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トニー・ボウの契約更改とこれまで

12月21日、レプソルHondaチームがトニー・ボウとの契約を更改したと発表した。2027年までの4年契約でという。

2023桒田氏とトニー・ボウ契約を更改したボウと、レース運営を司るHRCの桒田哲宏氏

過去、ボウとホンダとの契約はどうだったのかなと調べてみたら、最初の契約が2006年(ベータから移籍)、その次に自然山通信がニュースにしたのが2010年(10月)だけど、2010年は2年契約だから、2008年にも契約更改をしていると思われる。もしかすると、2006年初年度は1年契約だったのかもしれない。

2012年7月にも2年契約で契約更改し、2014年6月には2015年からの4年契約をしたとなっている。これで2018年まで契約がかたまったことになるが、2017年9月に3年契約をしている。チームリリースを確認できたのでまちがいはないんだけど、なにか変更する必要があったのだと思われる。

2021年1月にも3年契約、2023年までのチームが固まった。この間に藤波が引退し監督就任、ガブリエル・マルセリがチーム入りするなど、チームにも変遷があった。そして今回の4年契約につながっている。

ボウがチーム入りして初タイトルを獲得したのは2007年だから、2027年まで契約が決まったということは、21年にわたってチームとの関係が続くことになる。そして、これはまだ未知数だけど、そのすべてでチャンピオンを獲得する可能性もある。ただボウ自身が、自分のキャリアをこのチームで終えたいと語っているあたり、ライバルの成長次第では、新たな契約期間の間に世代が入れ替わることも想定に入っているのかもしれない。

20年以上にわたってトップカテゴリーで戦う選手となるのは簡単ではない。現役ではアダム・ラガだけとなる。ただしラガは2024年シーズンの動向がまだ決まっておらず、途中でマシンが変わっている。20年にわたってチーム・マシンが(基本的に)変わっていない記録(そんな記録は別にないと思われるが)藤波貴久がまだキープしている。藤波は26年に及ぶ自身の世界選手権をすべてホンダ・モンテッサチームで戦った(FIMの記録では、マシンが途中でホンダからモンテッサに変わっているのだが、これはマシンそのものやチームが変わったわけではない)。

ボウは、モンテッサチーム入りをする前、4年間ベータに乗っていた時期がある。初年度はランキング13位、2年目が9位、3年目、4年目が5位と、ここまでのランキング上昇率は藤波のデビュー当時に負けているが、5年目にモンテッサ入りするやそこから負け知らずだ。

ただしボウは、2005年にXトライアルデビューを果たしてランキング7位、2006年には全戦参加して2度勝利してランキング3位を得ている。この時点で、Xトライアルのタイトルは翌年にでもボウのものになるという予測は固まっていた。しかしアウトドアまで一気にものにすると確信していた人は、当の本人以外は多くなかったにちがいない。

インドアはライダーのテクニックが結果に直結する。2006年から2023年、ボウが覇権をとった17年間、ライバルとして最も君臨したのはラガ(15回のランキング2位)だが、Xトライアルになるとラガが9回のランキング2位に対して、アルベルト・カベスタニー(現ガスガスチームのマネージャー)も5回のランキング2位を果たしている。カベスタニーがラガを越えてボウに肉薄していた時代もあったが、アウトドアでは試合運びに長けていたラガを破れないばかりか、この17年間、カベスタニーがランキング3位に入ったのは1回だけだった。

ボウが残した記録は、アウトドアの世界タイトル17、インドア(Xトライアル)の世界タイトル17、アウトドア・インドア合わせて221勝(アウトドア143勝うち2勝がベータによるもの、インドア78勝うち2勝がベータによるもの)。

この他、同じメーカーのライダーの成績をトータルして優劣を競うマニュファクチャラータイトルは、ボウがタイトルを獲得している17年間のうち15年でタイトルを獲得している(メーカータイトルは、現在ではGPとT2のポイントを合計している。過去はGPのみで計算したりしていた)。

■トニー・ボウのコメント

レプソルHondaチームとの4年間の契約延長はとてもうれしい。チームがぼくを信頼してくれていることに、たいへん感謝だ。常々、ぼくはライダーとしてのキャリアをこのチームで終えたいと言ってきた。それは今も変わらない。ぼくのタイトルは、常にこのチームとともに獲得したもので、チームは家族だ。これからもこのチームと一緒に、キャリアを続ける限り、全力で臨んで、完璧な戦いを続けたいと思っている。これまでも、描いてきた以上の結果を残してきた。これからもさらに大きな成果を残せるようにがんばりたい。

■HRC代表取締役社長・渡辺康治氏のコメント

34もの世界タイトルを連覇によって獲得したトニー・ボウと、2027年まで契約を延長できたのは、たいへんうれしいことです。34回のタイトルはものすごい偉業ですが、そもそも1回でもチャンピオンになるのがむずかしいことです。これだけ長い間タイトルをとりつづけていられるのは技術力、体力、そして勝利への強い意志と精神力が、とても高い次元で維持されているからだと思います。HRCは、彼がチャンピオン獲得を続けられるよう、バイクやチーム運営など、あらゆる面でサポートを続けていきたいと思っています。