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アイルランドはラガ
SPEA世界選手権第2戦。今度はラガが勝利した。晴れたり雨が降ったり。それもただの雨ではなく、みぞれみたいな雪みたいな。風も強い。
寒い寒いアイルランドの戦い。開幕戦の1ラップ目こそ乱れたが、2ラップ目には誰よりも少ない減点で回ったアダム・ラガが、その勢いをそのままアイルランドに持ち込んだ。
今回はチャンピオン、トニー・ボウも立つ瀬がなかった。わずか2点差だが、ボウの勝ち。
藤波は1ラップ目に減点がかさんで3位となった。
アイルランド大会は、港町バンゴールでの開催。2003年に初開催され、2004年にも開催されたが、今回はそれ以来の開催となった。海沿いの岩、川沿いの泥の斜面などがセクションとなった。オーガナイズは当時も素晴らしいと評判だったが、4年を経た今もやはり素晴らしい大会運営だった。すべてのセクションは数キロ周囲にあって、観戦も容易だった。
ただしアイルランドはヨーロッパ大陸から海を越えてイギリスに渡り、そこからまた海を越えてアイルランド島に渡る長旅。ヨーロピアンライダーにとっては、今シーズン、アイルランド、アメリカ、日本と3大会連続で“遠征”となる。
トップライダーの中で、最初に失点したのはアダム・ラガ。第2セクションで1点をついた。さらに3セクションにくると、トニー・ボウが5点になった。ここまで3つともクリーンを続けているのは藤波貴久とアルベルト・カベスタニーの二人だけ。
そして第4セクション。ボウが1点。ボウ以外の全員が5点。ここは、カベスタニーさえトライせずにエスケープしてしまった不可能セクションだ。登らなければいけない壁はひたすら高かった。ここをたったの1点というのは、ボウはまったく並ではない。これで3セクションの5点が帳消しになって、さらにボウを自信づけることになった。
5セクションではボウがクリーン、ラガと藤波が1点、カベスタニーが2点で、4人がほぼ横並びで接戦となった。続くはジェロニ・ファハルドが10点、ドギー・ランプキンとマルク・フレイシャが11点だから、4人が早くも抜きんでいるのがわかる。
それにしても天候は冗談だというしかない。雪も降る、雨も降る、しかも激しい風。それだけじゃない。天候は猫の目のように変わって、急に晴れたりもする。海沿いのセクションでは、波も高い。上から横から、いろんな攻撃を受けてのトライアルだ。そして、気温は0度に近かった。寒い。
そんな中、ラガのライディングは完璧に近い。ボウは第5セクションで上昇気流に乗るも、第8セクションで5点。これが、ボウの勢いをそぐことになった。1ラップ目、ラガは第4セクションでの5点ひとつと、1点が5つで10点ポッキリ。対してボウは5点がふたつあって計14点となった。
それでも、このふたりの減点は他を圧していた。藤波は第7セクションでクリーンしそこねて5点となると、次の第8でも5点。1ラップ目の小計は22点にもなった。折り返しで3位だったのは18点のカベスタニー。トップを狙いたい、3位は最低ラインという藤波にとって、この状況はよろしくない。
藤波の奮起は2ラップ目。1ラップ目にボウ以外が抜けられなかった第4セクションも3点で抜けた。クリーンセクションでのミスだった第7ももちろんクリーンした。しかしこの日の藤波にとっては最難関は最終15セクション。4年前もそうだったが、ここの最終セクションは大木を組み合わせた人工セクション。藤波は最後の最後までクリーンしていながら、最後にオーバーハング状の大木に飛びつけず。1ラップ目も2ラップ目もここで5点になっている。ここはランプキンやカベスタニーも5点づくしだったが、ファハルドは2ラップとも3点、フレイシャも2ラップに1点で抜けた。ラガは1点とクリーンだし、ボウは両ラップともクリーンしている。
それでも、カベスタニー以下をくだして表彰台の一角をキープしたのはさすがといえるが、藤波がめざすものは、打倒ボウ、打倒ラガ。その夢は、いつかなうのか。
Pos. | Rider | 1Lap | 2Lap | Time | Total | Clean |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | アダム・ラガ | 10 | 11 | 0 | 21 | 21 |
2 | トニー・ボウ | 14 | 9 | 0 | 23 | 20 |
3 | 藤波貴久 | 22 | 14 | 0 | 36 | 18 |
4 | アルベルト・カベスタニー | 18 | 20 | 1 | 39 | 20 |
5 | ジェロニ・ファハルド | 23 | 18 | 0 | 41 | 18 |
6 | ドギー・ランプキン | 28 | 19 | 0 | 47 | 13 |
7 | マルク・フレイシャ | 34 | 13 | 0 | 47 | 11 |
8 | ジェイムス・ダビル | 38 | 24 | 0 | 62 | 10 |
9 | マイケル・ブラウン | 48 | 43 | 0 | 91 | 5 |
10 | ダニエル・オリベラス | 56 | 49 | 0 | 105 | 3 |
11 | ジェローム・ベシュン | 63 | 53 | 0 | 116 | 2 |
12 | シャウン・モリス | 63 | 54 | 0 | 117 | 1 |
13 | ダニエレ・マウリノ | 53 | 75 | 0 | 128 | 1 |
14 | カルステン・ストランコファ | 68 | 61 | 0 | 129 | 0 |
15 | ヘンリ・ヒマネン | 71 | 65 | 0 | 136 | 0 |
*今回は15名出場で、参戦した全員がポイントを獲得した。藤波を除いて5位までがスペイン人。以後10位までをイギリス人3人とスペイン人2人が占め、その後フランス、イギリス、イタリア、ドイツ、フィンランドがひとりずつという、国際色豊かなリザルトになってきている。ライダーの国籍はそれぞれだが、下位3名のチームはいずれもイタリアのチームである。
●ジュニアカップ
イギリス人にしてイタリアのFUTUREトライアルチームに所属するアレックス・ウイグが開幕2連勝。FUTUREは、昨年まで小川毅士が所属して世界選手権に参戦していたチームだ。2位サム・ハスラムもイギリス人だが、スコアはダブルスコアに近かった。今年のジュニアクラスにあっては、ウイグの実力は一歩抜きんでているようだ。
イギリスは、ランプキンのあと、若手ライダーが世界へ出て行かなくなって問題となっていたが、シャウン・モリス以降、ジュニアクラスで実力を蓄えるライダーが次々に現れている。ジェイムス・ダビル、マイケル・ブラウン。彼らはみな、世界選手権のポイントランカーとなっている。ウイグも、その流れに乗り、さらに先輩たちを乗り越えるべく、走り続けている。
ジュニアカップ
Pos. | Rider | Nation | Total |
---|---|---|---|
1 | アレックス・ウイグ | イギリス | 27 |
2 | サム・ハスラム | イギリス | 45 |
3 | アルフレッド・ゴメス | スペイン | 56 |
4 | ロリス・グビアン | フランス | 61 |
5 | マテオ・グラタローラ | イタリア | 62 |
6 | フレデリック・ヨハンソン | スウェーデン | 67 |
●ユース
トップ3はほぼ固まってきたか。今回の勝利者は、前回2位となったイギリスのジャック・シャロナー。これでわずかながらランキングトップにでた。
「まだまだ修業が必要」と師匠のジョルディ・タレスに言わせた前回の優勝者フランチェスク・モレットは、今回は3位。確実に表彰台に上がるところなど、大器の予感は大きい。
昨年戦列デビューをしたパトリック・スメージは今回は2位と一歩前進したが、トップ3の中では唯一勝利がない。スメージは、最終セクションでの5点が勝利を失う結果につながった。
スペインのもう一つの期待、ポウ・ボテラは今回4位で、これも前回5位から一歩前進。
なお今回は、土曜日にはヨーロッパ選手権が開催され、マイケル・ブラウンが勝利した。ユースクラスは、ヨーロッパ選手ではないアメリカ人のパトリック・スメージが勝利している。
ユースカップ
Pos. | Rider | Nation | Total |
---|---|---|---|
1 | ジャック・シャロナー | イギリス | 31 |
2 | パトリック・スメージ | アメリカ | 32 |
3 | フランチェスク・モレット | スペイン | 36 |
4 | ポウ・ボテラ | スペイン | 36 |
5 | アレッシャンドレ・フェラー | フランス | 37 |
6 | アドリアン・パストリザ | スペイン | 38 |