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女性トライアル・デ・ナシオン
女性世界選手権最終戦の翌日、女性トライアル・デ・ナシオンが開催。トップから5位までが接戦を繰り広げた結果、優勝はイギリス。2位スペイン、3位ドイツとなった。日本は惜しくも4位で表彰台を逃した。地元フランスは5位。
序盤は、イギリスとドイツが苦戦していた。第3セクションの大岩を登れなかったからだ。まだ序盤ながら、この時点ではイギリスとドイツは11点、スペインと日本が8点、フランスが5点。フランスチームはこの会場を走り慣れているのだろうが、組織の力も大きい。クレイル・ベルトランは毎年参加しているが、マリリン・ジュルネは2年目、サンドリーネ・ジュフィは今年が初めての選手だ。しかもジュフィは個人戦でもめきめきと頭角を現している。フランス国内で選手の開拓が進んでいることの現れだ。
しかし、フランス娘は気性が激しくて落ち込んだときの崩れ方も大きいのが特徴。今回もラップ中盤から減点を増やしていって、1ラップが終わったところでは4位となっていた。
好調だったのはスペインだ。ライアはほぼオールクリーンで試合を進めていく(第9セクションのスペインのスコアが4点になっているから、ここでは失点があったのがわかる)。つまりスペインのスコアはカルデラの減点にイコール。ナンバーワンライダーが確実にクリーンしてくれるのは、心強い。
日本も、萩原真理子がライア役。好調にクリーンを重ねていく。一方西村亜弥は、ちょっと本調子ではない。登りきれずにマシンから降りてしまったりカードを飛ばしたりの不本意な減点がいくつかあった。
ドイツは、クリーン役をイリス・クラマーが務めるはずだが、しかしこれがあんまりピリッとしない。3人とも5点の10点という満点スコアはスペインと日本にはひとつもない。イギリスとフランスにはひとつずつの10点がある。ドイツには、10点がふたつある。ドイツの苦戦が明らかだった。しかし、苦境に立たされてからの踏ん張りが、ドイツは強い。かつても、苦戦から勝利を得たことがあった。
それにしても、今回のTDNは接戦だ。1ラップ目が終わって、トップはスペインの32点、2位はイギリスの36点、以下、3位日本37点、フランス38点、ドイツ39点と1点刻みで並んでいる。スペインはカルデラの調子次第で動向が大きく動くから、トップ5は事実上横並びという感じだ。勝負は大雨の2ラップ目にかけられることになった。
雨となると、強い国がある。イギリスだ。イギリス人の雨の強さは世界選手権でも定評があるが、それは女性でも同じ。イギリス女性は、みなSSDTに参戦してすいすい完走する強者ばかり。彼女らに言わせると「雨が強くなって泥が洗われたから、2ラップ目はコンディションがよかった。スコアがよくなったのはそのせいよっ」てなもんだ。イギリスの2ラップ目のスコアは、1ラップ目の36点に対して23点だった。
スペインも、スコアを縮めてきた。カルラ・カルデラも、落ち込むとどんどん崩れていくタイプのライダーだが、先にクリーンしたライダーが、カルデラにマインダーよろしくせっせと指示を出して、気分を盛りあげる。ライアは、ライダーとマインダーのひとり二役でスペインチームを引っ張った。
ドイツも負けてはいない。イギリスほどではないが、コンディションがよくなったセクション群は、イギリスの気運を盛りあげた。
こんな中、日本とフランスは、1ラップ目のスコアを超えられない。日本は1ラップ目とは反対に、真理子のミスが目立ってきた。チームの雰囲気的には、ふたりがそれぞれミスを補い、さらに高橋摩耶のクリーンがチームに貢献したりして、悪くないのだが、ライバルが大幅に減点を減らしている中でのことだから、ちょっと苦しい。
フランスは、2ラップ目に唯一の10点減点をとってしまった。トップ5チームの中では、2ラップ目に減点10をとったのはフランスだけだ。
結果、3点差でイギリスが2002年に続いて2勝目を挙げた。スペインは1ラップ目の2位から後退となったが、たったふたりで2位は立派。3位ドイツも、1ラップ目の5位からジャップアップしての表彰台獲得だった。
日本は、7点差で残念ながら表彰台を逃してしまった。フランスは日本に2点差で5位。地元大会だけに、フランス陣営のくやしさもひとしお。フランスオブザーバーはフランス人に甘いというのは定説になっているが、今回はフランス人にも厳しいセクションがいくつかあって、5位はその結果かもしれない。
雨がイギリスに味方をしたともいえるが、結果を見れば、1位から5位までが優勝する実力を持ったチームということになる。男性以上に、女性陣は層が厚いといえるのか。トップグループの中では、ノルウェーが実力を落としてきているのがちょっと残念。5強に加わる6カ国目は再びノルウェーかアメリカか、また5強の中から一歩抜け出すのは、はたして?
1年に1回の戦いだから、チーム力、国力が問われる。女性の闘いは、たいへんにし烈だ。