8月19日、バイクの日。東京秋葉原でバイクの日にまつわるイベントがあった。レーシングマシンの展示や新型車にまたがれるコーナーなどが人気だったが、その場で実感できるモータースポーツとしてはやっぱりトライアル。黒山健一によるデモンストレーションは、初めてトライアルデモを見る人、通りすがりの人々をも巻き込んで、なかなかの盛り上がりだった。

デモの舞台は、トークショーなどが行なわれるステージ。いつものデモに比べると、会場としてはぐっと狭い。へたっぴがその舞台に乗せられたら、Uターンすらこなしきれずに舞台から落っこちしてしまうんじゃないか、くらいのスペースだ。そこできっちりお客さんの心をつかむライディングを披露できる黒山健一は、さすが今乗りに乗っているトップライダーだけのことはある。
デモの合間をぬって、ちょっとだけ黒山健一と話をさせてもらった。
「全日本、現時点ではランキング1位だし、ぼくにしては珍しく、ポイント差も2位に差をつけているし、一番のライバルであった小川さんがケガして、今シーズンはもう出ないということになりました。小川さんがいなくなっても、氏川政哉という若いライバルもいるんですが、こちらについても現時点ではぼくの方が有利というか分があるんですね。だから、けっこうみなさんから、おめでとうとか、このままいったらチャンピオンだねっていう言葉を受けるんですけども、ぼくの中ではもうそれは一切聞いてません。後半戦に突入というより、今から第2のシーズンが始まる気持ちぐらいで臨まないと、たぶん負けてしまうぞぐらいに考えています」
「その一つとしては、かつてはチャンピオン争いをしていましたけど、ここ最近、ちゃんとチャンピオン争いをしてないんです。去年は運よく東北大会の時にランキングトップに出て、でも成績が良くなくてシティトライアルで小川さんと勝負することになったので、久々にチャンピオン争いをちょっとしたんですけども、でもほぼしてないに等しいんです。そう考えた時に、久しぶりに味わうチャンピオン争いの雰囲気。チャンピオンを取るか取らないか、ポイントリーダーのプライドと意地、そういうのがぼくの中では古い遠い記憶の中から呼び戻ってきて、ちょっと緊張しているとは思います」

「2つ目に、ぼくの長いトライアル人生の中で、小川さんがいない試合を走るのが、これもほぼ初めてなんです。最近では、2018年とか19年に、ぼくがトライアルEのクラスで全日本を1戦休んで世界選手権に出に行ったことがあったので、小川さんはたった1戦だけだけど、ぼくなしで走った経験があるんです。でも今回に関しては、ケガという形で小川さんが出なくなったので、残り4戦、小川さんがいない状況で走るんです。もちろん、小川さんがいないのはぼくのトライアルにはまったく関係ない話だし、それを意識する必要はまったくないですし、いざ実際試合が始まってしまえば、そんなことは何も気にしないんですけど、ただ始まる前、スタートする前までは、ちょっと意識の中に出てくると思うんですよね。それは、寂しいとか、張り合いがないとか、というより、今までずっと、試合中に自分の視界に入っていた人がいないという意味合いで、ぼくの中でもちょっと今までとはちがう感覚の試合になるんだろうな、と今の時点で考えています。これが吉と出るか、凶と出るかは分からないですね。でもまちがいなく小川さんがいない。小川さんは会場には来るだろうし、いないわけではないけども、ライダー小川友幸としていないから、そこを自分の中でどう処理して、どういうふうに自分のモチベーションとして、あとはプレッシャーを跳ねのけるという形でライディングに表現できるかなというのが、今のぼくの課題ではあります」
「小川友幸がいない、というのは、氏川政哉や野崎史高では張り合いとか、そういうことではいっさい関係なくて、やっぱりもう本当に、小学校の自転車時代からずっといっしょにやってきて、ぼくが出る試合は常に小川さんがいるっていう、間、小川さんが世界選手権から退いた10年弱は小川さん抜きで世界選手権を走ってましたけど、基本的にぼくが出る試合には小川友幸がいる。こういう試合をずっとやってきた。たぶん約35年とかやってきているわけです。それがこの後半戦の4戦、初めて。小川さんのいない全日本を走るわけです。そんなわけで小川さんが試合にいないのは、ぼくの中ではいろんな感情が渦巻いている認識を持っています。もちろんここで負けて、小川さんがいないせいや、とかって、無様な言い訳は絶対しないですけども、小川さんがいてもいなくても同じようなライディングができるようにしたいなとは思いますし、見てくれるファンの皆さんには、小川さんがいなければ、けんちゃんに勝てる選手はいないな、けんちゃんを脅かす存在は小川さんしかいないね、と言ってもらえるくらい、ぼくの走りをちゃんと表現したいなとは思っています」

「トラブルのリスクですか? これはぼくというよりヤマハ的な問題ですけども、新しい、今、ぼくと氏川政哉が乗ってるTYE3.0は、この夏、初めての夏を体験してるんです。思い起こせば去年の秋の東北大会でぼくが3.0を出して、もうひとつ時期が早かったというので、シティトライアルは2.2で走って、シーズンオフに3.0を仕上げて、今年の開幕戦からぼくと氏川が2人で3.0に乗っているんです。ところが日本の高温多湿の気温と湿度の中で、3.0が同じように走れるかどうか、あとはやっぱりバッテリー、モーター、制御含め、すべてが思っていた以上の気温上昇で熱を受けたりしますから、そういういろいろがトラブルなくちゃんと走れかどうかについては、今けっこうテストをするようにしてるんです。もちろんトラブルもたまに出ます。今のうちに出る方が結果オーライですから。いずれにしろ、こういうのは初めての体験で、色々ちょっとバタバタはしているところです。とにかく、灰塚は暑いですからね。だから正直、灰塚ダムさえ乗り切れれば、もう次からもぜんぜん問題ないと思うんです。とりあえずヤマハ組とすれば、ぼくと氏川のマシンに関しては次の灰塚が肝なんですね。史くんに関しては2.2にそのまま乗っていますから、あれは暑い夏でも問題なしという実績があります。灰塚は、3.0組にとって肝なんです」
「体調その他は、今のところ、問題なくですね。ただあらためて、あの小川さんの北海道のケガを目の前で見て思うのは、もうおじさんですよね。小川さん本人もたぶんわかってるでしょうけど、あれがたとえば10歳若かったり20歳若かったら、あのケガはありえないんです。年齢的に、ただただどんくさくなってるんです。あの速度とあの高さから後ろ向きに飛び降りて、まあとっさに足が滑ったという不運があったにしても対応できなかったというのは、もうおじさんだからです。あれをやっぱり目の前で見て、一応小川さんよりぼくの方が2つ年下なんだけど、あらためて身のこなしをちゃんとしなくちゃいけないなと思って、ちょっと違うトレーニングやストレッチなど、ちょっとやるようにしてみています。陣くんとか陸くんとか身のこなしが素早いですよね。思い出せば、杉谷さんがまだ今よりは若かかりし頃に、ぼくのトライアルをお助けしてサポートしてもらった時代があるじゃないですか。杉谷さんは40歳前で、ぼくは20歳ちょっとでしたけど、杉谷さんの動きは20歳くらいのぼくからしたらおじさんでした。その杉谷さんより今のぼくたちは年長ですから、それはそうなんですよ。ただやっぱりあのようなアクシデントを、目の前で自分の仲間が遭遇するのを見ると、心配を含めて自分もがんばろうと思いますね」
◎8月19日はバイクの日 HAVE A NICE BIKE
1989年に政府が8月19日をバイクの日に制定。この日を中心に、全国でバイクユーザーをはじめ広く一般に交通安全意識の啓発、バイクの有用性と利便性をアピールするため、毎年「バイクの日」イベントが開催されている。主催は日本自動車工業会と日本二輪車普及安全協会。

今回は第17回目の開催で、さまざまなコンテンツがあった。メインステージのトークショーは一部と二部に別れていて、どちらもそのトップバッターが黒山健一のトライアルデモンストレーションだ。とても狭い場所で、トライアル競技のこと、電動バイクTY-Eの紹介など、多数のギャグを飛ばしながらキレのいいトークとテクニックで観客を惹きつけ、場内は一気に盛り上がった。
会場は東京・秋葉原駅から徒歩3分ほどの『アキバ・スクエア』。この日も猛暑日だったけど、午後2時半から夜8時までの開催はゆったり感があっていい。さらに今回の会場は、ビル2階から吹き抜けになっている半室内みたいなエリアで、雨が降っても大丈夫。オープンエリアなのにクーラーがそこそこ効いてすばらしい環境。国産メーカーの最新バイクとレース車両展示があり、俳優、バイク界のさまざまなジャンルの方々のトークショー、そしてエンディングはミュージックライブと抽選会で盛り上がった。

2回目のトライアルデモは午後5時30分からだったので、都内の仕事場をちょっと早退して駆けつけたトライアルファンもいらっしゃった。毎年、平日も祝日も関係なく8月19日に行われているし、黒山健一のトライアルショーも「バイクの日」ではすっかり定番になっているので、都内でお仕事をされてる方は今後も要チェックだ。入場は無料!
各メーカー車両展示や白バイのまたがり体験もできる。今回のトークショーではヘルメットデザイナーの実演があって、このヘルメットは最後の抽選会のプレゼント品に! すごい。
当日のライブ配信。黒山健一デモンストレーションも見られます。
https://www.youtube.com/live/3PfiTwpcvZ8
