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世界選手権第3戦アメリカ
FIM世界選手権トライアル第3戦アメリカラウンドは、1日目(5月20日・土)、2日目(5月21日・日)の2日間に渡って開催された。今シーズン、2日制で開催されるのはアメリカと日本のみ。
結果はラガが2連勝。開幕2連戦で連続2位に終わった鬱憤を一気に晴らし、ランキングでも抜きんでたかたちとなり、2年連続タイトルに加速している。
指の骨折が癒えた藤波は6位と5位に低迷し、タイトル奪還には黄信号がともっている。
【土曜日】
アメリカ大会は、ここ数年北部のダルースで開催されていたが、今回はテネシーのセクアチが会場。アメリカの北と南だが、川を主体にしたダイナミックな構成はやはりアメリカならではだ。このエリアは、トライアルズ・トレーニング・センターというトライアルスクールの舞台となっている。いわばトライアル場での世界選手権だが、その広大さは、日本のトライアル場の比ではない。山いくつもが、まるごとトライアル場だ。
セクションとしてはナチュラルで、とても高レベル。セクションの大半が小さな小川に設けられていて、岩は大きく滑りやすく、周囲は森に囲まれている。木の根もまた滑りやすい、おまけに岩の表面には苔もびっしり。ライダーを陥れようとするにはこれ以上ない舞台だ。
それにしても、世界選手権クラスがたった10名の参加というのはどうしたことだろう。ヨーロッパから遠いアメリカというロケーションの問題もあるのだが、トップレベルへの参加が減少している傾向は憂慮しなければいけない。
難セクションは、第1セクションから始まった。出口に至る最後の登りは、ラガ、ファハルド、ボウのみが登頂に成功した。されどボウとファハルドは第2セクションで5点をとってしまい、試合序盤にしてラガのリードが確実になってきた。ラガの大きな失点は第9セクションの5点だが、ここも5点の多い難セクションだから、ラガの優位には変わりがなかった。ここでは、この難関をクリーンしたボウの活躍が称賛されるべきだ。
1ラップが終わって、トップはラガで12点。1点差でボウ。さらにボウから4点差の17点でランプキン。この4点差で藤波が続いていた。
2ラップ目、トップ争いはラガとボウによって競われていた。第3セクションでボウが5点になったのを見ると、ラガは少し余裕を持ってトライに望めるようになったが、しかし再び第9で5点。今度はここを1点で抜けたランプキンがラガを脅かす存在になってきた。
しかしラガはその後のセクションをすべてクリーン。ランプキンの追撃も振り切って、チャンピオンとして初めての勝利を獲得した。
今回は序盤のセクションに難関が集まっていたため、タイムオーバーのリスクがとても高かった。ボウが3分、カベスタニーが1分(1ラップ目)、そして藤波が3分。藤波は、タイムオーバーがなければカベスタニーとの順位を入れ替えているはずだった。指の負傷はほぼ癒えたが、指が使えなかった第1戦と同じ6位。藤波には、痛いアメリカ大会となってしまった。
今回、タデウス・ブラズシアクがスコルパ4ストロークを世界選手権にデビューさせた。結果は10位だったが、10人しか参加がなかったので最下位になってしまったというべきか、10人だから10位で踏みとどまったというべきか、新しいマシンをデビューさせるのは、苦しいものがある。評価はいろいろあるだろうが、全日本、SSDT、世界選手権と、スコルパ4ストロークは善戦しているといっていい。
土曜日の観客は3000人。気温華氏85度。非常に暑く湿度が高かった。
【日曜日】
再びラガ。圧倒的に強いラガが、再び帰ってきた。第1戦第2戦と、手堅く2位を守ったが、勝利を狙える走りではなく、チャンピオンを守る走りに変貌したかに見えたラガだったが、アメリカでは果敢で華麗なラガに戻っていた。
土曜日も日曜日も、試合前のくらいうちに雨が降り、試合中は晴れ上がるという天候で、試合中は蒸し暑く、コンディションも塗れた泥でよく滑った。それで9つのセクションが土曜日よりもやさしく設定されなおしたのだが、コンディションは日曜日のほうがより過酷だった。
こんなロケーションでは、ランプキンの豊富な経験に裏打ちされたライディングが光っていた。足つきを有効に活用し、マスンを確実に進めていく。土曜日に2位となったランプキンは、ラガといっしょに最後にセクションを訪れる。一方土曜日に6位となった藤波は、ラガより12分も早いスタートを与えられて、彼らとは別の次元のトライアルを強いられていた。観客は、藤波の果敢なトライに目を奪われ熱狂するが、その10分後にやって来るラガやランプキンは、さらに精度の高い、あるいはまったく別のラインを試みて、さらに好成績を残していくのだった。
今年、世界選手権のスタート順は昨年とは変わっている。昨年までは、参加ライダーをいくつかのグループに分け(トップ6、世界選手権でポイントのある者、前年にポイントのある者、それ以外の者、ジュニア、ユースなど)それぞれのグループごとにくじを引いていた。今年はグループごとは変わりないが、ランキング順に固定されて順番がローテーションしていく、いわばインドア世界選手権で採用された方式がとられている。去年まではくじ運が強ければ試合前に優位に立てていたが、今年は誰もが等しくラッキーもアンラッキーも負担するということになった(とはいえ、時間に厳しい大会であとのほうのスタート順ならおおいにラッキーだし、逆ならアンラッキー。同じ15セクション2ラップでも、時間に余裕のある大会もあるから、この制度が一概に“公平”ともいえない)。
ただし2日目については、1日目の順位でスタート順が決まる。2日制の大会では、1日目によい順位を獲得しておかないと、2日目にさらによい順位をねらえないということになる。この逆パターンを実践してしまったのが、藤波だった。藤波はほとんどのセクションで、だれも走破していないバージンセクションを走ることになった。ラガやランプキンの攻略法を見ることもなく、トップ争いとはほど遠い戦いだったのだ。しかしそれも、1日目の6位という成績がもたらした結果だった。
1ラップ、それでもラガはトップを守った。ラガ15点、ランプキン19点。ファハルドがランプキンを追う20点で回ってきた。
ところが2ラップ目、ラガが驚異の走りを見せた。唯一第9セクションを5点で終えた他は、1点がふたつと2点がひとつ。ライバルがみな20点以上の失点をしていることを考えると、ラップ9点は尋常ではない。滑りやすい難セクションでのラガの勝利は“ドライのラガ”の印象を完全に払拭した。
2位以下は接戦だった。2位のランプキンから5位の藤波までが8点の中にいた。この戦いの覇者はランプキン、ファハルドががんばり、藤波はカベスタニーに敗れた。今回の藤波は、さんざんだった。
それでも、藤波はあきらめない。そこが、何より力強い。
■結果表■
世界選手権
順位 | ライダー | 1ラップ | 2ラップ | タイム オーバー |
総減点 | クリーン |
---|---|---|---|---|---|---|
土曜日 | ||||||
1位 | ラガ | 12 | 6 | 0 | 18 | 24 |
2位 | ランプキン | 17 | 7 | 0 | 24 | 18 |
3位 | ボウ | 13 | 15 | 3 | 31 | 17 |
4位 | ファハルド | 22 | 19 | 0 | 41 | 14 |
5位 | カベスタニー | 33 | 13 | 1 | 47 | 17 |
6位 | 藤波貴久 | 21 | 25 | 3 | 49 | 15 |
7位 | フレイシャ | 32 | 20 | 0 | 52 | 13 |
8位 | ダビル | 45 | 38 | 0 | 83 | 6 |
9位 | モリス | 57 | 41 | 0 | 98 | 3 |
10位 | ブラズシアク | 60 | 58 | 0 | 118 | 1 |
日曜日 | ||||||
1位 | ラガ | 15 | 9 | 0 | 24 | 22 |
2位 | ランプキン | 19 | 22 | 0 | 41 | 15 |
3位 | ファハルド | 20 | 26 | 0 | 46 | 12 |
4位 | カベスタニー | 28 | 20 | 0 | 48 | 12 |
5位 | 藤波貴久 | 29 | 20 | 0 | 49 | 12 |
6位 | ボウ | 36 | 21 | 1 | 58 | 13 |
7位 | フレイシャ | 36 | 41 | 0 | 77 | 9 |
8位 | ダビル | 47 | 32 | 0 | 79 | 8 |
9位 | モリス | 56 | 42 | 0 | 98 | 5 |
10位 | ブラズシアク | 57 | 64 | 0 | 121 | 3 |
ジュニア
土曜日 | |
---|---|
1位 | オリベラス |
2位 | ジベール |
3位 | ブラウン |
日曜日 | |
1位 | ブラウン |
2位 | ジベール |
3位 | オリベラス |
ユース
土曜日 | |
---|---|
1位 | ウイグ |
2位 | ハスラム |
3位 | ゴメス |
8位 | グビアン |
日曜日 | |
1位 | ウイグ |
2位 | グビアン |
3位 | グラッタローラ |