
1日目にクラッシュ、ももの肉ばなれをしたボウだったが、パーフェクト勝利
セクションが危険だったのか、たまたまみんな運が悪かったのか、スペインGPはけが人が続出した。トニー・ボウ、ロリス・グビアン、そして藤波貴久。
あるいはマシンがこわれてしまって順位を落としたアルベルト・カベスタニーなど、オーストラリア、日本と遠征を終えたヨーロッパラウンドは、猛烈な暑さの中、なかなか厳しい戦いとなった。
野本佳章はオープンクラスに出場、15位と16位で、1ポイントを獲得した。
トニー・ボウは1日目の12セクションでマシンと絡み合ったまま転落して腿を痛めてしまった。ただ、この減点5で2位との点差がわずか3点となったものの、勝利は揺るぎなく、翌日もまぁいつも通りのライディングができたようだ。
藤波の負傷は土曜日の第6セクション。リザルトを見ると第6セクションは3点となっている。クラッシュしたのではなく、下っている際に右手小指を岩とハンドルの間にはさんでの負傷だった。その瞬間はよくある打撲だと思ったということだが、セクションの残り、1分ほどの間にケガの状況が急速に明らかになっていった。握力がなくなってライディングがめろめろになってばたばたの3点、しかも指からは血が噴き出している。
すぐドクターの診察を受け、痛み止めを処方さる。爪がはがれていたが、どうやら指先を骨折している模様だ。もちろんリタイヤを勧められたのだが、藤波にはリタイヤの意思はまったくなかった。とはいえ、この時点では試合を続けていけるかどうかの確証などなく、5点のパンチをもらい続けてゴールするだけでもリタイヤよりはマシだろうと考えたようだ。
しかし次の7セクション、ためしに走ってみたらクリーンした。ここは比較的やさしいセクションだったのだが、それでも指先を骨折した状態で、まともな処置もしないままのライディングだから、それはそれは過酷なチャレンジとなった。とにかく痛い。

右手小指を負傷した藤波。手袋を切って、患部を守る青いテープが見える
今年の世界選手権は、2位以下がたいへん熾烈だ。藤波がこんなに長いことランキング5位から脱出できないのは珍しいが、これだけ実力が均衡したトップ5(というか、トップ2からトップ5までの4人)にあって、スタート順が一番だったりエンジンが不調に陥ったり、いろんなハンディをしょいこんだ藤波が苦戦するのも無理はない。そのうえ、この負傷である。
なんとか走りきれたのは、試合中のことで気持ちが闘争心に燃えていたことだった。ダビルを破って5位となったのは最善の結果だったといっていい。
明けて日曜日は、また新たな困難があった。土曜日は気持ちに火がついたところでの負傷だったが、日曜日はケガをしたところから始めなければいけない。この日もまた、ライバルはダビルとなった。なんとかダビルとの間にアドバンテージを持って試合を進めたところ、カベスタニーがマシントラブルを発生させていた。

1日目に2位だったカベスタニーは、2日目にトラブル、7位と低迷する
ミッショントラブルで、トライに大きな影響があった。カベスタニーはダビルとチャロナーにも破れて7位。これが藤波には不幸中の幸いとなった。この状況下で4位獲得は優勝に匹敵する快挙だった。
5年連続のランキング3位。1999年にランキング2位となった時から数えると、実に13年間にわたってトップ3を維持してきた藤波としては、残る戦いで現在のランキングをあと二つアップさせたいところだが、それも可能性は残されている。ラガは前回日本GPで両日ともに表彰台を逃しているし、カベスタニーも今回7位と低迷した。ボウだけはとんとん拍子でタイトルへの道を突き進んでいるが、2位以下の藤波までの4名は、本当に接戦だ。今回の2戦が終わって、ランキング2位がファハルドで116点、ラガとカベスタニーが同点で114点。藤波はそれに10点差の104点。小さくはないが、こんな負傷をしてなお、ランキング2位まで12点はまだまだ期待が持てる状況だ。

ヨーロッパの個人戦は初めての野本佳章。マインダーは成田亮
成田亮をマインダーに参戦した野本佳章は、土曜日に15位となった。日本GPの際にはジュニアクラスでエントリーしていて、リザルトにもちゃんとのっているのだが、今回はオープンクラスにのみ参加となっている。ジュニアクラスには年齢の制限があるが、日本GPにさかのぼって、野本がこの条件に当てはまらないということが(いまさら)明らかになったものと思われる。FIMのリザルトマネージャーのチャーリーは、人のいい巨漢だけど、こういうことがよくある人でもある。
藤波貴久が野本にインタビューしたところによると「ヨーロッパのトライアルは、実際に走ってみると思っていた以上のところがいっぱいあり、まだまだ足りないところがあった。自分の足りないところもまたはっきりした気がする」とのこと。ところで十八番のバックフリップ似ついてはというと……。「バックフリップができるところはセクションにはひとつもなかった。どこも狭くて、着地ポイントがない」ということだったという。藤波がこの話を聞いたのは土曜日の夕方のことだったが、なんと野本は、日曜日にバックフリップをやったとのこと。それも朝一番の、スタート台でのことだったという。「1試合に1回は、バックフリップをするヤツなんだね」とは藤波の野本評。これでまた、世界に野本の名前が知れ渡ることだろう。とはいえ、指がくだけてちぎれながら、野本とバックフリップの話を交わす藤波も、やっぱりすごい。

今年の2位争いは本当に熾烈。ファハルドは3位と4位

日本GPとは一変、両日ともに表彰台のラガ
■土曜日リザルト

ジュニアクラス1日目

オープンクラス1日目

ユースクラス1日目
■日曜日リザルト

ジュニアクラス2日目

オープンクラス2日目

ユースクラス2日目

