慮をしていけば、よいルールができあがる可能性はあるのだが、今のところはちょっと先行きは不透明だ。
ヨーロッパの方々はよくも悪くもおおらかである。停止足つき1点というルールを採用した時も、ヨーロッパでは(多少の混乱はもちろんありつつ)おおむねそんなものかなという感じで受け入れられていたが、日本大会でみんなぶったまげた。止まってもいないのに1点取られると。いやね、止まってるんでよ。明らかに。それをヨーロッパでは止まったと採点されていなかっただけだった。その後あっというまに、停止1点のルールは解消された。最初は日本のオブザーバーはでたらめだと息巻いていたヨーロッパの人たちも、それがルールの条文通りだと気がついたからだ。ヨーロッパ人だけでやっていたら、あと百年やってても気がつかなかったかもしれない。
それを今回、また繰り返すことになるのか。停止1点のケースとちがうのは、最初にやるのが日本大会ということだ。1点だったらぶつぶついいながらもまぁいいかと引き下がれるかもしれないけれど、5点ではどうにもならない。もしかするとボウが(そんなことは絶対にあり得ないけど)オール5点になってしまうことだってあるかもしれない。
もし、FIMが流れの止まらないトライアルを目指すのだとしたら、この映像に出てくるストップの解釈も、なんとなく理解できる。しかしそれをルールの条文に書いて、条文通りに採点をしていくのはむずかしいのではないだろうか。
ノーストップルール採用となったトライアル大会では、ライダーがセクションについて最初にやらなければいけない仕事は、オブザーバーの採点基準をチェックする作業になりそうだ。
今年の世界選手権では、総セクション数を増やすという決定もなされている。配置的な関係からこれ以上セクション数を増やせないもてぎでは、12セクション3ラップという試合形式をとった。スタート順はトップライダーが最後となるという。
間もなくに迫った世界選手権開幕戦もてぎ。観戦方法も、いつもとは考え方を変えた方がよさそうだ。