
応援してくれたみんなとハイタッチしながら表彰台に向かう黒山健一
全日本選手権第6戦中部大会。優勝は、またも黒山健一だった。しかし今回はこのところのパターンとなった黒山のぶっちぎりではなく、野崎史高が前半試合をリードして始まった。2ラップ目に野崎の5点ひとつで黒山が逆転するも、同様に黒山が失敗すれば勝負がひっくり返るという、最後までわからない展開の中での勝利だった。
黒山はこの勝利で、最終戦SUGO大会を待たずに2012年のシリーズチャンピオンを決定した。黒山の全日本タイトルはこれで11個目。もちろん前人未到の快挙である。
国際A級は加賀国光が今シーズン2勝目を地元の大会であげた。ランキング争いのライバル成田亮とは1点差。2ラップ目に逆転しての勝利だった。しかもこれで、ランキングでも成田に1点差と追い上げていて、最終戦でのチャンピオン争いが興味深いことになってきた。
国際B級はすでにチャンピオンを決めている武井誠也が今シーズン4勝目。2位に地元岩田悟、倉持俊輝が今シーズン2度目の3位表彰台に上がった。IA昇格圏のランキング8位争いはまだまだしれつ。いまのところ、IA昇格を確実にしているのはランキングの上位3名のみ。
注目の最終戦は、この2週間後だ。

SS第1セクション。特別席を囲うように順番待ちのライダーが並ぶ。
今回は、朝一で国際B級がスタートし(IBに先がけて、E125がふたりスタート。今回、久々にE125にふたりのライダーが参加した)、国際A級スーパーがその次にスタートするタイムスケジュールとなった。通常、IASが一番最後にスタートするから、ちょっと違和感のあるスケジュールだ。これは、イベントの最後のクライマックスとしておこなわれているSS(スペシャル・セクション)をより盛り上げていこうという主催者の意向で、実は小川友幸の提案により実現したものという。
SSは、通常のセクションより、お客さん本位で考えられたものだ。ギャラリーから見やすいところに、午後の見やすい時間に設定されている。しかしこれまでのSSは、通常のラップの後、そのままの流れでおこなわれているから、事実上セクション数の少ない3ラップ目のようなものだったりして、SSのSSらしいよさが発揮されているかどうか。どうせなら、試合展開も本部側がしっかり把握して、SSとして特化した運営ができないか。その答えは、今回のSSで見事に実現していたように思う。
12セクション2ラップを終えたライダーは、そのままSSの下見に入る。SSはIASの12セクション2ラップのゴールから約1時間くらいのインターバルを置いてオープンされるが、そのときには下見は禁止される。ライダーはいきなりコリドーに入り、2ラップを終えた時点での順位の逆順(成績が下位のものから)トライする。下見に時間をかけたいからとか、試合の駆け引きとかはない。体操競技やフィギアスケートのように、自分の時間になったらセクションインだ。
すでに12セクション2ラップの成績はきっちり集計されているので、SSの結果いかんで順位が動くような戦いは、場内放送でもしっかり伝えられる。トライアルを初めて見る人にも、なかなか親切だ。マイクを持っているのもさっきまでオブザーバーだったスタッフだから、ライダーに感情移入しちゃったりということもなく、減点の伝えかたもスマートで正確だった。素晴らしい。
今回、SSの観客席には指定席も用意されていた。1席1000円で、SSの2セクションを最前列で観戦できる。これはなかなかお得。もてぎの世界選手権ではおなじみとなっている指定席だが、全日本でははじめて。今回の中部大会は、観客対策的にはいろいろお手本とすべきところが多いようだ。
SSは2セクション用意されている。これまでだとSS1が終わったライダーはそのままSS2に移動して、自分のペースでトライをしていたものだが、今回はそれもない。SS1を走り終えたライダーはそのまま待機して、全員が走り終えてからSS2へ向かう。ライダーがSS2に移動しても、すぐにとらいすることはない。SS1を見ていたお客さんがぞろぞろと移動して、みんながSS2に到着してから、トライ開始だ。お客さんがいないところでトライしても、SSとしてはなんの意味もない。コンセプトは明快で、気持ちがいい。
表彰式では、ライダーはお客さんに囲まれた花道を通って登壇する。演出はなかなかにくい。
もちろん、このシステムでも懸念されていたことはある。IAをIASのあとからスタートさせることで、IASにIAが追いついてきて大渋滞が発生するのではないかとか、一番スタートがどんどん早くなってきて朝が早すぎるのではないかとか、IAをゆっくり見ている時間帯がなくなってしまうのではないか、などだ。
最初の懸案はともかく(もっと参加台数が多い昔は、もっと一番スタートが早かったという意見もあった)、IAはIASに追いついてくることなく、渋滞もなかった。IAの面々にしてみたら、IASがIAよりも早いペースで試合を進めることはまずないから、IASに追いつかないくらいで試合を進めていれば、タイムオーバーになるようなことはないから、前を走っているIASはぜいたくなペースメーカーといったところ、という意見もあった。IASを追い越していくIAはほとんどいなかったから、IAとしてもその気になればIASのトライを観戦できるメリットも生じた。そしてお客さん(個人的には出場ライダー全員を見ておきたい自然山通信の取材陣など)にしてみると、IASを見終わった後にIAがずらりとやってきて、ちゃんとIAを見ることもできた。やってみたら、すべてうまくいっていたように見える。
たとえば天候が荒れていたらどうなっていたろうかとか、今回だけでこの方式がベストと決めてしまうわけにはいかないし、これと同じ様式を他の全日本大会が採用したときに、同じような成果が上がるかというと疑問も多いけれど、こういうよいお手本ができたのだから、よそでも前向きになんとかがんばってほしいと思うのであった。
さてそんなこんなで、最後のSS関係の話を先にしてしまったが、試合そのものは、いつものように12セクション2ラップで大勢が決まるのは変わらない。今回は、ほぼ全部が登りばかりで、ちょっと失敗すると5点になる設定を気にしていたライダーもいた。逆に、それがなければ神経戦になりそうな読みもあった。さて。
第1セクションは、トップライダーにとってはほぼクリーンセクションだった。だから小川友幸(以下ガッチ)がここで1点を取ったのは、ちょっと意外な滑り出しだった。続く第2セクションは、ふかふかの登りが肝。ここでトップライダーも足を出して押し上げた。ガッチは、本人は2点のつもりが3点の判定。ずり足か2度の足つきかというところ。2セクションにしてガッチの減点は4点になった。
小川毅士(以下毅士)は、第2セクションを最も美しく走り抜けたライダーだった。黒山も野崎も足を出して押し上げた登りをクリーンで抜けたのは毅士だけ。ところが出口手前1メートルのところの切り株にブーツかフットレストがひっかかったか、突然横倒しになり、自身は崖下に転がり落ちてしまった。あばらを打って痛い思いもしたようだが、大きなアドバンテージが一瞬にしてふいになった落胆も大きかった。

第3セクションの野崎。これは2ラップ目だが、1ラップ目は見事にリヤタイヤをグリップさせて登りきった。
第3セクションも、登りに罠がひそんでいた。ここでは野崎以外が全員5点。野崎は華麗にクリーンしていった。このクリーンが、野崎を試合のリーダーとした。3セクションを終えて、野崎3点、黒山6点、ガッチ9点、毅士10点。他にも、柴田暁、田中善弘、野本佳章が10点で3セクションまでを終えている。
トップライダーにとって、試合が動いたのはここまでだった。第4はみなクリーン、第5は黒山、野崎が1点、ガッチが2点、毅士がクリーンとなったが、細かい減点のやりとりによる神経戦となる予測。第6はふかふかの登りにつかまって、全員が5点だった。
しかし第7以降はクリーンのオンパレード。唯一第8で野崎が1点を失ったが、これでも野崎のリードは変わらず。野崎以外のトップ4は、第7から最終12セクションまで、6セクションはすべてクリーンだった。
柴田暁以下、下位のライダーはこの7セクション以降に5点がめだっている。ちなみに7セクションから12セクションまでの6セクションで減点を集計してみると、柴田は16点、野本28点、田中29点、宮崎が30点、斎藤と滝口が40点となる。もちろん簡単なセクションではないのだが、ISの若手が上位に進出するには、このあたりが課題となってくるのだろう。世界選手権ではジュニアクラスという登竜門クラスがあるが、ジュニアクラスのライダーはこのあたりをきっちりまとめる訓練を(もちろん高いレベルで)積まされているのだ。
ちなみにトップ4の7セクション以降の減点をまとめてみると、黒山が減点0、野崎が1点、ガッチが5点で毅士が7点だった。
1ラップが終わって、トップ争いは僅差。野崎が9点、黒山が12点。しかしラップ後半でのどんでん返しが起こりにくいことを考えると、トップ争いは神経戦の我慢大会となっていくかもしれなかった。黒山と両小川も数点差だが、この状況を考えると、大きな変化は期待しにくい。勝負はラップ前半に決まりそうだ。
第1セクションは4人ともクリーン。そして点数が割れた第2セクションでは毅士以外の3人が減点1。これでガッチと毅士が同点となったが、トップ争いは均衡を保っている。第3セクションでは黒山が1点、野崎が3点、両小川が5点となった。これで、トップ争いは二人のヤマハ勢にほぼ絞られた印象だ。トップ争いは野崎のリードが1点と縮まった。黒山とすれば、クリーンを狙って一気に逆転したいところではあるが、それで5点となってはもともこもない。じっと我慢のトライアルが続く。
第5セクション、毅士が1点。他の3人はクリーンで、毅士が単独4位となった。トップ3の点差は変わらず。
第6セクション。1ラップ目は全員が5点となったここを、最初に抜けたのは毅士だった。3点。それを見た友幸が美しくクリーン。続いてトライした黒山は確実に1点。そして最後にトライした野崎は、先攻した3人と同じラインをとりながら、最後でマシンが前進を止めてしまって5点となった。これで試合が動き、トップは黒山に移った。黒山が4点リードだ。4点リードでラップの後半に突入。こうなると、野崎の逆転はきわめてむずかしいものとなった。そのとおり、トップ二人は後半のセクションをすべてクリーン。その差4点のまま、勝負は2セクションで行われるSSに持ち越された。

3位、小川友幸

4位の小川毅士
ガッチは第8で5点、毅士は第10で5点の他、1点がふたつ。2ラップが終わった時点で、ふたりとも勝機はなくなっていた。ガッチには2位、毅士には3位の可能性が残っていたが、あくまでも計算上の可能性だ。ただし去年は、黒山がSSでミスを出してガッチの逆転勝利となったから、最後までどうなるかはわからない。
そしてSS。第1は入口の大岩がダイナミックだが、難所は最後の登り。ここを抜けられたのはトップ4だけで、毅士が2点、残りの3人はみな1点だった。ここで毅士の表彰台の目が消え、ガッチの2位進出の可能性もなくなった。
SS第2。今回の最終セクション。前半が人口セクション。後半が法面を空に向けて上がっていく。人口セクションには丸太の一本橋を行って帰ってくる難所があった。一本橋は地上1メートル以上のところにあるから、落ちたらおわりだ。さすがにこのクラスのライダーはこういった小技もうまい。
個々をクリーンしたのは二人。ガッチと、黒山だった。野崎が1点をついたところで、黒山が刈りに5点となっても同点、クリーン差で黒山が上位に出ることが決まったから、ここで勝負は決まった。
最終セクションをクリーンして、中部大会の勝利を決めた黒山。この勝利で、ランキング2位(野崎とガッチが同点、2位入賞回数で野崎が上位)の野崎にランキングポイント26点差をつけて、2012年チャンピオンを決めた。
3位は第1セクションからトップ争いに加われない戦いを続けてしまったガッチ。最後にそのガッチに離されてしまった毅士が4位、前回8位と低迷した柴田暁が5位に復活。

最終セクションでの野本佳章。ちょっとまわりたらなかったか。
6位は田中善弘。2ラップが終わった時点では野本佳章が6位だったのだが、その差は2点。田中がSS第2をクリーンした時点で、野本はここを3点で抜ければ6位確定だったのだが、絶好の法面を前に野本は華麗なバックフリップを披露。なんと離陸でほんのわずかにリヤタイヤを滑らせてしまって、わずかに回りきれずに着地失敗。そのままセクションアウトはしたが転倒で5点。2点差で田中の逆転6位となった。ギャラリーの拍手喝采と引き換えに失った6位の座だった。
8位は宮崎、斎藤9位、滝口10位と続いている。