10月28日2012全日本選手権最終戦は、宮城県スポーツライドSUGOで開催された。すでに黒山健一は前戦中部大会で今シーズンのチャンピオンを決めているも、最終戦の焦点は黒山健一の全日本全勝優勝がなるかどうか。もちろん今シーズンまだ未勝利の小川友幸、野崎史高、そしてまだ全日本で優勝経験のない小川毅士も、黙って黒山に全勝優勝させるわけにはいかない。
はたして試合は、黒山、小川友幸、野崎の大接戦。最後は2点差で、黒山健一の勝利が決まった。V11の大記録は、2012年全勝優勝で鼻をそれられて決着した。
国際A級は永久保恭平が初優勝。チャンピオン争いは加賀国光が競り勝った。国際B級は武井誠也がぶっちぎりのぶっちぎり勝利。E125は倉持晃人ひとりが出場している。
黒山は全勝優勝について、興味がないと言う。全勝優勝をしたから特別にご褒美が出るわけではないので、1戦1戦の勝利の方が重要で、全勝優勝をするなら、あくまでもその結果、というわけだ。
ただこれは、黒山特有の照れ隠しのようにも思える。全勝優勝を自分から目標に掲げて、よけいなプレッシャーを与えることもないわけだ。
「最終戦は、シーズン最後の戦いだから、これを勝って終わるのと負けて終わるのとでは、シーズンオフの気分がぜんぜんちがう。シーズンオフを気分よく過ごすためにも、最終戦は勝ちたい」
それが結果的に全勝優勝につながるにしても、黒山の目標はあくまでも最終戦での勝利だった。
これまで、全日本選手権で全戦勝利したのは、藤波貴久ただ一人だ。1999年のことで、この年黒山は両手首骨折で、シーズンをまともに走れないでいた。その年以外、シーズンを通して無敵を維持したライダーは、1973年に全日本選手権が始まって以来、ひとりもいなかった、ということだ(全勝の定義にあてはまるかどうか微妙だが、全日本選手権創世記1戦のみの選抜戦で行われた。1973年に優勝したのは現在黒山のチームのオヤブンである、木村治男さん、1976年チャンピオンは、黒山のお父さんである一郎さんでした)。
黒山の全勝を阻むべき期待を集めるのは3人。野崎史高、小川友幸(ガッチ)、小川毅士。ただ正直なところ、勝利経験のない毅士が、この舞台で初優勝というのはなかなか考えにくい。チャンピオン経験のあるガッチか、菅生で2勝していて相性のいい野崎が有力だ。
第1セクション、第2セクションはどのライダーも手早くトライしていった。去年走ったセクションとあまり変化がなかったり、難易度が比較的低いということもあるのだが、とにかく時間がない。2ラップの持ち時間が4時間、1ラップ目の持ち時間が2時間半。1ラップは12セクションあるから、1セクションあたり12分半ということになる。移動距離はごく短いが、パンチをもらって次のセクションまで行ってマシンを止めてとなると、1分2分はかかる。トライの持ち時間は1分だから、実質下見時間は10分を切る計算だ。なかなか忙しい。
しかし第3セクションでは、さすがに少々の下見をしなければいけなかった。セクションが設営されていた場所自体は、以前にも使われたことがあるところだが、奥の方が刈り取られていて、急斜面を登って降りるようになっていた。一番上まで上がればライン的にはまっすぐ。途中で右に降りるラインもあるが、曲がるポイントと降り口で足が出そうだ。結局、全員が途中から降りるラインを選び、そしてここで点数が割れた。田中善弘、小川毅士、野崎史高が3点、柴田暁、黒山健一が2点、小川友幸が1点。
小さな点差だし、まだ先は長い。第4セクションはトンネルを抜けた恒例のビッグステップだが、これはほんとどの選手がクリーンしていく。そしてその先、湿った岩盤登りの第5セクションで、ここでまた点数が割れた。
毅士、野崎を含め、ほとんどの選手が5点となる中、時間ぎりぎりデガッチが3点となると、黒山がクリーン。1点のビハインドはすぐに取り返して、黒山が2点差のトップとなった。しかし今日は接戦だ。5点となった野崎でも、黒山とはまだ6点差でしかない。
ふつうなら、これから逆転劇はいくらでも起こりそうだが、今日は意外に試合が膠着する。簡単なセクションではない。たとえば6から9セクションの4セクションをすべてクリーンした選手は一握りなのだが、クリーンのとれるセクションを確実にとっていく実力が、IASのトップライダーには必要ということだろう。その一握りには、黒山、ガッチ、野崎、毅士に加え、今回は田中善弘が加わっている。柴田はトータルのスコアは悪くないものの、細かい減点が多い。

10セクションをタダ一人クリーンした野崎史高
そして10セクション。登り斜面にとんがった岩が並んでいる。左右の幅がとても狭い。ちょっとマシンを滑らせると、岩のすぐ横に立っているゲートマーカーを倒してしまう。
毅士もガッチも黒山も、処置なしという感じで5点となった。そして最後に野崎がトライ。行き方はガッチやその他のライダーと同じように、岩から岩へ飛んでいくやりかたを選んだが、その正確性が群を抜いていた。クリーン。これで黒山7点、野崎8点、ガッチ9点と、トップ3人が大接戦となった。その後11でガッチと野崎が1点をとった以外に大きな変化はなく、勝負は2ラップ目にもつれ込んだ。
2ラップ目、最初の難所である第3セクションは、1ラップ目と同じようだった。野崎と毅士が1ラップ目の3点から1点としたが、ガッチも1点、黒山は2点で1ラップ目と変わらず。黒山9点、野崎10点、ガッチ11点とあいかわらず大接戦だ。
次の難所、第5セクションは、なんと全員が5点となった。点数は増えたが、点差は変わらず。しかしすぐ次の第6セクションで野崎が5点。これは手痛い失点となった。

2ラップ目の10セクションにて。黒山健一。下の岩から再スタートした。
2回目の10セクションは、黒山がいい見本を見せた。毅士が1ラップ目の野崎と同じやり方で5点になった後、黒山はここを飛ばずに、岩をひとつひとつ刻んで越えていったのだ。その後にトライした野崎は、1ラップ目は飛んでいってクリーンをしていたが、黒山と同じく刻んでクリーン。一方、ただ一人ガッチは、ふたりの走り方ではなく、1ラップ目に失敗したのと同じ、飛んでいく方法をとった。そしてクリーンだ。

こちらは小川友幸の10セクション。下の岩から飛んでいる。
結局、第7セクション以降、トップ3人はひとつの減点もすることなく、2ラップを終えた。このあと試合はいったんインターバルを置いて、2セクションでのSSに入る。
SSは12セクション2ラップの持ち時間の短さとちがって、ひとり3分間隔でスタートする。その間には下見は完了しているから、持ち時間として考えればもっと長い。そして全員がトライを終えるまでは次のセクションにインをしない。前戦の中部大会と同様だ。
ちょうどこの頃、雨が降ってきた。天気予報では昼過ぎから雨ということだったが、予報は遅い方に外れて、IASのSSだけが雨模様に引っかかってしまった。3分おきのスタートは、ライダーとお客さんが冷えきってしまって、ちょっとお気の毒だった。スピーディでお客さんがついていけない12セクション2ラップに対し、待ちくたびれたSS。全日本の試合システムへの試行錯誤は、もう少し続くのかもしれない。
SSの第1は、最後の岩盤の登りがむずかしかった。雨が降って、加速し始めが滑りやすくなっていたのかもしれない。結局、黒山も5点で、10人全員が5点となった。
この時点で、トップ黒山と野崎の点差は6点。野崎の優勝はなくなった。黒山とガッチは2点差のままだから、こちらはまだ逆転の可能性が残っている。
そして最後のセクション。最初のトライは滝口輝。入口の急坂、出口の急坂から大岩と、こちらも難所ぞろいだったのだが、滝口が見事にクリーン。ルーキー滝口の1年の成長を感じると同時に、最後の逆転劇が起こる可能性が少なくなったことも感じられた。そのとおり、滝口の後にトライした斎藤晶夫、宮崎航が次々にクリーン。2ラップ目の第1セクションで足首を負傷した柴田が1点を失い、この時点で5位につけていた野本佳章がなんと入口の急坂を失敗して5点となったが、この二人を除き、最後の見せ場で減点をした者はいなかった。
大接戦を勝ち取った黒山。今シーズン、たびたび見せたようなぶっちぎりの試合運びも黒山なら、今回のように詰め寄られてなお自分を失わずにトライが続けられる精神力。黒山が連勝を続けられる理由は多岐に渡るが、黒山の試合ぶりには、その理由のひとつひとつが現れている。
■国際A級

初優勝。完璧な走りだった永久保恭平
IAもIAS同様、第5セクションが難セクションだったが、こちらは全体的にクリーンもとれる、5点になる可能性もあるというセクション設定で、点数をとりあいながらの接戦となっていった。
そんな中、永久保恭平が完璧なライディング。1ラップ目3点(12セクション中11クリーン)、2ラップ目4点と圧勝。2002年にIA昇格をし、ここ数年確実なポイントランカーに成長していた永久保だが、これが自身初優勝となった。永久保は2013年、いよいよスーパークラスに挑戦する。
1点差で最終戦を迎えたチャンピオン争いは、加賀国光が2ラップともに成田亮を抑え、2位入賞とともに初チャンピオンを獲得。
「成田選手とはIBの同期で、当時はまったく歯が立ちませんでした。今、こうしていっしょに戦えてチャンピオン争いしていること自体が、ぼくにしたら上出来です」
とチャンピオン獲得の控えめなコメント。チャンピオンとなって、来年はIASに参加することになるが、IASとなると遊びではできないので、サポート体制やスポンサーなどを含めて、じっくり考える、ということだった。
3位となったのは藤原慎也。藤原も、来シーズンはIASへの参加を検討するという。

今年になるまで、優勝したこともなかった加賀国光。見事チャンピオン獲得
■国際B級

IBを越えたIB。武井誠也
今回も、武井誠也がぶっちぎり勝利。なんと、終盤戦の2ラップ目11セクションで1点をついた他は、23セクションでクリーンをたたき出した。2位のスコアが15点。ラップごとでも4点がその他の選手のベストスコアだから、武井の抜きんでた実力がわかる。
武井のライディングは当初からB級ばなれのマシンさばきだったが、チャンピオンを獲得したこの3戦は、そのアクションにいっそう磨きがかかってきたように思う。
IAへの昇格争いは、最終戦で逆転劇あり。同点だった大神和輝と岩田悟は、岩田が失速して大神がランキング2位を獲得。ランキング4位だった生田目俊之がこれも失速。ここまでランキング5位だった伊藤紀夫がランキング4位に、8位だった金沢清志がランキング5位となって、IA昇格レースの最後の一席を勝ち取った。




ランキング2位大神和輝、3位岩田悟、4位伊藤紀夫、5位金沢清志
■E125

兄俊輝をおってE125参戦中。倉本晃人
今年、このクラスに参戦したのは2名。岡山の米本と、関東の倉持晃人。今回は倉持一人が参加した。リザルトはたったひとりでさびしいが、走るセクションはIBとまったく同じだから、IBを走った時の予備校のような感じで試合参加ができる。
まだまだIBのポイント圏には食い込めない位置にいるが、過去、このクラスの卒業生が上位クラスで活躍している実績を見ると、13歳の倉持の将来も楽しみだ。