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ボウ7度目のタイトル獲得

Xトライアル第4戦は、3月23日、ドイツのビーレフェルトで開催された。今シーズン、5戦組まれているXトライアル、ここまで全勝のトニー・ボウは、この大会でも勝利し、最終戦を待たずしてチャンピオンを決めた。ボウのインドア世界選手権でのタイトルはこれで7個目、モンテッサに移籍してから毎年タイトルを手中にしている。
2位はアダム・ラガだったが、今シーズンは2番手以降が激しくぶつかっているため、ボウとのポイント差は37点。ボウが80点だから、その差はほぼ倍に近い。今回はクォリファイでカベスタニーが1位、ラガが2位と波乱を予感させたが、セミファイナル以降はいつものボウの独擅場。クォリファイで4位だった藤波貴久は、セミファイナル最下位となって今回は6位。ランキングも5位に後退した。

ドイツの夜には、こんな方が登場しました
ドイツで世界選手権は、最近はとんと珍しい。いいライダーも輩出していないし、環境に対する規制も厳しいし、オフロードイベントを開催するのはむずかしい国なのだが、だれあろう、藤波貴久が初優勝したのは、1997年のドイツ大会だった。そしてまた、藤波がインドアで初めて、そして現在まで唯一勝利しているのが、2004年のドイツ大会だった。
今回は、藤波が勝利したコブレンツではないが、ビーレフェルトという町でのインドア大会となった。
◆クォリファイ
今回はいつものノミネートライダー8名に加えて、イギリス人のジェイムス・ダビルが参加している。今、藤波とスペイン勢4人の頂点ライダーに、インドアではもっとも近い位置にいると思われるのが、ダビルだ。Xトライアルは前年の上位の選手はノミネートとなるが、参加枠がごく少ないし、国籍があまりかたよってもいけないしで、上手なライダーが必ずしも全戦参加してくるわけではない。
スタート順は、ワイルドカードのダビルが真っ先に走る。ついで前回までに5位から8位だったノミネートライダーがくじ引き、さらに1位から4位までの4名がくじ引き。連続表彰台でランキング3位に浮上した藤波は、今回初めて上位グループでのくじをひいた。でも1番くじを引いてしまったので、上位陣では最も先にスタートする。

イギリスのジャック・チャロナー。すっかり最下位が定位置になってしまった
6人が進出できるセミファイナル。今回の参加者は9名だから、3名がクォリファイ敗退、ということになる。セクションが少ないから、ミスをすると上位陣でもクォリファイ敗退のリスクはある。
今回、最も苦戦してしまったのはチャロナー。クォリファイで、クリーンが出ないただ一人のライダーになってしまった。インドアでは、惜しいもなにもなく叩き落ちるという失敗が多いから、点数差ほどにチャロナーの実力が劣っているわけではないはずたが、結果は結果だ。

フレンチ、アレッシャンドレ・フェレール。一時の輝きはどうした?
トップバッターとして走ったダビルは10点。これに迫る11点のスコアとなったのが、フェレールとグラタローラ。フランス人とイタリア人の新鋭だ。同点とはいえ、第1セクションの5点と第5セクションのクリーン以外の3セクションはそれぞれクリーンしたの5点になったりの点数の取り合いだったから、なかなかいい勝負ではあった。同点の場合は、同じセクションを走りあって、減点が少ない方が上位となり、減点が同じだったら、走行タイムが速い方が上位となる。今回はフェレールが5点となってグラタローラが1点で抜けて、グラタローラの7位が決まった。
フェレールは、シーズン当初に藤波を破る活躍を見せ、期待の新人としてのポジションを固めるかに見えたが、このところちょっと失速中だ。

イタリアン、マテオ・グラタローラ。地味に成長中。
対して、前回6位となって調子を上げつつあるのがイタリアのグラタローラ。背が低いライダーで、125ccやジュニア時代から特に好成績を挙げるというタイプではなかったのだが、このところちょっと成長している模様だ。
上位陣は、こちらも接戦。まずダビルとファハルドが10点で同点、ボウ、カベスタニー、ラガがオールクリーンで同点となった。タイブレイクをしないで順位が決まったのは、藤波だけだった。藤波もたった1点だったから、トップに迫る好スコアだ。
トップ争いのタイブレイクでは、ボウがちょっとした失敗。といっても足を1回ついてしまっただけなのだが、ラガとカベスタニーはクリーンしたので、ボウはクォリファイを3位で通過ということになった。ちょっとしたハプニングだ。
◆セミ・ファイナル
セミファイナル最初の戦いは、いつものようによーいどんのダブルレーン。クォリファイの1位と2位、3位と4位、5位と6位が戦う。ここではラガとボウとファハルドが勝った。カベスタニー、藤波、ダビルはいきなり1点減点から勝負が始まる。
最近のXトライアルの勝負の傾向を見ていると、(トップのボウは除いて)けっこうな接戦となることが多い。となると、ダブルレーンでの1点減点が勝負を左右することになることもままある。重要なレースなのだ。最近は、足つき減点をとらなくなったので、とにかく速ければよいというルールになっている。以前より、さらに勝負は厳しくなっているといっていい。

藤波貴久。今回はいいところなしの結果。残念なり。
ダブルレーンでボウと対戦した藤波は、セミファイナルのセクションでも本領を発揮できなかった。2戦続けて表彰台の実績はどうしたのか、というより、2戦続けて表彰台に乗ったことで、これまでとはちがう欲が出た結果、その気合いが裏目に出てしまった、ということのようだ。
最初から最後までクリーン狙いで走って、3連続5点。4位のダビルの8点に対して、藤波は16点だから、今回はチャンスなしの結果となった。
藤波は、前回の3位表彰台でランキング3位に浮上していたが、今回6位となったことで、ランキングも5位に転落。最終戦で再び逆転という可能性は残されているが、点差もそこそこにあって厳しい状況となっている。

ファイナル進出がならなかったランキング3位、アルベルト・カベスタニー
藤波同様、セミファイナルで調子が出なかったのが、クォリファイで2位となったカベスタニーだった。なんとカベスタニーは、4つのセクションでクリーンがひとつもなかった。セミファイナルの小計が12点。藤波には4点差をつけたが、ダビルにはやはり4点差。インドアでは、打倒ボウの最右翼でもあるのだが、そのカベスタニーでも、ちょっと波に乗れなければこういう結果になる。アウトドアとちがって、インドアは短期決戦だから、途中で流れを変えるのがむずかしいのだ。
セミファイナルでは、ボウがオールクリーン、ラガが6点、ファハルドが7点、ダビルが8点となった。ボウ以外はなかなかの接戦だ。
◆ファイナル

見せ方がダイレクトなスペインとちがって、ムーディなドイツ大会
ファイナルは、4人に絞られて、やはりダブルレーンから始まる。それから4セクションによる勝負があって、決着だ。
ダブルレーンはボウとラガ、ファハルドとダビルが対戦した。それぞれ、ボウとファハルドが勝利。

4位はワイルドカードのジェイムス・ダビル
第1セクションでは、ダビルが5点。このスペイン勢と対戦すると、ダビルも分が悪い。この第1セクションでは、なんとボウがタイムオーバーで1点をとってしまった。ダブルレーンでの勝利を相殺してしまった減点だが、しかし結果はセミファイナルの減点も加算されるので、トータルではあいかわらず大きなリードがある。

ジェロニ・ファハルド。ランキングは4位に。
第2セクションはボウ以外は全員が5点。第3セクションはダビルとファハルドがタイムオーバーの1点。最終セクションはボウだけがクリーンで、ダビルが5点。今回は、第1セクションでのボウのタイムオーバー以外は、それぞれのライダーがそれらしい減点をとってファイナルは終わった。

アダム・ラガ。カベスタニーと1点差のランキング2位争い。
その結果、ファイナルではボウが1点、ラガが6点、ファハルドが8点、ダビルが16点。これにセミファイナルの減点を加えて、ボウ1点、ラガ13点、ファハルド15点、ダビル25点となった。ラガとファハルドはなかなかの僅差。ボウ以外の表彰台の顔ぶれは毎回ちがうが、いつも接戦となるのは変わらない。

トニー・ボウ。無敵無敵。まるで無敵。
これでボウは、今シーズン4勝目。2位以下は毎回のように顔ぶれが異なるので、ポイントランキングではボウがどんどんポイントを積み上げて、たった5戦の戦いのうち4戦目の今回にして、7回目のインドアチャンピオンを決めた。
7年連続のチャンピオンも偉業だが、実はボウは、2011年以降の3年間は、インドアではシーズンを通じて一度も負けたことがない。誰が、いつボウを破って表彰台の中央に立てるのか、さてどうだろう?
ボウは、2007年にモンテッサ入りをしてから、インドア、アウトドアともに毎年タイトルを取り続けている。インドア、アウトドアを合わせると、これで実に13個目の世界タイトルとなる。
次は、アウトドアで、ドギー・ランプキン(7年連続)とジョルディ・タレス(7回)の記録に挑むことになるが、その前に、インドアの最終戦で優勝の美を固めるのが、ボウのお仕事となる。

トニー・ボウ。チャンピオン、決定!
2013年Xトライアル最終戦はニース。日本では全日本選手権第2戦(事実上の開幕戦)近畿大会が開催されている週末の開催だ。