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SSDT 1日目

 イギリス北部、スコットランドでは、伝統のSSDT(スコティッシュ6日間トライアル)が開催されている。
 5月2日月曜日はその初日。日本人7名を含む271名のライダーが参加。初日には30セクションが用意され、昨年ジュニアカップで1勝したジェームス・ダビル(イギリス)とジョルディ・パスケット(スペイン)がオールクリーンでトップ。グラハム・ジャービスら3人が1点で続いている。
 日本人は、昨年リタイヤの雪辱を果たしに出かけた森進太郎が45点、86位でトップ。続いて杉谷真が68点で132位。205位は宮川善治で95点。神部逸雄109点232位、小林由利子121点245位。138点で257位は猪倉誠治、野牧ハルヒコ139点258位となっている。


 杉谷からの連絡によると、先週の金曜土曜あたりは雨が降って寒かったが、週が明けて月曜日は天気もよく気温もいつもよりは高くて、いつも楽な印象だったらしい。もっとも「楽」というのは鼻歌交じりで走れるというような種類の「楽」ではなく、いつもの「史上最悪、これ以上きつくて死にそうな経験はいまだかつてしたことがない」レベルが「史上最悪のきつくて死にそうな経験のひとつに数えられる」程度になるくらい。わかりにくいたとえでしたけど、そんな感じだと思います。
 SSDT出発前の杉谷は、自然山の編集や観戦ガイドの制作、DVDの編集作業などで、練習をしていないのはもちろん、健康な生活さえ送っていない状況なので、満足な結果はまったく期待できない。ほとんどのセクションはすでに杉谷が走ったことがあるセクションだったらしいが、今までよりも点数を増やした実感があったということだ。そんななか、はじめて走るセクションはひとつだけあり、そこでチェンジペダルの先っちょをすっ飛ばすクラッシュを演じたとのこと。けっこうな高さの岩盤で、そこで天高くぶっ飛んだとのこと。この程度は、まだトラブルのうちには入らない。杉谷は15分ほど持ち時間を余らせてゴールに帰ってこれたので、エアクリーナーを掃除してから車両保管にマシンを預けた。
 ただ、体調不良の練習不足のわりには、杉谷の成績は悪くない。100位以内という目標の達成は最近は最初からAキメラムードだが、点数はともかく、スムーズに走りきる能力は、毎年確実に向上しているように思える。
 猪倉、野牧以外の日本人は、みな結果的にタイムオーバーなしでゴールした。ただし神部さんは2度ほどミスコースをして、オンタイムの自信はなかったようだ。神部さんはセクションで転倒して手首を痛めている。宮川さんも、どこかに負傷をしているようだ。初出場の神部、宮川は、SSDTの想像以上の過酷さに仰天している。「ここまできついとは思ってもなかった。とんでもない世界に足を入れてしまった」との感想だ。過去、SSDTの過酷さに仰天しない日本人は皆無だ。どんなに覚悟を決めていっても、それでもまだSSDTを甘く見ていたということだが、過去もっとも勘違いの大きかったのが誰あろう杉谷。何度も何度も取材でこのイベントを見学していて、いろんな話も聞いていて、日本のトライアルファンにその過酷さを伝えるのが仕事だったというのに、自分で走ってみたら「こんなはずではなかった」んだそうだ。神部さんや宮川さんが「こんなはずではなかった」と天を仰ぐのは、想定の範囲といえるでしょう。
 神部さんは国際B級でツーリングトライアルでは常に優勝争いをする。年の功で老練なテクニックもお持ちだし、さらにSSDTについては、自分のこれまでの経験や技術に甘んじることなく、一から学ぶ姿勢を見せていた。案外、けっこういい成績が出るのではないかと楽しみにしていたが、1日目の結果を見る限りは大苦戦といったところだ。4回目の出場となった小林由利子と12点差しかつけられなかったというのは、神部さんとしてはきっと不本意だったにちがいない。あるいは、あまりにきついので、点数云々については、まったく考えが及んでいない状態かもしれない。点数的には、宮川さんが95点で杉谷と27点差。初出場ということを考えると、なかなかがんばった結果といっていい。
 2年目の参加の猪倉誠治とその友人の野牧さんは、ご本人たちの感触では30分くらいタイムオーバーとのことだったが、リザルトにはタイムオーバーがついていない。猪倉さんの今年のSSDT評は「今年はえらくきつい」ということだそうだ。杉谷のインプレッションとちがうところが興味深い。
 今回の日本勢の中でもっとも成績がいい(唯一の国際A級だから、当然といえば当然)は、昨年はリヤタイヤのビートが落ちてリタイヤという、サバイバル能力不足を露呈してしまったが、このまま堅実に走れれば今年はきちんとした結果が出るのではないだろうか。
  さてトップを争うライダーのお話。この大会では、伝統的にイギリス人が強い。スコットランドの独特の地形と滑りやすい岩肌に慣れているからだ。こういったSSDTスペシャリストの前には、世界チャンピオンたちもたじたじである。
 そんな中、オールクリーンで1日目を終えたのが、若いジェームス・ダビルとジョルディ・パスケット。ダビルはジュニアカップのトップ争いをするライダーだが、まだまだ若いから、SSDTを走るのは楽ではないはずだが、たいへんな健闘といえる。パスケットは、日本にも何度か来ているから、名前を覚えている人も多いと思う。SSDTにも熱心に参加を続けている。初参加の際は、ぼろぼろと減点をしていたものだが、世界選手権のポイントランカーでも、SSDTを走るには経験が必要のようだ。
 減点1で並んでいるのはジャービス、Ian Austermuhle、ダン・ソープの3人。ジャービスは説明する必要はないだろう、SSDTでももう何度も優勝している。Ian Austermuhleさんは、うーむ、なんと発音するんだろう? ドイツ人っぽい名前だけど、イギリス人だった。イギリスでは有名な人なんだろうか。こういう人が、ぽろっといい成績で走ったりするのも、SSDTの特徴でもある。世界選手権のセクションなど1メートルも走れなくても、SSDTでは世界選手権のトップランカーの出鼻をくじける。どうすればそういうことができるのかは、よくわからない。杉谷も、よくわかっていない。だから、ひたすら経験を積もうと、毎年出場し続けているわけだ。ダン・ソープは、イギリスのトップライダーのデイブ・ソープの息子。親父は、さすがに3年くらい前から、6日間の方には出場しなくなっている。
 減点2は、アモス・ビルバオとサム・コナー。アモスは、SSDTでは優勝経験もある。コナーは、世界選手権ではようやくポイントをとれるというレベルだが、SSDTでは一躍優勝候補の一人になる。もっとも優勝経験はないし、技術的にはともかく、コナーがSSDTで勝利するには、乗りかたも精神面も、まだまだ修業が足りないように思えます。
 減点4はジョアン・ポンスとジュアン・ナイト。ポンスはシェルコ4Tに乗っているはず。ナイトはマン島のライダーだった。マン島は、スティーブ・コリーの出身地であり、今はドギー・ランプキンも住んでいる。口蹄疫騒ぎで、イギリスのトライアル場が全滅状態だったときも、マン島では練習ができた。ナイトさんがどんなライダーだかわかんないけど、彼はイギリスではトライアル天国にお住まいなのかも知れない。
 減点5は、ここも役者ぞろい。ベン・ヘミングウェイは今年、ドギーのマインダーをやっている。とはいえ、2002年のデ・ナシオンにはイギリス代表選手として走っている。SSDTでは上位入賞の常連選手だ。トンミ・アーバラはタレスを破って1992年に世界チャンピオンになったフィンランド人。世界選手権参加を退いてから、アメリカで国内選手権を走っている。ギャリー・マクドナルドは、スコットランド人。地元の英雄ってところです。減点5には、もう一人ミッシェル・ブラウンさんもいる。もしかしたらジュニアカップに参戦している人かもしれないけど、よくわかんない。
 名前が少し知られているところだと、減点6にスティーブ・コリー、減点7にミカ・ベステリーネン、減点10に段・ヘミングウェイ(ベンの兄貴。ちなみにベンはドギーのマインダーをやっているのでモンテッサに乗っているが、ダンは今まで通りベータに乗っている。イギリスでベータを輸入しているのはドギーのいとこのジョン・ランプキン。ランプキン家とヘミングウェイ家は、誰かが誰かの嫁さんになったりして、大きなくくりでは家族。世界最強のトライアル一家なのだ)。
 減点21にはハリー・ランプキン。ドギーの弟だ。減点22にはジェームス・ランプキン。去年までドギーのマインダーを務めていたドギーのいとこで、今年は結婚するので世界選手権からは退いた。
 初出場ライア・サンツは36点で68位。杉谷が目指している100位以内というのが、いかにむずかしいか、ライアのこの成績でわかるような気がする。もっとも彼女は初出場で、SSDTには多いにてこずりながらのこの成績だろうから、やはりただ者ではない。
 イリス・クラマーは55点で109位。SSDTならライアよりイリスのほうがうまいかもしれないとちょっと考えたりもしたものだったが、そういう意外な展開にはならなかった。イリスには、ジュニアカップのようなセクションより、SSDTのナチュラルなセクションのほうが本領を発揮する気がします。気のせいかもしれないけど。ちなみにイリスの親父は62点で続いている。
 今日のところはこんなもので。もう2日目が終了して半日経つので、続報をお届けする段取りにかかります。

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