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ボウ、ラガを破る?
2月19日、インドア世界選手権も第7戦。今回は北イタリアのミラノでの開催だ。
優勝はいつものとおりラガ。向かうところ敵なしで7連勝。ライバルには、まったくつけいるすきを見せない。
しかし今回、活躍が光ったのはワイルドカードのトニー・ボウだった。
モンテッサの3人は、再び全員ファイナルに進出できずに終わっている。

あわや優勝のチャンスもあった
トニー・ボウ
今回のワイルドカードライダーはトニー・ボウとタデウス・ブラズシアクの二人。二人とも、今シーズン1回ずつレギュラーメンバーを破った実績の持ち主だ。
しかしやはり注目はボウ。前回もレギュラーを破って4位を獲得して存在感を示したが、なんと今回は、クォリファイでラガを破って、トップスコアでファイナル進出を果たした。
今大会、レギュラーメンバーは、どうしたことかミスの目立つ走りを披露した。第1セクションから4連続5点というとんでもないスコアを叩いてしまった藤波貴久も、結果として優勝するラガも、ミスをしながら試合を進めている点では、大差ないという見方もできる。
そんな中、本来の実力をきちんと発揮したのが、ボウだった。もともとボウはインドアが大の得意の選手だが、同じくインドアは慣れているはずのファハルドも、世界選手権のルーキーとしてクォリファイ通過には何戦かの訓練期間を要した。対してボウは、初参加からクォリファイ通過を果たした。インドア界に、たいへんな逸材が出現したということになる。

前回の予選落ちから今回は勝利まで後一歩
シェルコのアルベルト・カベスタニー
ボウは、第1セクションこそ5点になったが、その後はスピーディにセクションをこなし、7セクションを10分33秒で走りきって6点。対してラガは、7セクションを4点にまとめたが、そのタイムは12分33秒。制限時間は11分。ラガは、30秒ごと1点のタイムオーバー減点を4点ちょうだいし8点。さらに両者の争いとなったダブルレーンでもボウはラガに勝利して、ボウ6点に対し、ラガ9点。クォリファイとはいえ、このインドアシーズン、ラガがはじめて破れるというシーンは、なんとワイルドカードライダーによって実現されたことになる。
ファイナル進出の最後の席をかけた3位争いは、カベスタニーとファハルドの間で争われた。今回は2点差でカベスタニーの貫録勝ちとなった。
ニューマシンの開発に忙しいモンテッサチームは、それがそのまま成績に出ている。今回、チームはまた新しいしようのマシンを投入したようで、ニューマシンに乗り慣れるひまもなくインドアに参戦。その乗り込み不足が、そのまま低迷のリザルトにつながってしまっている。

ぎりぎりの勝利だったが、開幕7連勝
負け知らずのアダム・ラガ
ただし結果は結果としても、日々開発が進み、望む性能が出ていることにライダーは満足げ。いいマシンができつつあるという実感が、成績に結びつかないのがくやしいところだが、アウトドアシーズンが始まってからの快進撃を目指して、今シーズンのインドアは我慢の時らしい。
さて、またもモンテッサが全滅して、ベータ、ガスガス、シェルコの3台によるファイナルの争い。しかしここで大トラブル。ボウのベータが、大きな異音とともにマシントラブルを発生して、走行不能になってしまった。ミッション関係のトラブルと思われるが、これでボウはスペアのマシンに乗り換えることになった。しかしこのスペアが、セッティングもまともに出ていないような不調のマシンで、さすがにこれではボウも本領を発揮できず、ズルズルと減点を重ねて、ワイルドカードライダーの初優勝の夢物語は、まさに夢物語で終わった。
ラガとカベスタニーの戦いはしれつだった。カベスタニーは第1セクションで5点を取るも、その後はクリーンを連発。しかし1セクション1分のタイムは守れない。対してラガは、5点はないものの、クリーンが少ない。試合が進むと、なんとふたりは同点となっていた。

ボウが加わり、珍しい顔ぶれの表彰台。
左は4位のファハルド。
右に藤波の姿がちょっとだけ見える。
勝負を決めるのは、プレイオフセクション。勝負がつくまで、セクションでの一騎打ち。一つ目のセクションは二人とも5点。二つ目のセクションは、二人ともクリーン。結局、セクションの走破時間の勝負で、ラガの勝利が決まった。ボウに脅かされ、ファイナルではカベスタニーに詰め寄られ、今回のラガは、薄氷を踏む勝利だった。
今回の1戦で、藤波のランキングはファハルドに逆転され、1点差ながらランキング5位に転落した。この苦戦が2005年シーズンをどう占うのか、結論は、もう少し将来を待たなければいけないだろう。現在、モンテッサのワークスマシンはエンジンがほぼ完成に近づいたというところ。このあと、フレームまわりの開発が待っている。インドアのシリーズはようやく半分が終わったところ。シリーズを追いつつのマシン開発はさぞ忙しいにちがいない。しかしようやく仕上がってきたエンジンは抜群ということで、このうえは開発がきちんと進んで、試合できっちり成績を出していただくのを待つばかりだ。
世界選手権第7戦結果
イタリア・ミラノ
ファイナル | |||
1位 | アダム・ラガ | ガスガス | 9 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 9 |
3位 | トニー・ボウ | ベータ | 34 |
クォリファイ | |||
1位 | トニー・ボウ | ベータ | 6 |
2位 | アダム・ラガ | ガスガス | 9 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 19 |
4位 | ジェロニ・ファハルド | ガスガス | 21 |
5位 | ドギー・ランプキン | モンテッサ | 23 |
6位 | 藤波貴久 | ホンダ | 27 |
7位 | マルク・フレイシャ | モンテッサ | 28 |
8位 | タデウス・ブラズシアク | ガスガス | 31 |
ランキング | |||
1位 | アダム・ラガ | 70 | |
2位 | アルベルト・カベスタニー | 51 | |
3位 | ドギー・ランプキン | 37 | |
4位 | ジェロニ・ファハルド | 32 | |
5位 | 藤波貴久 | 31 | |
6位 | マルク・フレイシャ | 23 | |
7位 | トニー・ボウ | 11 | |
8位 | タデウス・ブラズシアク | 6 | |
9位 | ジェローム・ベチューン | 5 | |
10位 | 野崎史高 | 1 |