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世界の移籍、まだまだ
ボウ、ファハルドと大物移籍が続いた世界のトライアルだが、まだこれで終わりではなかった。
ポーランド人のタデウス・ブラズシアクがスコルパからベータに電撃移籍、さらにマルク・フレイシャがベータからスコルパに、ちょうど両者がスイッチするようなスタイルでの移籍が決定していた。
このふたり、フレイシャは2005年までモンテッサチームに所属し、何回もの優勝を飾り、ランキング3位まで上り詰めたトップライダーだ。ブラズシアクの方は、最近成長著しいが、ただひとりのポーランド人ということで目に見えないハンディも大きかろう。ガスガスから一躍スコルパのナンバーワンライダーとなった2006年は、それでもランキング8位と、過去最高の成績を残している。
フレイシャといえば、2006年シーズン当初、スコルパ2ストロークとともに世界選手権に登場したが、2戦を走ったところで突然のベータへの移籍を敢行した。マシンの仕上がり時期や体制面での不安が理由と伝えられたが、もともと2006年のフレイシャはスコルパともベータともメーカーとのダイレクトの契約ではなく、間にスペインのフェデレーションチームが入るという変則的なもの。ちょっと小振りなパワフルなスペイン人は、なぜか2006年になって急に、マシンに恵まれなくなってしまった。2005年に4ストロークモデルに乗り換えたモンテッサ三人衆のうち、ランキングを大きく落としてしまったのがフレイシャだった。藤波とランプキンはひとつずつランキングが下降したが、3番から6番にランキングを落としたフレイシャは、ちょっと下降しすぎだったという評価だったのかもしれない。
一方、ランキング11位となったブラズシアクの方は、まだまだトップグループを狙えるところまでは至っていないが、成長が見込める若手ライダーだ。はるばるポーランドから出てきただけあって、人懐っこさも備えている。スコルパは、2005年シーズンにようやく大型トラックを導入して、本格的なファクトリー活動の準備を整えていた。これまでガスガスにいながら、ワークス活動の中枢からははずれていたブラズシアクが、本格的に主役になったのが、2006年シーズンだったのかもしれない。
06シーズンは、参加者の減少という背景もあったかもしれないが、タデウスは大きな飛躍をした。3戦目からはフレイシャがベータに移籍してしまって、スコルパのパドックはブラズシアク専用となった。しかも夏からは、元世界チャンピオンマルク・コロメがスコルパ入りをしてきた。コロメは4ストロークマシンを仕上げるためにスコルパへやってきたが、同時にブラズシアクをよりトップクラスのライダーに押し上げるのも仕事。ハード面もソフト面も、ブラズシアクの周囲は整ってきた。
そして2007年、ブラズシアクはインドア世界選手権の常連ワイルドカードライダーに選ばれた。トップ5人は完全なノミネートライダーで、常連のワイルドカード(ワイルドカードじゃないじゃないかというつっこみもあろうが)はファハルドとブラズシアクの二人。FIMの思惑では、トップ5人とはちがうマシンメーカーからひとりずつを選出したかったらしい。ふたりは、ベータとスコルパのトップライダーだったのだ。
ところが年が明けて話が一転、ブラズシアクはスコルパからベータへの移籍となった。チームはトップ・トライアルチーム。去年、ジェイムス・ダビルが活躍したチームで、07年はマイケル・ブラウンが飛躍を狙っている。もともとこのチームはチェコのマルティン・クロウステックら、イタリア以外のライダーを多く受け入れているから、タデウスにも住み心地はいいのかもしれない。
ともあれ、タデウスがベータに移り、そのトレードのようなかたちで、フレイシャがスコルパに再移籍した。同じようにスコルパ入りをしながら、06年シーズンは別々の道を歩んだ二人。07年シーズンは、それぞれにどんな運命が待ち受けているのだろうか。