
Photo:Montesa
開幕戦フランス大会に続いて、2012年世界選手権第2戦は、初めてオーストラリアの地が選ばれた。5月26日・27日の2日間、オーストラリア南部、メルボルン近くのタレンガワーでの開催。グランプリを戦ういつものメンバーは、ヨーロッパからオーストラリアに飛び、そのまま翌週の日本大会のために日本へ向かう。
勝利は1日目2日目ともにトニー・ボウ。両日ともに完璧な横綱試合ぶりだった。2位以下は2日間で流動的。土曜日はラガがよかったが日曜日のラガは4位と低迷し、土曜日に4位だったファハルドは日曜日には2位表彰台に上がった。
藤波は日曜日に今シーズン初めての表彰台を獲得。土曜日も調子は悪くなかったのだが、2ラップ目にエンジン不調に見舞われ、ライバルに逆転されて4位となった。カベスタニーと同点だったから、エンジン不調がもう少し軽ければ、土曜日も表彰台は確実だった。

オーストラリアのボウ/Photo:FIM / Good Shoot
オーストラリアは南半球の大陸。この時期、ヨーロッパも日本も夏を目前に控えて日々暑くなってきているが、南半球はこれから冬になるところ。おかげでちょっと寒い。土曜日は雨が降っていて特に寒くて、気温は10℃と発表されている。日本でいうと、3月の開幕戦くらいの感じかもしれない。
前回、オーガナイザー(現地の主催者でなくFIM)とライダーの間で話し合いが持たれたスタート順については、結局なにも変わらずだった。土曜日は参加ライダー全員によるくじ引きでスタート順を決める。日曜日は土曜日の成績の逆順(成績のいいものが後にスタートする)となる。昨今のトライアルではスタート順は勝敗に大きな影響を与えるから、FIMとしてはそれをあえてくじ引きとすることで、すっかり固定化の傾向があるリザルトに変化を持たせようという狙いがあるのかもしれない。リザルトを見ると、その効果は多少はあるような気がするが、それはそれ、世界選手権はギャンブルではない、という声もある。
観客サイドに立てば、自分の待つセクションにやって来る順番がまるで順不同となるわけで、土曜日の観戦はけっこうきつい。誰が来るかわからないけど、まぁ気に入ったセクションに腰を落ち着かせて、サンドイッチでも食べながらのんびり見てやろう、という観戦姿勢ならそれでもいいかもしれない。でも世の中にはいろんな観戦スタイルがある(そしてのんびり観戦派は、そんなに主流でもない)。ややこしいスタート順であることにはまちがいない。
そして実際は、2戦を終えての実績としては、スタート順に関係なく、トップライダーはくっついて試合を回る傾向がある。たとえばトップの4人のスタート順が1番、4番、6番、14番ときれいに散らばっていたると、4番スタートの誰かは6分のスタート差を猛然と追いかけて1番スタートに追いついてくる。6番スタートは4分遅れを必死で追い上げる。14番スタートはちょっと遅すぎるから、こいつの場合は悩みどころだ。急いで先行車に追いつこうとするか、どうにかして情報を得るなりして自分のラインを探そうとするかもしれない。ここ2年で、世界選手権のライダーは早いスタート順で走る訓練を積んだ。トライアルはあとから走るほうが有利という原則は今でも生きているが、早い順番では走れない、というほどでもなくなっている。それより、自分のお手本となるライダーがいるかどうかの方が影響は大きい。スタートするときがばらばらというだけで、スタートしてしまったら、いつものかたまりはいつものとおり、という状況になる。FIMがやりたかったことがうまく機能しているのか、やや疑問だ。
これまで、トライアルのスタートは前回までの成績が悪いものから先にスタートした。そういうライダーは、ラインのないところでもがき、後続のためにわだちを作り、苦労ばかりする。それでも実力がある選手はそこそこの成績を出すから、そこでまたがんばって上位に進出することで、自分のトライアル環境を向上させることができる。しかしこのスタート順は、どうも試合の進行を遅くさせる効能もある。セクションを前に、誰もトライしないなどという事態となるのも少なくない。
それで採用されたのが、前回の成績がいい者からスタートするというシステムだ。これは2年間続けられた。成績がいい者は技術があるのだから、ちょっと不利な状況でもがまんしなさい、そのほうが公平だろう? という考え方だ。しかし割を食うのは一番スタートの一人だけで、二人目からは一人目が走った情報を最大限に吸収して、自分のトライを完成させてしまう。勝てば一番スタートで次の試合には勝てない、負けると次の試合で条件がいい。それでも、毎回一番スタートを強いられるボウなどは、もうすっかり一番スタートの走り方をマスターしてしまったようにも見える。勝ったことがないライダーが一番スタートになってしまったら(そういうことはルール上もあり得ないんだが)、その戦い方は悲惨なものになるだろう。強い者は強い、という大原則は、どんな規則にしたって変わらない。
それでも、逆順スタートが功を奏したのは、試合時間をコンパクトにすることだった。トップスタートのライダーは、後続のためにわだちを作ってやるだけでなく、自分の走りをライバルに披露しなければいけない。それはつまらないので、大急ぎで走って後続を断ちきろうとする。後続は一番スターターに逃げられたくないから、これまた大急ぎで先へ進む。こうして、試合時間は以前に比べるとずいぶん短縮された。しかしお客さんにとっては、大急ぎのライダーについていくのは楽ではない。長い下見ばっかり見せられるのもつまらないが、汗をかきかきセクションを移動したら、すでにお目当てのライダーのトライが終わっているというのはそれ以上につまらない。
どんなスタート順がいいのか、世界選手権はまだ試行錯誤の中にある。今回のスタート順について、開幕戦で一番スタートとなった藤波が先頭に立って、スタート順をあらためるべく請願を行った。ライダーのほとんどは藤波の提案に賛成だったというが、FIMはまだ実験の結果が出ていないからと、このスタート方式を続行していく。シーズンの途中でスタート順が変わるのは、ライダー間で不公平が生じる可能性がある。第2戦からスタート順が変わると、不利益を被るのは第1戦で一番スタートだった藤波だ。でもその藤波が率先してスタート順を変えようというのだが、スタート順について、FIMはかたくなだった。
すいません。スタート以前の話で長くなっちゃった。
■土曜日
そんなわけで、金曜日にくじ引きをして、雨の中下見をして、土曜日となった。ライダーがオーストラリアに到着した木曜日ごろにはいいお天気で、セクションも乾いていてなかなかダイナミックだった。しかし雨が降って、大岩に濡れた泥がのって、セクションは難度を増していた。
スタート順は、トップ5人の中ではファハルドが一番早かった。。そしてたまたま、次がボウ、その次がラガと3人が並んだ。ラガから3人ほど遅れて藤波。さらに遅れてカベスタニー。しかしもちろん、スタートしてすぐ、5人はひとかたまりとなってトライしていくことになる。
好調だったのは、やはりボウだった。ボウとて、難セクションでいくつかの5点を取っているが、それでもライバルには明らかな差をつけて1ラップをまとめた。トップライダーの先頭を切って走るファハルドは、やはり苦しそうで、ボウの17点に対して46点もとってしまっている。
1ラップ目に2番手につけたのは、藤波だった。藤波は、ワークスマシンのデリケートなインジェクションシステムが現地のガソリンにあわなかったか、エンジンの不調に悩まされていた。この不調はボウも同じなのだが、藤波のほうがよりこの影響を強く受けてしまっている。それでも藤波は32点。ボウには15点差と倍近い点差となったが、ラガに3点差、カベスタニーに9点差は、まずまずのポジションだ。
2ラップ目、ボウはいよいよ調子がいい。17点でも立派なスコアだったのが、2ラップ目はたったの7点。これで勝利は決まった。混とんとしたのは2位争いだ。まずラガが巻き返しを図った。ラガはときどき、2ラップ目にとんでもない集中力を発揮することがある。ボウには届かなかったが、ラガの2ラップ目の減点は19点。
1ラップ目に2位だった藤波は、そのラガにポジションを奪われた。藤波は1ラップ目より減点をひとつ増やして33点。エンジンがいよいよ不調になって、たいへんだったのだ。パワーがない、思い通りに働かない、という以上に、ぷすっとエンジンが止まったりするもんだから、よろしくない。しかし失ったものは、ラガに奪われた2位だけではなかった。
カベスタニーも、2ラップ目に確実に減点を減らしていた。2ラップ目のカベスタニーは、1ラップ目に比べると17点も少ない24点。トータルでは藤波と同点の65点だった。クリーン数を調べると、カベスタニーが13、藤波が11。これでカベスタニーは3位表彰台を獲得。藤波は開幕戦から5位、4位、4位と、いまだ表彰台に上れないでいる。ファハルドは2ラップ目も追い上げならず、藤波に続いて5位となっている。
今回6位となったのは、ファハルドのベータ入りでオッサのナンバーワンに昇格したダニエル・オリベラス。1ラップ目はダビルに1点差の7位だったが、2ラップ目にダビルより1点少ない46点をマークして同点に。ダビルより2個多くクリーンを出していたので、晴れて6位。ファハルドに続くポジションは、オリベラスにしてもオッサにしても、なかなかしてやったりの戦いとなった。
ジュニアはポル・タレス(JTG)、フランチェスク・モレット(モンテッサ)の追い上げを交わして、アレッシャンドレ・フェラーが連勝記録を伸ばした。地元オーストラリーのライダーは、オープンクラスも含め何人かの参加があったが、6位以下にきれいに並んでしまった。
ユースはスティーブ・コクランが開幕戦に次いで2勝目。ジュニアとユースはフランス人の天下となった。


オーストラリア1日目のオープンクラスとユースクラス、リザルト
■日曜日

2日目に2位は開幕戦と変わらず/Photo:FIM / Good Shoot
ボウが勝利したので、ボウを最終スタートとする日曜日が始まった。お天気は回復して、岩の泥も乾き始めている。しかし完全にはなくなっていないから、滑るところは滑る。
この日も、トップライダーでは真っ先にスタートすることになったファハルドは、しかし前日とはうってかわって好調だ。もともとファハルドは上手なライダーだから、うまくはまればこのスコアは不思議ではない。1ラップを終えて、ボウはたったの3点で回ってきたが、ファハルドは3点。優勝も視野に入る好スコアだ。
この二人に比べると、14点と出遅れたのが藤波。前日のトラブルはもちろん修復作業を受けたが、本質的には原因不明のトラブル。オーストラリアにいる限り解消はされない。それでも、ラガやカベスタニーに倍ほどの差をつけているというのは、明るい話題だった。

日曜日の藤波貴久/Photo:FIM / Good Shoot
2ラップ目、ボウの好調は続いてホンモノ。ボウも藤波と同様のトラブルはかかえているも、ボウは藤波よりもうちょっとマシンに対して頓着がないらしい。1ラップ目の3点よりは減点が増えたものの、2ラップ目も7点。1ラップ目と合わせて10点。まず勝利は揺るぎない。
1ラップ目2位のファハルドは、2ラップ目には5点ふたつでちょっと減点を増やしてしまった。それでも1ラップ目の貯金が効いて2位を確保した。
2ラップ目に好調だったのはラガだった。ラガは1ラップ目のボウと同じたったの3点で2ラップ目を終えた。1ラップ目の30点から、一桁減らしてきたのだから驚異的。1ラップ目もこのスコアだったらぶっちぎりだったのだが、残念ながらそううまくはいかなかった。
ラガ3点、ボウ7点に続いて2ラップ目に好スコアをマークしたのはカベスタニーだった。カベスタニーは8点。しかしカベスタニーも1ラップ目に27点を取っていて、2ラップ目の追い上げはむずかしかった。逆に、1ラップ目の4位から5位に転落している。
2ラップ目に好調だったラガとカベスタニーの追い上げをかろうじてかわしたのが、藤波だった。藤波は、2ラップ目だけでいうと6位のスコアだったが、試合後半はラガとの点差を把握しながら、きっちり逃げ切って表彰台に滑り込んだ。藤波の、今シーズン初めての表彰台だった。
ジュニア(オープン)はまたしてもフェラーが勝利。モレットが2位、ダニコールが3位。JTGのタレスは6位と低迷した。
ユースはスティーブ・コクランが連勝。4戦中3勝で、早くも逃げ切り態勢だ。


オーストラリア1日目のオープンクラスとユースクラス、リザルト

