雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

衝動買いではない買い物

買おうかなぁ、どうしようかなぁ、お金ないなぁと悩むことは多々あるけれど、今回は1万円の買い物をどうしようかと悩んじゃった。リコーGRデジタルIIというカメラ。もう、かれこれ10年前に出たカメラでござい。オークションで、1万円なりで購入した。

2017リコーで撮ったうさぎ

調べてみたら、発売されたのは2007年11月22日。まさにちょうど10年前のカメラだった。

リコーGRというのは、コンタックスT系とかと並んで、90年代のフィルムカメラ時代末期に高級コンパクトカメラとして登場したカメラで、レンズがとてもいいので人気が出たのだった。その後、21世紀になってフィルムの時代じゃなくなって、デジタルカメラになって再登場することになった。フィルムカメラ時代はほぼ10年間にわたってモデルチェンジなしで押し通した。いくつかバリエーションもあったけど、基本フォルムはほとんどおんなじで、メーカーの頑固さがちょっと見え隠れする。

デジタルカメラになったのは2005年だそうだ。それから2年ちょっとして、ぼくが買ったII型が登場した。その後III型IV型と進化して、2013年に受光素子が大きくなったGRが出て、さらに進化したGR IIが出て今ここ、という状態みたい。ぼくのII型は初期型の不平不満をざっと改善して、でも基本的にはデジタルカメラの初期型のGRの性能をキープしているという、そんな時代の機械だ。

2017リコーで撮った銀杏

なんでこんなのがほしくなったのかというと、Facebookでたまたま友人の書き込みを見つけちゃったからだ。GRを使っている写真家さん(ふだんおつきあいのあるモータースポーツ系の写真屋さんではなく、不思議な写真を撮る方)が、GRを使っている仲間でなんかやりたいとつぶやいていた。なにをやるんだかわかんないし、それがぼくのやりたいことかどうかもわかんないのだけど、GRを持ってないと仲間には入れないのは確かだった。

ソニーα7を買って、古いレンズも全部楽しめるこのカメラをすっかり気に入ってしまっている今日この頃なんだけど、それでも、このカメラを持っているときには写真を撮るぞという気負いが生まれる。iPhoneで撮るときみたいな、気軽な感じはない。カメラがちがえば、ちがうスタイルで写真が撮れる気もしてくる。

ちょっと値段を調べると、最新モデルのGR IIは6万円とかする。これは高い。デジタルカメラになった最初のころのやつは、1万5千円くらいで買えるようだ。GRが好きな人に言わせると、1万5千円という値段は、たいへんに安いらしい。当時は8万円くらいしたみたいだから、そうとうな高級カメラだったらしい。それでも、デジタルカメラは3年もたつと値段がつかないという定説の通り、古くなって順調に値段が下がっている。

まちがって、オークションで7,000円とかで落札ができたら買っちゃうんだけどなぁ、なんて思っていたら、年がら年中オークションを眺めるようになっちゃって、これは精神衛生上よくないと思って、てきとうなところで手を打って、10,000円ちょっと欠ける金額で落札した。もしかしたらまともに動くかもしれないけど、もしかしたらまるで使い物にならないゴミをつかませられるかもしれないし、ある程度のものを手に入れようと思ったらそれなりの相場価格になるものを選びたいし、こんなんだったら中古カメラ屋さんで1万5千円くらいで買ったほうが悩んでる時間分だけ手っ取り早かったかもしれない。

2017リコーGRデジタル2これがRICOH GR digital IIであります。

1万円払おうとしたら、今クレジットカードを作ると5,000円分のポイントをプレゼント、なんてキャンペーンがあって、これまたついこれに申し込んで、5千円で入手した気になって、そこそこ幸せになった。

さて、届いたカメラは、電池もそれなりに長持ちするし、程度は悪くないみたいだ。ぼちぼちいい買い物をした気になっているが、そもそも、何のために買ったのかさえよくわからない代物なのだ。このカメラでなにを撮りたいのかも、よくわからない。衝動買いというには、うじうじ悩んだ末に手に入れたカメラだけど、衝動でもない、なんだかよくわからないままにやってきたカメラなのであった。

ともあれ、使ってみた。昔のカメラだから、受光素子が現在主流のCMOSではなく、CCDだ。だから暗いところはあんまり得意ではない。α7はいったい暗いところがどこまで撮れるんだとびっくりしたもんだけど、CCDのGRは、そういえばフィルム時代はちょっと暗くなると写真を撮るのはたいへんだったなぁと、あの頃がなつかしくなるようなところもあった。

それでも、RAW記録はできるし、ストロボはII型になって手動でポップアップできるようになったし、接写はなんと1.5cmまで近づけるという。そんなに近づいたらカメラや人間の陰ができちゃうし、こういうカタログスペックはえてしてあてにならいのだけど、できないよりはできたほうがいい。新型のGR IIはAPS-Cの大きなセンサーを備えているけど、ここまでは近寄れない。

2017リコーで撮ったもみじ

その後に出たGRデジタルIVは手ブレ防止装置がついているけど、これにはない。暗いところの撮影はもともと苦手だから、なるべくISO感度は低いところで撮りたいから、いよいよ手ブレは心配になる。

とまぁ、便利でない、使いにくいところをあげればきりはないけど、なんせ10年前のカメラだから、そこんところはしょうがない。さっと出してぱっと撮るには今のカメラに太刀打ちできないし、でもそんなら、最近はスマホのほうがカメラとしてより便利だと思うので、カメラで写真を撮るという儀式を楽しむには、これくらい不便でもちょうどいい。

GRとは関係ないけど、最近のスマホのカメラはとても優秀だから、たいていの場合、カメラなんて持ってなくていいと思う。スマホは必然的に持って歩くけど、カメラはわざわざ持ち出さなければ持たない。写真を撮りたくなるシーンはいつ目の前に登場するとも限らないから、大きなカメラを持っているときだけ写真を撮ろうとするより、スマホでいつも撮っているほうがいいシーンに出会える。インスタグラムのあがっている写真は、みんなきれいだなぁ、かっこいいなぁと思うのは、そういう理由があるんじゃないかと思うのだった。

もともと、ソニーαがあるのにリコーGRがほしくなったのは、これならポケットに放り込めて持ち歩けそうだからで、スマホとまではいかないけれど、いつ写真が撮りたくなってもそこにあるカメラとして可能性もあり。ニコンやキヤノンの一眼レフに比べると、ソニーαは小さいから、これなら年中持って歩けると思ったものだったけど、人間、やっぱり横着になるもんです。

2017リコーで撮った川

さてそんなこんなで、まだまだちゃんと写真らしい写真は撮ってなくて、そのへんにあるものにカメラを向けてシャッターを押してみただけなんだけど、起動が遅い、ピント合わせに時間がかかる、液晶画面が美しくない、だから再生してみてもちゃんとした写真が撮れている気がしない、などの数々の不満点があった。ただネットでこのカメラの評判を見ると、液晶で画像を確認するより実際の仕上がりが美しいということだから、このへんの不満は10年前のカメラなんだからそんなもんだ、というところにつきる。

思えば、フィルム時代。10年前のカメラだろうと50年前のカメラだろうと、カメラの性能的に写るものは大差がなかった。カメラ自体には写す機能はなくて、レンズとフィルムを確実に保持して、フィルムに光を当てる機構を働かせるのがカメラという機械だった。その点がしっかりしていれば、カメラが古くても写ったものはまったく変わらない。

デジタルカメラは初期のものはものすごくしょぼかったから、毎年ぐんぐん進化していって、3年前の旧型はもう使う気にならないものだった。パソコンもデジタルカメラも、電子機器は悲しいかなそういう時代になってしまって、昔のものを掘り出してきたって屁の役にも立たないし、売っても二束三文にしかならない。そういうもんだと思っていた。

2017リコーで撮ったアップ

でもね、このGRときたら、10年前の古いカメラのくせに、意外にちゃんと写る。というか、使い勝手の悪さの他は、ほとんどなんの問題もないのではないか。暗いところや動くものを追い損ねるなどの欠点はあれど、それはそれ、そういう道具だと思えばがまんができる。がまんができなかったら、こんな古くて安いカメラじゃなくて、いまどきの5万円くらいするコンパクトカメラを買えばいい。

液晶で撮ったものを確認できるのはデジカメのいいところだけど、それが写真を撮る覚悟みたいなものを薄めている気もする。液晶がとほほなこんなカメラも、それはそれで悪くない。

そんなふうに考えると、デジタルカメラの進歩はつきないながらも、基本的な進化はもうしつくしたといってもいいのかもしれない。15年前のカメラは使い物にならなくても、10年前のカメラなら画質的には使える。そうとなれば、フィルムカメラと同じで、新しいものはオートフォーカスが速くなったり手ブレ防止装置がより効率的になったり、各種オプションが増えたりというちがいで、それをがまんするなら、古いカメラだって充分なのかもしれない。

いやむしろ。フィルムカメラなら光はカメラの中を素通りしていくけど、デジタルカメラはカメラが画像を処理する。もしかして、古いカメラには古いカメラにしか作れない絵があるかもしれない。GRも、GRデジタル時代は受光素子がCCDで、今売ってるのはCMOSになっている。そのちがいを見分けられるとも思わないけど、これから先、CCDのカメラはそうそう出てきそうにないから、その点だけでも古いカメラの存在価値はある。

古いデジカメがなんでゴミになるかというと、写りが悪いのと、電池の互換がなくて動かなくなるからだ。

その点、このGRデジタルは、なんと単4電池で動く。専用の電池に比べるとうんと持ちは悪いから、もしも単4電池で動かし続けようと思うと、山ほど単4電池を用意しないといけなそうだけど、それでも専用電池に頼らずに動かせるのは安心。それに加えて、10年前のこのカメラは、今売ってる最新型のGRの電池も使える。古いカメラの電池を探そうとすると、爆発するかもしれないサードパーティのを使わないといけなかったりするんだけど、純正がちゃんと売られ続けている安心感は大きい。

2017リコーで撮った葉っぱ

そんなわけで、とりあえず買ってみました、というお話。ソニーαを使っているなら、ソニーのコンパクトデジカメを使えば、操作系がおんなじで使いやすい。素直にRX100かHX90Vとかを買えばいいのに、10年前の中古カメラなんか買っちゃうへそ曲がりの報告でした。