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藤波、アメリカで勝利!
4月26日、アメリカ合衆国テネシー州セクアッチで開催された世界選手権。ここは日本大会同様、土曜日と日曜日の2日間性だが、その土曜日、藤波貴久が見事優勝した。
1ラップ目にたった1点、ボウを3点リードして2ラップ目に入った藤波は、2ラップ目も8点でベストラップ。トータル9点で、ボウに7点、3位カベスタニーに19点の大差で勝利した。アダム・ラガは4位で、藤波はランキングポイントでラガと並んだ。藤波とランキングトップのボウとは4点差だ。
藤波の世界選手権勝利は、1年半ぶりだった。
藤波は、日曜日にはボウに続いて2位に入った。
土曜日の藤波は、絶好調だった。ここまでの開幕2戦、藤波は去年よりは格段に乗れている感触をつかんでいるものの、試合となると、細かいミスが積み重なって、勝利を逃すという展開が続いていた。自己評価としても、実力を出しきっての連続3位ではなく、まだまだ自分の実力は高いところにあると信じてのこの結果だから、はがゆい思いがあったことと思う。
その思いを一気に吹き飛ばすかのごとく、藤波のパーフェクトトライが続いた。ボウとラガの戦いに藤波がついていくという展開とは一転、今回は早い段階で、藤波がリードをとり、なんとかボウがついていく。ラガは大きく出遅れ、3位争いの流れはカベスタニーがとったが、カベスタニーのスコアもトップ2からは大きく遅れていた。
テネシー州セクアッチでのアメリカ大会は今回が2度目。来年はまた別の会場に移ることが決定しているが、ここは沢のセクションが中心ながら、自然のままの地形を生かしたセクション設定で、ライダーにも評判がいい。特にこういう地形を好む藤波にとっては絶好の条件だったといってもいい。
トップライダーの多くを振るい落としたのが第4セクション。ここでは藤波とボウが1点で通過して、他は5点が多数。ここで最初のアドバンテージを取った藤波は、なんとそのまま、残る1ラップ目をすべてクリーンして駆け抜けた。スコアは、たったの1点。2位のボウは4点だったから、わずか3点ではあるが、その差は小さくない。さらに3位のカベスタニーは14点と、このギャップも大きい。
2ラップ目に入って、藤波はやや減点を増やしたが、それでもラガと並んで2ラップ目のベストスコアをマーク(正しくは、ラガの方がクリーン数が多いけど)。ボウをさらに突き放して、今シーズン初優勝。そして1年半ぶりの勝利を決めた。
どうしてもトップ争いに食い込まなければいけないラガは、1ラップ目に22点と大きく出遅れて(それでも4位だったが)、2ラップ目にベストラップの8点をマークして追い上げたものの、カベスタニーに2点届かず、4位に甘んじた。ここまでの3戦、ボウは1位と2位ばかり、藤波は1位1回、3位2回。ふたりとも、表彰台を外していない。対してラガは今回初めて表彰台を外してしまった。これが今後の選手権争いにどんな影響を見せるようになるのか。ランキングポイントでは、優勝した藤波に並ばれている。
翌日曜日は、朝から雨が降っていた。藤波がラップ1点で回ってしまったため、セクション難度も少し高められ、雨も相まってだいぶむずかしめ。かわいそうに、マイケル・ブラウン(イギリス・ベータ)は15セクション2ラップをすべて5点で終えるという結果になってしまった。
この日も、藤波は好調をキープした。第2セクションは、藤波とボウ以外のすべてのライダーがトライを断念してエスケープしてしまうという難所だったが(土曜日は、クリーンの多いセクションだった)、藤波はここを1点で抜けていった。ボウはクリーンで、一瞬ボウがリードをとるも、第3セクションでボウが5点、再び藤波のリードで試合が進んだ。さらに前日同様の難所となった第4セクションでは、藤波以外の全ライダーが5点となるという展開で、1ラップ中盤にして、藤波の勝利は揺るぎないという感じになっていた。
ところが急展開。13セクションで、藤波は最後の最後まで1点で走り進んでいながら、あと数秒足らずにタイムオーバーで5点になってしまった。これが尾を引いたか、次の14セクションでも失敗。この2セクションだけで、ボウに対して一気に9点点差を縮められている。それまで10点あった点差が、たったの1点リードとなって、1ラップ目は終了した。
それでも、トップを守っているのは藤波だった。だが、勢いはボウのものになっていた。藤波のみが上がれていた第4セクションでも、ボウが上がってきた。第7セクションでは、藤波はまたもタイムオーバーで5点となった。2ラップ目は、それほど悪い内容ではなかったのだが、ボウの勢いは、藤波のそれをさらに上回っていた。2ラップ目のボウは、藤波を6点上回って帰ってきた。トータルで、5点差でのボウの勝利だった。1ラップ目の13、14セクションでの5点ふたつが、藤波の2連勝の夢を奪っていった。久々の勝利だったが、藤波のアメリカは、ちょっとくやしい思い出となったようだ。
ただ、これでランキング上はラガを逆転して2位に浮上。ラガには2点差、そしてトップのボウには7点差と、チャンピオンシップの主役の座をがっちりキープした。次はいよいよ、日本での2連戦だ。
今回、土曜日の3位は、カベスタニーが入った。ボウ、藤波、ラガ以外のライダーが表彰台にたつのは今年はこれが初めて。世界選手権を制するには、一戦一戦での勝利はもちろんだが、表彰台を外さずに試合をこなしていく技術も必要になる。ラガの今回の4位は、今後の展開に微妙な影を落とすことになるかもしれない。
一方、インドアトライアルでの活躍ほどアウトドアでは本領を発揮できないでいる4ストローク乗りになったカベスタニー。今回の3位はステップアップの一段階となるはずだが、翌日の日曜日には7位までドロップ。ライディングの実力的には、カベスタニーはトップ3と並ぶものを持っているが、試合の強さとなると、まだまだトップ3とは開きがあるのは否めない。
今回は、総勢10名が世界選手権クラスに参加。ヨーロッパから遠いラウンドは参加者が集まらない悩みはあるが、集まった10人は、それぞれに自分のポジションをつかもうと必死だ。ジェロニ・ファハルドは日曜日に今シーズン初めて4位を獲得。ファハルドのチームメイトでもあるドギー・ランプキンは、開幕戦の4位から順位を下げ続け、ついに日曜日には8位までドロップした。あと1勝で100勝の大記録に乗るランプキンだが、雨の降るナチュラルセクションでこの成績だと、夢の達成はむずかしそうだ。
ランプキンやファハルドと戦って、今回両日ともに5位に入ったのがマルク・フレイシャ。モンテッサからスコルパ、シーズン途中にベータ、さらにスコルパと移籍を繰り返して、今シーズンガスガスに戻ってきたフレイシャが、ようやく実力の片鱗を見せはじめたというところ。絶頂期のフレイシャは、2日制の大会で両日制覇をしたこともあるほどのポテンシャルを持っていた。最近は環境が変化しすぎて落ち着けない模様だが、トップ3にも食い込む活躍を見せてくれるかどうか、今後が注目だ。
ジェイムス・ダビルは土曜日は8位と指定席に甘んじたが、日曜日は6位と大活躍。ランプキンやカベスタニーを破ってのこの成績は、さぞ自信につながったことだろう。9位オリベラス、10位ブラウンはこのメンバーでは最下位争いはしかたなしというところ。それにしても、雨のこのコンディションで、ランプキンとブラウンがそろって順位をさげているのはちょっと不思議。
土曜日 | ||||||
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Pos. | Rider | 1Lap | 2Lap | Time | Total | Clean |
1 | 藤波貴久 | 1 | 8 | 0 | 9 | 26 |
2 | トニー・ボウ | 4 | 12 | 0 | 16 | 23 |
3 | アルベルト・カベスタニー | 14 | 14 | 0 | 28 | 18 |
4 | アダム・ラガ | 22 | 8 | 0 | 30 | 22 |
5 | マルク・フレイシャ | 23 | 13 | 1 | 37 | 16 |
6 | ジェロニ・ファハルド | 26 | 12 | 0 | 38 | 17 |
7 | ドギー・ランプキン | 26 | 19 | 0 | 45 | 14 |
8 | ジェイムス・ダビル | 39 | 32 | 2 | 73 | 13 |
9 | ダニエル・オリベラス | 56 | 36 | 1 | 95 | 6 |
10 | マイケル・ブラウン | 48 | 61 | 2 | 111 | 5 |
日曜日 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
Pos. | Rider | 1Lap | 2Lap | Time | Total | Clean |
1 | トニー・ボウ | 23 | 10 | 0 | 33 | 19 |
2 | 藤波貴久 | 22 | 16 | 0 | 38 | 16 |
3 | アダム・ラガ | 33 | 21 | 0 | 54 | 17 |
4 | ジェロニ・ファハルド | 39 | 35 | 0 | 74 | 6 |
5 | マルク・フレイシャ | 41 | 33 | 0 | 74 | 6 |
6 | ジェイムス・ダビル | 36 | 37 | 0 | 76 | 7 |
7 | アルベルト・カベスタニー | 41 | 36 | 0 | 79 | 8 |
8 | ドギー・ランプキン | 41 | 38 | 0 | 79 | 8 |
9 | ダニエル・オリベラス | 67 | 50 | 0 | 117 | 3 |
10 | マイケル・ブラウン | 75 | 75 | 0 | 150 | 0 |
●ジュニアカップ
圧勝を続けていたアレックス・ウイグがつまずいた。勝てなかったばかりでなく、表彰台を大きく外してしまった。勝ったのは両日ともロリス・グビアン。フランス人で、TY-S125Fをヨーロッパ選手権で勝利に導いたこともある逸材で、ユースカップでもチャンピオン候補だったが、勢いがシーズンを通じて続かなかった。今年も序盤戦は地味なリザルトを残してしまったが、ここへきての2連勝は、今シーズンの活躍に多いにはずみがつくリザルトだ。
日曜日はウイグも2位まで復活。前半4戦を終了して、ランキングトップはキープしているが、グビアンに4点差まで迫られている。ウイグとグビアンが2勝ずつということで、前半のウイグ優勢から一転、ジュニアカップのシリーズの闘いもまた、おもしろくなってきた。
ジュニアカップ
土曜日 | |||
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Pos. | Rider | Nation | Total |
1 | ロリス・グビアン | フランス | 35 |
2 | ロス・ダンビー | イギリス | 45 |
3 | マテオ・グラタローラ | イタリア | 46 |
4 | サム・ハスラム | イギリス | 49 |
5 | アレックス・ウイグ | イギリス | 52 |
6 | アルフレッド・ゴメス | スペイン | 52 |
日曜日 | |||
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Pos. | Rider | Nation | Total |
1 | ロリス・グビアン | フランス | 56 |
2 | アレックス・ウイグ | イギリス | 59 |
3 | サム・ハスラム | イギリス | 67 |
4 | ロス・ダンビー | イギリス | 77 |
5 | ジラーム・ラニエル | フランス | 78 |
6 | アルフレッド・ゴメス | スペイン | 79 |
●ユース
地元アメリカで、パトリック・スメイジ(シェルコ・アメリカ)が今シーズンようやく1勝目を挙げた。昨シーズンの実績からすると、チャンピオン街道まっしぐらかと思いきや、意外に苦戦中のスメイジだ。2日目も3位に甘んじてしまった。
土曜日に2位、日曜日に優勝して選手権もリードしているのはジャック・シャロナー(ベータ・イギリス)。優勝2回、2位2回で、ランキング2位のスメイジに7点差をつけている。
チームタレスの注目株フランチェスク・モレットは、両日ともに6位に沈んだ。まだまだ修業中。
ユースカップ
土曜日 | |||
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Pos. | Rider | Nation | Total |
1 | パトリック・スメージ | アメリカ | 6 |
2 | ジャック・シャロナー | イギリス | 6 |
3 | アレッシャンドレ・フェラー | フランス | 17 |
4 | ポウ・ボテラ | スペイン | 20 |
5 | ベノー・ダニコート | フランス | 22 |
3 | フランチェスク・モレット | スペイン | 24 |
日曜日 | |||
---|---|---|---|
Pos. | Rider | Nation | Total |
1 | ジャック・シャロナー | イギリス | 19 |
2 | アドリアン・パストリザ | スペイン | 24 |
3 | パトリック・スメージ | アメリカ | 26 |
4 | ベノー・ダニコート | フランス | 49 |
5 | アレッシャンドレ・フェラー | フランス | 54 |
6 | フランチェスク・モレット | スペイン | 57 |